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アーティスト・ピックアップ
No.010
金子朋樹さん

2012年11月、「第2回トーキョー・アート・ナビゲーション コンペティション」の2次審査が行われ、金子朋樹さんの《空遊図》が大賞を受賞しました。

金子朋樹《空遊図》2012

金子朋樹《空遊図》2012

金子朋樹《空遊図》2012


ヘリコプターは身近な存在


受賞おめでとうございます。
金子さんの作品について審査で話題にのぼったのが、なぜ日本画の技法で軍用ヘリコプターという現代的なモチーフを描いているのかという点です。政治性を感じる内容でもあります。

金子
政治的な意識があるわけではないんです。出身地の静岡・御殿場は、自衛隊の駐屯地や米軍キャンプがあちこちにある地域で、日常的にヘリコプターが飛んでいるような場所です。だから、ヘリコプターは自分にとって身近な存在なんです。


日本画を始めたのはなぜですか?

金子
僕が美術の勉強を始めたのは大学浪人をしていた頃で、スタートが遅いんです。当時は美術に関する知識もほとんどなくて、美術といったら絵画。絵画といえば、地元でよく目にする富士山を描いた日本画、という感じでした。日本画以外に選択肢が思いつかなかったんです。それと子どもの頃から書道をやっていたことも、日本画を始めたのと関係あるかもしれないですね。

「ガロン第2回展 日本背景」展示風景 2012 ※手前は金理有の作品
「ガロン第2回展 日本背景」展示風景 2012 ※手前は金理有の作品


ヘリコプターを描くことも、日本画を選んだのも、昔から慣れ親しんでいたからなんですね。ただ、ヘリコプターの機影にミサイルのようなかたちが描かれているなど、やはりどこか不穏さを感じます。

金子
それは僕のなかでも打開したいところです。題材的にどうしても政治的な匂いを醸し出してしまいますが、狙いではないんです。そこを打開するために、近作ではいろいろな試みをしています。


空間性をとらえる試み

金子
僕の作品の特徴は、支持体(布、紙、革、ガラスなど、絵を描く土台となるもの)そのものが丸みを帯びている点です。テレビのブラウン管をイメージして、正面からではなく、いろいろな角度から絵が覗けるという空間性を作品に持ち込もうと考えました。最初は壁にかけていたのですが、この丸みを「水面」に見立てることができないだろうかと思って、床に置いてみたんです。

金子朋樹《Recurrence -day and night-》2009
金子朋樹《Recurrence -day and night-》2009


つまり作品に描かれているヘリコプターは水面に映った機影なんですね。

金子
そうです。そういう意味では、映像的な空間性を意識しています。応募したポートフォリオのなかに、自衛隊の演習場近くの草っぱらに作品を置いて撮影したものがありますが、これは実際に上空を飛んでいるヘリコプターと、絵に描かれた影が関係を結ぶというものです。作品を取り巻く空間を考えて、絵画を見つめていきたいという気持ちがあります。

金子朋樹《Catharsis/カタルシス》2009 撮影=相羽浩行、松山圭介 撮影地=静岡県富士宮市朝霧高原
金子朋樹《Catharsis/カタルシス》2009
撮影=相羽浩行、松山圭介 撮影地=静岡県富士宮市朝霧高原


ポートフォリオのなかに、陶芸家の金理有さんの作品と一緒に展示している写真がありました。これは別種の空間性を感じました。

金子
2012年2月に開催した「ガロン第2回展 日本背景」展での展示ですね。「ガロン」は僕も含めた日本画を出自とする作家7名(現在は6名)で結成したグループで、「日本絵画から現代に向けて提示できるものはなにか」を目的にしています。「日本背景」展はその第2回グループ展で、日本画以外の作家とのコラボレーションなどを行いました。
 写真にあるように、僕は金さんと一緒に展示したのですが、これは僕のなかでとても大きな転機になりました。


大きな転機、とは?

金子
立体作品をずっとつくりつづけてきたアーティストの空間に対する意識に、平面作品はかなわないのではないか、ということです。
 さっきも言ったように、僕の作品の特徴は支持体の丸みなのですが、このかたちをつくるのがとても大変なんです。結果的に、描く内容以上に造形にこだわっている自分がいました。ですが立体的な「造形」に拘るという意味では、彫刻家にはなかなかかなわない。「日本背景」展でそのことに気づいたんです。そこで「描かれた絵にもっとこだわるべきではないか?」という考えに至ったんです。
 これまでずっと日本画をやってきましたが「いろいろな意味で、日本画ってなんて大変な表現だろう」という気持ちや、日本画に抗うような気持ちを原動力にして作品をつくってきたところがあります。その成果が、かたちや空間性を通じて日本画を再考するというスタイルでした。
 もちろん、これまでの方法をすべて捨てるというわけではないですが、もう一度、自分の作品を考えてみようと思ったわけです。
 空間というと外側からの意識ですよね。ですが、絵が持っている魅力の原点は作品の内側から出てくるものだと思います。絵そのものの力というか。

金子朋樹《Life/懐胎-全てを閉じ込め、優しく抱み込むー》2012 撮影=島村美紀 会場=旧田中家住宅・埼玉
金子朋樹《Life/懐胎-全てを閉じ込め、優しく抱み込むー》2012
撮影=島村美紀 会場=旧田中家住宅・埼玉


受賞記念展に向けて


すると金子さんは今ちょうど試行錯誤の渦中にいらっしゃるのでしょうか?

金子
そうだと思います。その展開として手がけているのが、応募作である《空遊図》や屏風の作品です。じつはこれらも「日本背景」展に出品したもので、展示会場になった茶室を意識してつくりました。
 日本絵画における空間性って、例えば茶室のような「設え(しつらえ)」から語ることもできると思います。床の間のような空間がまず最初に与えられて、そのなかに絵=作品をインストールする。伝統的な様式のなかから空間をつくっていくことにおいても可能性を感じています。


今年3月のBTギャラリーでの個展では、そこからの発展が見られるのでしょうか?

金子
「日本背景」展から約1年というタイミングですし、自分なりに今までの背景や、もう一度、「絵」そのものと向き合った結果を見せたいなと思っています。

●今月の解説とポイント
日本画の枠組みを超えるために、支持体そのもののかたちに手を加え、現代的なモチーフを描いてきた金子さんは、近作において、屏風や茶室といった日本画を取り巻く枠組みへと関心を広げつつあります。言い換えるならば、それは支持体という具体的なかたちを持つものを「造形」することから、日本画の様式やコンテキストという見えないものを「造形」することへの移行、あるいはその2つの併置と言えるかもしれません。
 作品の「見せ方」にこだわりを持つ金子さん。3月に予定されているBTギャラリーでの個展における展開が期待されます。

■金子朋樹さんの作品が見られる「アーティストファイル」はこちら
http://tokyoartnavi.jp/artistfile/detail.php?artist_no=20000676

■今年も開催「トーキョー・アート・ナビゲーション・コンペティション」(審査結果と講評を掲載中)
http://www.bijutsu.co.jp/bss/tan/



 
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