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Next Tokyo 発見隊!
No.006
HAGISO/hanare(谷中)

2019.4.24

HAGISO/hanare(谷中)

古いものを取り払うのではなく、直したり更新したりしながら新しさを取り入れているまち、東京・谷中。この谷中で、2011年にスタートしたのがカフェやギャラリーを併設した文化拠点「HAGISO(ハギソウ)」です。HAGISOを設計・運営するHAGI STUDIOの宮崎晃吉(みやざき・みつよし)さんは、その後、谷中のまち自体をホテルに見立てた宿泊施設「hanare(ハナレ)」もはじめました。谷中で5施設のリノベーションを手がけた宮崎さんに、この地域で活動する魅力を聞きました。

1階のギャラリー「HAGI ART」は、美術、工芸、デザインなどさまざまなジャンルの展示を行い、30~40日ごとに展示が替わる
1階のギャラリー「HAGI ART」は、美術、工芸、デザインなどさまざまなジャンルの展示を行い、30~40日ごとに展示が替わる

駐車場になる予定だった50年代の木賃アパート

小さなお店が軒を連ね、東京の下町風情が残る観光スポットとしても人気の高い谷中銀座商店街。その賑やかな界隈を抜けた静かな路地にHAGISOはあります。1階にはカフェとギャラリー、2階にはサロンスペースや、hanareのレセプション(受付)を備えた複合文化施設です。

1階のギャラリー横にあるカフェ「HAGI CAFE」

1階のギャラリー横にあるカフェ「HAGI CAFE」
1階のギャラリー横にあるカフェ「HAGI CAFE」

2011年にオープンしたこのHAGISOは、1955年に建てられた木造アパート「萩荘」をベースにしています。しばらく空き家になっていた風呂なしトイレ付きアパートを、2004年にアトリエ兼住居として借り始めたのは東京藝術大学建築科の学生たち。そのなかに、HAGISOを運営するHAGI STUDIO代表の宮崎晃吉さんもいました。「当時の学生仲間5~6人で借り始め、光熱費込みで一人3万円くらいの家賃でした」という宮崎さん。その後、大学院に進学し、就職しても萩荘に住み続けました。
この萩荘と宮崎さんに転機が訪れたのは、2011年の東日本大震災です。萩荘はなんとか持ちこたえたものの、通っていた近くの銭湯は半壊。当時、大手建築事務所で海外の物件を手がけていた宮崎さんは、「遠いまちにある建築の仕事をしながらも、自分の身近な生活やまちすら守れない。そのことに無力感を感じました」と話します。そして、その月に仕事を辞めました。

HAGISOを運営するHAGI STUDIO代表の宮崎晃吉さん
HAGISOを運営するHAGI STUDIO代表の宮崎晃吉さん

ところが退職の矢先、萩荘を解体する話が浮上します。大家さんは耐震性や老朽化を案じ、建物を壊して駐車場にしたいと考えたのです。そこで宮崎さんたちは「建物がなくなると徐々に記憶もなくなっていってしまう。最後に萩荘のお葬式をしたい」と、アーティストや建築家などを集めて建物自体を作品にする「ハギエンナーレ」を開催しました。
述べ1500人ほどの来場者があり、多くの若者で賑わった3週間。パーティーにも来てくれた大家さんが片付けをしながら「楽しかった。このまま取り壊すのはもったいないなあ」とつぶやきました。そこで、宮崎さんは萩荘のリノベーションの計画を考え、利回りを計算して大家さんを説得。宮崎さんが1棟まるごと借り、工事費を一部負担してHAGISOは生まれました。

もとは築60年以上の木造アパートだった「HAGISO」
もとは築60年以上の木造アパートだった「HAGISO」

いまではカフェや展示はもちろん、トークイベント、パフォーマンス、蚤の市、映像の上映などさまざまな用途で利用され、人と人をつなぐ出会いの場になったHAGISO。取り壊し寸前だった萩荘は、「HAGISO」として地域や国内外から訪れる人に親しまれています。

