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キュンチョメのアートデート
No.001
東京都写真美術館 「没後百年 日本写真の開拓者 下岡蓮杖」
ゲスト:アーティスト/パルコキノシタさん
今月から始まる「キュンチョメのアートデート」。87年生まれのキュンチョメ、ホンマエリさんと、60年代生まれのおじさまアーティストとで毎月、都内の美術館でアート鑑賞。その楽しいデートの様子をレポートします。連載1回目はアーティストや漫画家として活躍するパルコキノシタさんが登場。東京都写真美術館で2014年5月6日まで開催中の2つの展覧会を見ていきます。
撮影:林道子 作品写真提供:東京都写真美術館

キュンチョメは、今年の第17回岡本太郎現代芸術賞で岡本太郎賞を受賞したアートユニット。ホンマエリとナブチによる2人組だ。今回のアートデートの場所になった東京都写真美術館で、パルコキノシタさんと待ち合わせをした。

エリ こんにちはキュンチョメです。キュンキュンしてチョメチョメしたいから、キュンチョメです。

パルコ どっちがキュンで、どっちがチョメなの?

エリ それ、決めてなかった……。聞かれたら答えられるよう、決めといたほうがいいかも。

パルコ じゃあ、さっそく中に入ろうか?

ナブチ 待ってくださいよ〜。あ、あのう、ぼくは〜。

東京都写真美術館学芸員、三井圭司さん(左)の説明を受ける2人
東京都写真美術館学芸員、三井圭司さん(左)の説明を受ける2人

エリとパルコさんは、「没後百年 日本写真の開拓者 下岡蓮杖」展の会場へ。蓮杖の生涯を写真と絵画で解き明かす、日本初の試みだ。同館学芸員の三井圭司さんに案内を願った。


日本写真史の最初期に撮影されたものは?

三井 下岡蓮杖(しもおかれんじょう)は日本写真の開拓者のひとりで、下田で生まれ育って画家になりたくて江戸に出てきました。そして写真に出会って技術を身につけ、やがて横浜で写真業を始めました。写真館を経営したり、名所や人々を撮影して販売しました。本展では、約150点に及ぶ名刺判写真を展示しています。

パルコ 裕福そうな人も庶民も写っている。

三井 ええ、外国からやってきた観光客に日本の様子を伝えるために撮ったからです。

エリ お土産だったんだ!

三井 そうです。物売りや職人らが写っていますが、被写体が本物だったとは限りません。役者がモデルを務めていた可能性が高いんですよ。当時は、カメラの前で数秒間じっと止まってなければなりませんでしたからね。

パルコ 「あ、この人、また出ている」といったことも?

三井 ええ、実際にあります。つまり、ドキュメント写真ではなく演出写真なのです。

下岡蓮杖 《(酒を酌み交わす三人の職人)》 文久3(1863)-明治9(1876)年頃 鶏卵紙 東京都写真美術館蔵
下岡蓮杖 《(酒を酌み交わす三人の職人)》 文久3(1863)-明治9(1876)年頃 鶏卵紙 東京都写真美術館蔵

パルコ いろいろ撮っているから、明治時代初期の日本の風俗がわかるね。ヌード写真は撮らなかったんですか?

三井 あちらへどうぞ。碁を打つ男女を撮影しています。どうです、艶っぽいでしょう。

パルコ おおっー、艶っぽい!

エリ 谷崎潤一郎じゃないけど文学の香りが……。胸を碁盤で隠す仕掛けも凝っているし。

パルコ これはもう、図録、買って帰ろ!

エリ これ1点のためにっ!?

下岡蓮杖 《(閏で囲碁を打つ男女)》 文久3(1863)-明治9(1876)年頃 鶏卵紙 東京都写真美術館蔵
下岡蓮杖 《(閏で囲碁を打つ男女)》 文久3(1863)-明治9(1876)年頃 鶏卵紙 東京都写真美術館蔵

彩色された写真。展示作品のいくつかはスライドで大きく見ることができる
彩色された写真。展示作品のいくつかはスライドで大きく見ることができる

展示を集中して見る2人。ステレオ写真の作品もあり、ビューワーで覗いて立体視できるかで話が弾んだ
展示を集中して見る2人。ステレオ写真の作品もあり、ビューワーで覗いて立体視できるかで話が弾んだ


蓮杖と絵画

本展の最後には、晩年の蓮杖による絵画が展示されている。横浜から浅草へ移った蓮杖は、やはり写真館を開業したが、撮影は弟子たちに任せ、自身はポートレート撮影用の背景画(書割り)を描くことが多かった。

下岡蓮杖 《伝下岡蓮杖 写真用室内所割》 明治29(1896)年 油彩・カンパス 横浜美術館蔵
下岡蓮杖 《伝下岡蓮杖 写真用室内所割》 明治29(1896)年 油彩・カンパス 横浜美術館蔵

エリ 何、これ? ヘンで面白いっ!

パルコ 色もどよーんとしているし。

三井 確かに変な色です。ただ、当時の写真は当然モノクロ。当時の技法で写りやすいように、背景画の色を決めたんです。つまり、写真の技術がわかる人間だからこそ描ける絵なのですね。

ナブチ あのう、ぼくも質問して、いいですか? いろんな画風で描いてますけど、画風が違いすぎるのが気になって。

三井 蓮杖についてアーティストという言い方をすると微妙ですね。今でいうとイラストレーターに近いというか、いろいろな手法を試みた人物だと思います。それは写真にも共通しますね。

思いがけずナブチが登場したが、まだまだデートは終わらない。エリとパルコさんは、もうひとつの展覧会「黒部と槍 冠松次郎と穂苅三寿雄」に向かうのだった。


構成/新川貴詩

もっと知りたい! 東京都写真美術館

1995年に開館した、日本で初めての写真と映像の専門美術館。国内外の作家の作品30, 000点以上を所蔵する。2014年3月4日〜5月6日開催の「没後百年 日本写真の開拓者 下岡蓮杖」では、担当学芸員によるフロアレクチャーに加え、ネイティブスピーカーによる英語のフロアレクチャーも予定されている。

■担当学芸員によるフロアレクチャー
2014年4月25日(金) 14:00〜
■英語フロアレクチャー
2014年5月1日(木) 18:00〜
このほか、ゴールデンウィーク特別レクチャーもあり。詳細は公式サイトへ。http://www.syabi.com

キュンチョメ

ホンマエリ(1987年、横浜生まれ)と、元引きこもりのナブチ(1984年、水戸生まれ)による2人組アート・ユニット。結成は2009年。今年2月、「第17回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」で、最高賞にあたる岡本太郎賞を受賞。それ以前にも、「群馬青年ビエンナーレ2012」(群馬県立近代美術館)に入選。個展に「ここではないどこか」(2013年、素人の乱12号店 ナオ ナカムラ)など。
http://kyunchome.main.jp

キュンチョメキュンチョメ

パルコキノシタ

1965年、徳島生まれ。日本大学藝術学部卒業後、1989年に「日本グラフィック展」でパルコ賞(準グランプリ)を受賞。小中高の教師を経て、アーティスト、イラストレーター、漫画家など多面的に活動。世界各地の大規模美術展におけるカラオケ・パフォーマンスでも名をはせ、昭和40年会やトリオ・ザ・アートのメンバーでもある。主な著書「漂流教師」(青林堂)など。主な個展に「かすかに揺れている毎日」(2013年)、「幽霊でもいいから」(2012年、ともに新宿眼科画廊)など。

パルコキノシタ

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