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キュンチョメのアートデート
No.007
江戸東京たてもの園 「ジブリの立体建造物展」
ゲスト:アーティスト/松蔭浩之さん
キュンチョメのホンマエリさんの「アートデート」では、都内で開催されている注目の展覧会を、毎回おじさまアーティストと二人でめぐります。今回は松蔭浩之さんと、江戸東京たてもの園で開催中の「ジブリの立体建造物展」へ。歴代のスタジオジブリ作品に登場する建造物と、園内の復元建造物を見ていきます。
撮影:林道子


背景が作品世界を支える

キュンチョメのホンマエリは、アーティストの松蔭浩之さんとともに江戸東京たてもの園にやってきた。まずは、開催中の企画展「ジブリの立体建造物展」へ。三鷹の森ジブリ美術館で広報を担当する内藤まゆさんに案内を願った。

内藤 本展は、作品に登場する建物にスポットを当て、背景画やイメージボードなどを中心に展示しています。ですから人物はあまり見当たりません。まず『思い出のマーニー』からご覧下さい。

スタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』から。主人公の杏奈が生活する家のミニチュア模型
スタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』から。主人公の杏奈が生活する家のミニチュア模型

エリ 人物がいなくても、一発でジブリ作品だとわかりますよね。

松蔭 うん、人がいないぶん、逆に背景の細部がよく見えてくる。細かいところまで、緻密に物事が設定されているとよくわかる。

内藤 映画では一瞬しか映らなかったり、どうしても人物に視線が向かいがちで、背景をじっくり見る機会はなかなかありませんからね。

エリ あ、家の図面まで引いているっ!

内藤 美術監督を務めた種田陽平さんは、主に実写映画の仕事をされているんですよ。では、続いて『風立ちぬ』です。

エリ 背景だけ見ても、「あ、これはあのシーン!」と思い出せますね。

松蔭 この作品の美術の見どころは調度品だね。すべて的確に描かれていて、人物像をより確かにしている。この人の部屋にはどんなものがあるのか、適当に描くなんてことはない。

内藤 そして、こちらを進むと……。

松蔭(すたすたと足早に進んで) ハ、ハイジっ?

エリ ハイジだぁ!

松蔭 やったーーー!!!(大興奮)

『アルプスの少女ハイジ』の世界観を伝えるジオラマ
『アルプスの少女ハイジ』の世界観を伝えるジオラマ

小学生の頃、リアルタイムで『アルプスの少女ハイジ』を見ていた松蔭さんは、そのジオラマを目の当たりにして興奮を隠しきれない。再放送を見て育ったエリも引き寄せられた。

松蔭 あの草原ってこんなに斜面が急だったのか! 奥多摩のキャンプ場でも、ここまできつくない。

エリ この斜面じゃヤギが登るのも一苦労です。

内藤 『アルプスの少女ハイジ』はスタジオジブリを立ち上げる10年以上前の作品です。メインスタッフの高畑勲と宮崎駿は、スイスとドイツにロケハンに行き、現地の人々がどんな生活をしているのか綿密に調べたんですよ。

すると、ジオラマから音が聞こえてきた。そして鉄道模型が姿を見せた。

エリ わー、列車まで走ってるんだー!

松蔭 気の利いた演出だ。


細部までつくり込まれた大型模型

そして一行は、『千と千尋の神隠し』のコーナーへと進んだ。八百万の神々が風呂を浴びに訪れる「油屋」の模型があり、細部まで忠実に再現されている。

和洋折衷の巨大な建造物「油屋」が『千と千尋の神隠し』の舞台。写真右が三鷹の森ジブリ美術館広報の内藤まゆさん
和洋折衷の巨大な建造物「油屋」が『千と千尋の神隠し』の舞台。写真右が三鷹の森ジブリ美術館広報の内藤まゆさん

松蔭 展示室の天井の高さギリギリまである模型。こんなに大きいのに見事につくり込んでいるね。

エリ あっ、のれんが風で揺れている。

内藤 現実のものって静止していないで、何か揺らめいていたり、風で動いていたりするものですよね。模型でもそういう自然な表現を再現しています。照明の光も揺らぐようになっています。

エリ 映画にも出てきた「釜爺(かまじい)」のボイラー室に続く階段、模型でもすごい傾斜で本当に怖そう。これは降りるの、絶対無理。でも、模型で見ると、いろいろと位置関係がわかっておもしろい。

内藤 ええ。模型の裏側から見るとわかりやすいですが、表はお客さん用のフロアなので豪華な造りで、裏は従業員用なのでグッと簡素な造りになっています。

エリ なんか、この模型に現実を見た思い。

松蔭 ヒエラルキーがはっきりしていて、「油屋」がひとつの社会の縮図だな。それから、この模型は、建築の目で見ても細かいところまで興味深い。最上階が下の階より床面積が広いけど、それを支える構造も再現してある。これは、日本の城でいう唐造(からづく)りという様式だね。唐造りは小倉城と高松城、岩国城、この三つにしか使われていない。

エリ もの知り〜、かっこいいっ!!

松蔭 いやぁ、楽しかったぁ。『風の谷のナウシカ』の絵が少なかったけど、それは当然といえば当然。大戦争で崩壊した後の世界を描いているからな。

エリ じゃあ、松蔭さん、絵や模型じゃなく、本物の建物を見に連れてって−!

松蔭 よっしゃ、わかった!

(後編に続く)

『となりのトトロ』でサツキとメイが暮らす「草壁家」の模型
『となりのトトロ』でサツキとメイが暮らす「草壁家」の模型

『天空の城ラピュタ』の模型。地層にもさりげなく意外なものが隠れている
『天空の城ラピュタ』の模型。地層にもさりげなく意外なものが隠れている


構成/新川貴詩

もっと知りたい! 江戸東京たてもの園

1993年に開園した野外博物館。江戸時代から昭和初期の建造物が建ち並んでいる。スタジオジブリとは、たてもの園のキャラクター「えどまる」のデザインを宮崎駿監督が手がけたり、2002年には特別展「江戸東京たてもの園と千と千尋の神隠し」を共催するなど縁が深い。「ジブリの立体建造物展」では、スタジオジブリのアニメーション作品に登場する個性的な建造物の制作資料やミニチュアを展示。
http://tatemonoen.jp

キュンチョメ

ホンマエリ(1987年、横浜生まれ)と、元引きこもりのナブチ(1984年、水戸生まれ)による二人組アート・ユニット。結成は2010年。今年2月、「第17回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」で、最高賞にあたる「岡本太郎賞」を受賞。それ以前にも「群馬青年ビエンナーレ2012」(群馬県立近代美術館)に入選。主な個展に「ここではないどこか」(2013年、素人の乱12号店 ナオ ナカムラ)、「なにかにつながっている」(14年、新宿眼科画廊)など。
http://kyunchome.main.jp

キュンチョメキュンチョメ

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。アーティスト・グループ『昭和40年会』の会長。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」結成し、90年にヴェネツィア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

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