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No.008
野外×アート×まちなか トロールの森2019(西荻窪)

2019.12.11

個人営業の雑貨店や古書店、カフェが多く集まり、自然豊かな公園もあるなど、ゆったりとした時間の流れる西荻窪。そこで年に一度開催されるのが、「野外×アート×まちなか トロールの森」です。武蔵野三大湧水池の一つ、都立善福寺公園から最寄りの西荻窪駅までのエリアに、国内外から多彩なアート作品が集結。野外に展示される造形作品だけでなく、演劇やダンスといった身体表現など、さまざまなアートが展開されるのが特色です。2019年は「囁き whispers」をテーマに11月3日(日・祝)〜23日(土・祝)にかけて開催され、55組のアーティストが参加しました。

都立善福寺公園に展示された、さくら・アリスとその仲間達《ハードル/ゲートの行列》
都立善福寺公園に展示された、さくら・アリスとその仲間達《ハードル/ゲートの行列》

地域に溶け込んでいったアートイベント

2002年にスタートし、今回で18回目を迎えた国際野外アート展「トロールの森」。今年は都立善福寺公園や街中に60点以上の作品が展開されました。当初は地元でアーティストインレジデンスの活動を行う「遊工房アートスペース」が中心になって、現代美術に親しんでもらおうという目的で開催され、場所も公園のみでした。普通の公園に突如アート作品が現れるイベントは次第に街中へも拡がっていき、駅に訪れた人が住宅街を抜けて公園へ誘われ、普段着の西荻窪を垣間見るきっかけになっています。今では地元の人に親しまれる西荻窪の風物詩のようになり、運営も地元の有志や小学校、ギャラリーなど10人ほどの実行委員会で行われています。

駅前から公園にわたり展示されている人型の作品《ももしのおでかけトロール》
駅前から公園にわたり展示されている人型の作品《ももしのおでかけトロール》

杉並区立桃井第四小学校の下駄箱の上にも、5年生の児童とアーティストのマシューフラワーによるコラボ作品《ひみつの花園》が出現。小学校の図工の先生は、事務局のメンバーでもある
杉並区立桃井第四小学校の下駄箱の上にも、5年生の児童とアーティストのマシューフラワーによるコラボ作品《ひみつの花園》が出現。小学校の図工の先生は、事務局のメンバーでもある

参加団体の中でも杉並区立桃井第四小学校は「トロールの森」に大きく関わっています。街中に展示されているカラフルな人型の作品《ももしのおでかけトロール》は、小学校の子供たちがワークショップで制作したものです。2014年から毎年増え続け、今回展示されたのは約700体だそう。子供たちは授業の一環として、作品を制作したり鑑賞したり、長期にわたってアートに触れてきました。
「アートが特別なものではなく身近なものとして捉えられる人材が育つ土壌になっているといいですね」と事務局の渡辺眞千子(まちこ)さんはおっしゃっていました。

事務局の渡辺眞千子さん。以前はインターネットラジオ「ラジオぱちぱち」でトロールの森に参加していた
事務局の渡辺眞千子さん。以前はインターネットラジオ「ラジオぱちぱち」でトロールの森に参加していた

多様な意見を気軽に言い合えるプロジェクト

アーティストは公募により国内外から参加していますが、その中でも西荻窪に根差した作品を展開していたのが、私設の町の案内所「西荻案内所」の所長、奥秋圭(おくあき・けい)さんたちのユニット「ニシオギ空想計画実行委員会」の《ニシオギ空想計画Vol.2》です。西荻窪の道路拡張計画に由来したプロジェクトで、同年6月にも別会場にて展示を行いました。ピンクの象がぶら下がる味わいのあるアーケードやディープな飲み屋街を残そうと、計画には反対する声も上がったそうですが、木造密集地域で防災面の不安も拭えず、住人である奥秋さんにとっても悩ましい問題でした。

ニシオギ空想計画実行委員会のメンバー。左から、川中彰平さん、奥秋圭さん、石井祐樹さん
ニシオギ空想計画実行委員会のメンバー。左から、川中彰平さん、奥秋圭さん、石井祐樹さん

商店街の不動産屋さんが丸々作品になった《ニシオギ空想計画Vol.2》
商店街の不動産屋さんが丸々作品になった《ニシオギ空想計画Vol.2》

実現性の高い企画からユーモアたっぷりの街づくり計画、子供の考えた夢のある計画までが並ぶ
実現性の高い企画からユーモアたっぷりの街づくり計画、子供の考えた夢のある計画までが並ぶ

「地元でも再開発のことを知らない人が案外多い。情報がなければ判断もできないし、ただ反対するのではなく別の解決案を示して欲しいと思い、計画の代替案を募集して展示することにしました。」
現実的な都市計画案が来るかと思いきや、集まった案の中には地酒をつくる町おこしのような企画や「西荻公方(にしおぎくぼう)」が治める西荻幕府をつくるといった荒唐無稽なものも。これらの案は商店街の不動産屋さんに物件情報のように貼り出され、店内では開発計画のプレゼン資料をそのまま展示し、そこに鑑賞者が感想、疑問点を付箋に書いて貼れるようにしました。集まった意見は杉並区の担当者に回答をしてもらう予定です。
「計画の見直しは難しそうですが、何か反映されれば嬉しいですね。」

武蔵野大学水谷俊博研究室《未確認生物との行進/交信》。宇宙人に扮したパフォーマーが街中を練り歩いた
武蔵野大学水谷俊博研究室《未確認生物との行進/交信》。宇宙人に扮したパフォーマーが街中を練り歩いた

街全体に満ちている地元愛

取材当日は「トロールの森」とは別に、約50店舗のカフェや雑貨店が無料でお茶を振る舞う「西荻茶散歩(ニシオギチャサンポー)」や杉並区立桃井原っぱ公園をメイン会場とした大型イベント「すぎなみフェスタ」も開催されていました。前者は商店の人たちが自発的に始めたもので、こうしたイベントが多いことからも、地元の人たちが西荻窪を思う温かな気持ちが伝わってきます。
会期中は、都立善福寺公園をメインに西荻窪の街全体が「トロールの森」となり、その至るところでいろいろなことが起こります。宇宙人のような服装をした行列が闊歩したり、全身ピンクの人たちがバスに乗ったり、駅前に座っていた人が突然演奏を始めたり。森の精トロールたちが西荻窪に散りばめたアートないたずらは、どこか不思議な街に迷い込んだような気持ちにさせました。

会期中は参加アーティストと一緒に作品をめぐるアートツアーも実施。糸電話をモチーフにした作品《Whisper Tube》を解説をする作者のZHANG Kexinさん(左)
会期中は参加アーティストと一緒に作品をめぐるアートツアーも実施。糸電話をモチーフにした作品《Whisper Tube》を解説をする作者のZHANG Kexinさん(左)

戸室太一建築設計室《あらゆる風景を聴く》。箱の中に複数の鏡が設置され、覗くと思わぬところの風景を見ることができる
戸室太一建築設計室《あらゆる風景を聴く》。箱の中に複数の鏡が設置され、覗くと思わぬところの風景を見ることができる

*本事業は、2019年度 Tokyo Tokyo FESTIVAL助成 市民創造文化活動支援 対象事業です。

Text:浅野靖菜
Photo:稲葉真

野外×アート×まちなか トロールの森2019

日程:2019年11月3日(日・祝)〜23日(土・祝)
場所:都立善福寺公園(上池)、杉並区立桃井第四小学校、西荻窪-善福寺周辺店舗・ギャラリーほか 主催:トロールの森実行委員会

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