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トーキョー・アートエッセンス
No.001 絵を見ることは謎解きゲーム 荻原朔美氏 写真
書き手:多摩美術大学教授・演出家 荻原朔美氏
演出家、映像作家、版画家、エッセイスト、大学教授…さまざまな経歴は多芸多才の表れ。荻原朔美氏がアートを見る目の秘密が、いま明かされます。

 「この画家は左利きだね」
 油絵を観ていた私の隣の人がぼそっとつぶやいた。つぶやいた人は自然を描く画家だ。
 私達は東京都現代美術館で開催された展覧会を一緒に観て、後日雑誌で対談することになっていた。
「えっ、そうなんですか」
 私は思わず画家の横顔を見た。訊くと、“じっと絵をにらんでいると、筆の動きが頭の中に浮かんでくる”のだという。感心してしまった。左手で描かれた作品。私はそんなこと思ってもみなかった。同じ仕事をしている者同志は、シロウトには分からない視点を共有しているのだろう。

 この絵は何歳の時に描いたのか。背は低いのか高いのか。どこから筆を動かし、どこで終わったのか。妄想は次々に羽根を広げて勝手なストーリーを生み出してしまう。
東京都現代美術館
萩原氏の版画も展示してある東京都現代美術館
 先日、現代美術の個展に友人と出かけた時、この妄想のことを話した。聞いていた友人は
  「それって楽しい?」
と言った。
  「案外」
私はそう答えた。
  しかし、本当は楽しいかどうか考えたこともない。クセになっているのだからどうしようもないのだ。“実は自分も”と友人は言った。
  「この作者は、どのくらいの距離から描いているのかをまず考える」
  彼はつね日ごろメガネを外したことはない。子供の頃からずっとメガネを掛け続けている。だから他人の視力も気になるらしい。なる程なあと思った。私は作者の視力など考えもしなかった。
  言われてみると、絵を鑑賞する時、近づいて見たくなる時と、二、三歩離れてながめたくなる時がある。あれも、作者の視力が関係してくるのかも知れない。人にはいろいろな見方があるものなのだ。
  私もメガネの友人も、作者は一体どんな人物なのだろうと考えるタイプである。
  反対に、作者にはまったく関心がないという人もいる。どんな人が作ったのかはどうでもいい。人よりも作品が好きか嫌いかなのである。作品は、作り終わった瞬間から作者の手を離れて世界を飛翔する。そう考えているのだ。
  どのような作品を作るのも自由だ。同じようにどのように作品と接するかも自由なのだ。
  パウル・クレーは、「絵というものは、見えるようにすること」と言った。見えるようになった作品を前にして、何を見えるようにしたのか。そういう謎解きゲームがアートを楽しむということなのである。

パウル・クレーは萩原氏が好きな画家のひとり

萩原氏の近況Q&A
──最近、頑張っていることはありますか。
テレビのCM「勘定奉行」でもよく知られている歌舞伎役者の中村京蔵さんの芝居「山月記」(銕仙会能楽堂)の演出をやりました。それと、イメージフォーラムフェスティバルで、短い映像作品を発表するので撮影中です。
──最近、趣味でやったことはありますか。
趣味でやっている空手の大御所の先生たちのパフォーマンス「武道ライブ」(九段会館)のスタッフを2月にやりましたけれど、けっこう反響がありましたね。
──最近、見た展覧会はなんですか。
森美術館の「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」。映像でしか生み出せない迫力に圧倒されました。三鷹市美術ギャラリーの「高島野十郎展」もよかった。絵画の原点を見せられたような感じがしました。芸術家の品性にうたれました。思わず友人達に電話をして観るようにすすめてしまいましたよ。
──これから見てみたい企画展などはありますか。
新しくオープンしたところには興味がありますね。今なら企画展というよりも、お台場にできた移動式の展示施設「ノマディック美術館」と先日オープンした「新国立美術館」に行こうと思ってます。
※次回は、引き続き萩原氏に「思い出の場所としての美術館」をテーマにエッセイを執筆していただきます。

萩原朔美 萩原朔美 写真
1946年東京都生まれ。67年から70年まで寺山修司主宰の演劇実験室・天井棧敷に在籍。75年『月刊ビックリハウス』(パルコ出版)を創刊、編集長に。イメージフォーラム映像研究所講師。多摩美術大学教授。著書に『毎日が冒険』(三月書房)、『思い出のなかの寺山修司』(筑摩書房)、『小綬鶏の家』(集英社)他多数。
自宅にて。母である作家の故・萩原葉子さんの作品棚の前で
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