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アーティスト・ピックアップ
No.011
Fujiwara Takami + Nishimura Yuki

2012年11月、「第2回トーキョー・アート・ナビゲーション コンペティション」の最終審査が行われ、Fujiwara Takami + Nishimura Yuki(藤原天生と西村祐貴によるビデオアート・ユニット)の映像作品《バズギャル》が特別賞を受賞しました。


文化を俯瞰的に見る


特別賞受賞おめでとうございます。
Fujiwara Takami + Nishimura Yukiのお二人は、東京造形大学絵画専攻領域に在学中ということですね。

西村
両方とも4年生で、もうすぐ卒業です。今は卒業制作の準備中です。


ということは、卒業制作もユニット名義で提出されるのですか?

藤原
個人単位でないと受理してもらえないので、卒制はそれぞれ別に。私も西村くんもパフォーマンスを発表する予定です。


パフォーマンスという要素は、受賞作の《バズギャル》にも共通しますね。最初に簡単に同作の内容を説明させてください。
 《バズギャル》はギャルっぽい格好をした女子2人の対話劇です。2人は“ディズニーランド”や“たまごっち”など他愛のない話をしているのですが、会話の多くが「まじヤバい」や「あれ」といった曖昧な形容表現や指示代名詞で交わされます。はたから見ると、2人が何を話しているのかほとんどわからない。でも、彼女たちのなかでは会話は成立している。その不思議さとコミカルさを、映像と画面に表示される註釈(『ヤバい=正気の沙汰ではない!』など)を組み合わせて表現する、という芝居仕立ての映像作品です。
 受賞作を最初に拝見した時は、藤原さんと西村さん自ら演じているかと思ったのですが、違うんですね。西村さんは男性ですし。

西村
はい(笑)。内容によっては僕らが出ることもあるのですが、知り合いに演じてもらうことが多いです。


《バズギャル》は、若者ことばを過剰に表現して、ギャル文化を茶化すような内容でしたが、他の作品でも似たテーマを扱っているのですか?

西村
ある文化集団を俯瞰的に見るというのが作品のベースにあって、そうやって見ると滑稽さが際立つのだと思います。
 例えば《神の存在証明》という作品があるのですが、そこではいろいろなものに対してこだわりを持ちすぎている人を描いています。美容やダイエットに傾倒して、ところかまわずエクササイズする人とか、アニメに感化されて言動がアニメのキャラクターみたいになってしまう、いわゆる「中二病(註※)」な人とか。そういう人や現象を戯画的に描写することで、現代的な「信仰」のかたちが浮かび上がってくるかな、と。

※アニメ、ゲーム、マンガなどに過度にのめり込み、あたかも自分が作中の登場人物であるかのような振る舞いをしてしまう傾向などを指す。夢中になる対象が、主に若年層向けのコンテンツであることから「思春期真っ盛りの中学二年生が、いかにもかかりそうな病気(的症状)」として定義されている。タレントである伊集院光が深夜ラジオで「中二病」という言葉を使ったのが最初だが、当初は特にオタクカルチャーなどを指すものではなく、より広い範囲で使われる言葉だった。


《バズギャル》のなかで、2人のギャルが使っている言葉は必ずしもリアルな言葉ではないですね。

藤原
私たちがつくった言葉もかなり混ざっています。でも、じつはモチーフになっている共通の友人がいます。


え、実在するんですか?

西村
ロシア文学・映画が大好きな子で、持っている知識がものすごくディープ。でも「ヤバい」しか形容詞を使わないんです(笑)。

藤原
彼女のなかではすごく高い文化水準が構築されているんです。口から出るのは「ヤバいヤバい」ばかりだけど、思考している内容と、発話するまでの中間の部分に、さまざまな文脈や意味が織り込まれている。《バズギャル》では、それを註釈として入れてみようと思ったんです。

《バズギャル》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)5分07秒

《バズギャル》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)5分07秒

《バズギャル》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)5分07秒

《バズギャル》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)5分07秒
《バズギャル》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)5分07秒


感覚を重視する


Fujiwara Takami + Nishimura Yukiを結成した理由を教えてください。

西村
きっかけは昨年10月にあった学園祭です。それに向けて作品をつくってみようか、と盛り上がってユニットを結成することになったんです。


かなり最近ですね。

西村
同級生なのでお互いの作品は知っていて。パフォーマンス要素のある作品をそれぞれつくっていたことも理由のひとつですが、作品をつくるにあたって、いろいろ考えすぎてしまうあたりが共通していて。