今のまちの状態を肯定した宿泊施設

その後も宮崎さんは谷中でさまざまな物件のリノベーションを手がけ、宿泊施設のhanare、まちの教室「KLASS(クラス)」、お惣菜屋「TAYORI(タヨリ)」は運営も行っています。
なかでもhanareは谷中に10年以上住む宮崎さんの暮らし方そのものが生きた宿泊施設。2018年にグッドデザイン賞金賞を受賞するなど、新しい宿やツーリズムのかたちとして注目されています。
「hanareは、まち全体を宿に見立てた宿泊施設です。萩荘の生活は、占有空間としては6畳一間だったけれど、お風呂は銭湯、冷蔵庫はコンビニ、食事は定食屋、とまち全体が生活エリアだと考えると広かったんです。」

hanareの宿泊棟も空き家だった木造アパートを改修。各部屋は床が窓の高さまで上げられ、座ると視線が外に向く、まちが身近に感じられる設計。「ヒカリの間」「ヤツデの間」など各部屋の名称は、窓に施された模様にちなむ
hanareの宿泊棟も空き家だった木造アパートを改修。各部屋は床が窓の高さまで上げられ、座ると視線が外に向く、まちが身近に感じられる設計。「ヒカリの間」「ヤツデの間」など各部屋の名称は、窓に施された模様にちなむ

hanareに泊まるお客さんは、レセプションラウンジがあるHAGISOでチェックインして200mほど離れた宿泊棟に泊まります。4軒の銭湯に入れるチケットが付き、朝食はHAGISOのカフェで。お土産や夕飯、文化体験、レンタサイクルなどは近隣の店をコンシェルジュが紹介します。ホテルのなかで完結するのではなく、まちを歩き、まちで過ごすという宿泊体験がhanareの特徴です。
「こういう宿は不便もあると思うんですよ。テレビもないし、雨が降っていれば朝食も傘をさして食べに行かなきゃいけないし。お客さんはそうした条件を考慮して泊まりに来られるので、楽しんでくれます。窓を開けると電線は見えるし、向かいの家が近いけれど、それをマイナスととらえずに『まちに泊まれている』ととらえてくださいます。今あるまちの状態を否定せずに、肯定して編集する力が宿にはあるのではないか、と思っています。」

hanareオリジナルのアメニティや手ぬぐい
hanareオリジナルのアメニティや手ぬぐい

地域を元気にする新しい旅の形「まちやど」

宮崎さんはこうした宿の形を「まちやど」と呼び、日本各地の宿泊施設が加盟する「日本まちやど協会」も主宰します。
「かつては街道沿いに宿場町が連続していたように、隣町なのに全然違う宿泊体験ができるような面白いツーリズムが生まれるといいな、と思っているんです。」
まちの日常を体験できる「まちやど」は、新たな旅の形を提案すると同時に周りのお店も元気にしていきます。hanareができてから、近隣のお店同士でお中元やお歳暮の交換も始まったそうです。宮崎さんによると谷中は「東京だけれど、時間がゆっくりと流れる」まち。「谷中には八百屋さんや魚屋さんなど個人商店があり、顔を見て物が買えます。そこにはお金と物以外の交換があるんです。それが豊かだなと思います」と話します。

「hanare」の宿泊棟
「hanare」の宿泊棟

Text:佐藤恵美
Photo:櫛引典久

HAGISO(ハギソウ)

住所:東京都台東区谷中3-10-25 HAGISO
時間:8:00-10:30(モーニング営業)/12:00-21:00
定休日:不定休(臨時休業あり)
http://hagiso.jp

[お問い合わせ]
E-mail:info@hagiso.jp

hanare(ハナレ)

住所:東京都台東区谷中3-10-25 HAGISO (宿泊棟は別棟)
http://hanare.hagiso.jp

[お問い合わせ]
E-mail:info@hanare.hagiso.jp

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