藤原
東京造形大学絵画専攻領域の雰囲気が、理詰めでコンセプトを考えて作品をつくっていきましょうという感じなんですけど、私も西村くんも説明下手で。そこにちょっと疲れてしまっていて。

西村
だから、ノリでつくってみようと。ノリでつくり始めて、そこから意味付けしていくという、ある種のドローイング的な方法をFujiwara Takami + Nishimura Yukiでは試してみたかった。


事後的に註釈をつけていく《バズギャル》の制作プロセスを思わせますね。

《神の存在証明》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)9分37秒

《神の存在証明》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)9分37秒
《神の存在証明》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)9分37秒

藤原
一応台本はあるんですけど、何回かリハーサルをやって、セリフをぼんやり覚えたところで撮影して、最終的にはノリで対話していく感じです。相手の言っている「ヤバい」の意味がわからない時は、とりあえず相づちを打ちながら即興的に「ヤバい」って言ってみたり(笑)。

西村
だから編集の段階でも、この「ヤバい」はどういう意味なんだろうね、とか相談しながら註釈を入れていきました。


でも出来上がった作品は、情報量の密度に圧倒される印象があります。登場する言葉はかなりリサーチをされたのですか?

西村
パソコンを2台並べて、片方では編集しながら、もう一方ではGoogle検索をしつつ作業しました。「アルキメデスの生没年って何年?」とか言いながら。


その制作の併走感が面白いです。《バズギャル》自体が、感覚的な「ノリ」からスタートして、註釈を入れるという事後的な作業で完成する、つまり前後で2つに区切られた構造を持っています。そのヨコ軸と同時に、編集する役と検索する役に分けられたタテ軸が制作のプロセス全体を貫いている。2人組のユニットならではの制作方法だと思いますし、感覚と理性が並列しているような感覚は、インターネットが登場して以降の世代感を感じさせます。

藤原
言われて気づきましたけど、たしかにそうかもしれないです。
 大学のオープンキャンパスで感じたことなのですが、学内ではコンセプトが重視されるけれど、そうやってつくった作品は、外から来た人たちには見事にスルーされるんです。人気があるのは見た目にキャッチーな作品や、キャッチーじゃなくても第六感で何かを感じられるような作品でした。


理詰めのものは、あまり見てもらえないんですね。

藤原
もちろん、理屈がわかると面白くなる作品もありますけど、それを多くの人が理解するためには高い壁があるなって。だから、ある意味でないがしろにしてきた感覚的な領域に、Fujiwara Takami + Nishimura Yukiではチャレンジしていきたいと思っています。

《レシピ》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)7分14秒

《レシピ》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)7分14秒
《レシピ》2012 ビデオ(カラー/ステレオサウンド)7分14秒


今後はどんな作品をつくっていこうと思っていますか?

藤原
《バズギャル》で試した「言葉あそび」の要素はもう少し発展させていきたいと思います。でも基本的にはノリですね。
 Fujiwara Takami + Nishimura Yukiを結成してまだ半年経ってないんですが、作品の制作スピードは自分でも驚くぐらい早くって。その勢いをなくさないようにしたいと思っています。


●今月の解説とポイント
Fujiwara Takami + Nishimura Yukiがユニットを結成したのは、昨年の9月。結成から半年も経たないうちに、3本もの作品を制作してきたそのエネルギーは、感覚的な「ノリ」から発せられたものであるようです。ですが、審査のなかで「自分たちのスタイルができあがりつつある」(『美術手帖』編集長 岩渕貞哉)と評された作品形式とそのクオリティーは、論理的なプロセスを要する「編集」と、藤原さんと西村さんの合議によって支えられています。ユースカルチャーに顕著なスカム(汚物、ゴミという意味から転じて、雑多さ、多義性を示す言葉)性と、美術における造形的な稠密さを構造化することでFujiwara Takami + Nishimura Yukiの作品は、ユーモラスなだけではない魅力を持ち得ています。今後の2人の活動が注目されます。

■Fujiwara Takami + Nishimura Yukiさんの「アーティストファイル」はこちら
http://tokyoartnavi.jp/artistfile/detail.php?artist_no=20001346

■《バスギャル》などFujiwara Takami + Nishimura Yukiさんの作品はこちらからご覧になれます。
http://www.youtube.com/user/FujiwaraNishimura

■今年も開催「トーキョー・アート・ナビゲーション・コンペティション」(審査結果と講評を掲載中)
http://www.bijutsu.co.jp/bss/tan/



 
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