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トーキョー・アートエッセンス
No.007 アートと美術館のこれからの関係 團 紀彦 写真
語り手:建築家 團 紀彦 氏
建築設計事務所の代表として、数々の建築に携わりながら学校の講師も務めている團紀彦氏。アートと美術館の関係とはどういうものか、建築家としての視点から率直なご意見をいただきました。

アートが移動可能になり、美術館が生まれた

 私は20年ちかく金沢美術工芸大学で、「アートと美術館の関係」についての授業を続けています。きっかけは、彫刻家の高橋清先生が教授でいらしたときに「彫刻の勉強だけでなく、学生たちに彫刻が置かれる建築についても教えてほしい」と依頼されたことでしたが、そこでのいろいろな研究を通じていくつかの発見がありました。
 アートは、もともと教会やお城などの建築に付随するものでした。美術館の機能は、基本的には収蔵庫です。日本でも書院、襖絵、天井画、欄間など、建築の一部、生活の一部にアートは存在していました。本来、アートは特定の場所に存在するものだったのです。しかし、ヨーロッパでは城主が変わったりすると、作品を入れ替えるという必要性も出てきました。不要になった作品は、売買されるようになります。ルネサンス期には額縁ができたと言われています。つまり、アートが移動可能な商品になったことにより美術館が生まれたと考えることができるのです。その結果、アートは貨幣経済にも乗るようになりました。


転用することで生まれた現代の美術空間

 かつてアートは住居や宗教施設といった特定の場所や、人々のために作られたものでした。つまり、依頼する人がいて作品がつくられるという、いわば発注芸術でした。これは現在の建築家と同じ状況です。建築家はどんなに頑張っても、クライアントなしでは仕事ができません。しかし、アートは美術館というものが誕生したことにより、アートマーケットができて、その独立した価値を追求することが可能になったと言えます。現代は、美術の貨幣価値という世俗的な側面と、純粋芸術の価値という神聖な側面が相互に補完しあっている状態だと考えることができます。
かつて朝香宮邸だったのが東京都庭園美術館。庭園とアール・デコ様式の建物が見事にマッチしている
かつて朝香宮邸だったのが東京都庭園美術館。庭園とアール・デコ様式の建物が見事にマッチしている

 美術館の歴史は一般的に考えられているよりもずっと短く、250年くらいのものです。そして建築空間の歴史は、「転用」の歴史とも言えるでしょう。イタリアのフィレンツェにあるウフィッツィ美術館は、メディチ家が断絶したときに、その美術品を彼らのオフィスの廊下に展示したもの。つまり、事務所美術館(Uffizi = office)だったのです。宮殿を利用したのが、パリのルーブル美術館です。また、ウィーンで有名な音楽ホール、ムジークフェライン(ウィーン楽友協会)も、かつては繊維織物取引業協会の集会場になっていました。

團紀彦氏の著書『るにんせん』は史実を基に描かれた歴史ロマン。映画としても上映された
團紀彦氏の著書『るにんせん』は史実を基に描かれた歴史ロマン。映画としても上映された
美術館という場をもてなす人の心が大切

 美術館というと、建築家にとっては何かと特別な思い入れがあるものです。自分自身でもその気持ちはよくわかります。どういうことかと言うと、美術館の設計という仕事がくると、異常にテンションが上がってしまうということです。本来ですと、その土地の背景を踏まえながら、光の環境を整えて、収蔵庫の機能をもつ建築物をつくればいいわけですが、頑張りすぎてオブジェをつくってしまう。アートを収蔵する入れ物なのに、主張しすぎてしまう。これも徹底すればビルバオのグッゲンハイム美術館のように町おこしをする力を持つこともありますが、なかなかそこまでできるケースは少ないですね。
 まだ、美術館の歴史は浅いと言えます。ですから、その役割もこれから変わってくると思います。子どもたちの教育の場になるかもしれないし、人々の集まる新しい場所になるかもしれません。その点では、もう一度、美術館の役割を考え直すことが重要だと思います。例えば、何を転用すれば、より優れた美術館が生まれるのかという発想も、新しい方向性を考えるきっかけになるかもしれません。また、必ずしも美術館の中だけでなく、それ以外の場所でもアートの品格を引き出せる空間がきっとあるでしょう。さらに、これからの美術館には、「人材」にも重要な役割が求められるようになります。ちょうど茶の世界の「亭主」のような存在をイメージしていますが、美術館という場の管理責任者、客を招いてもてなす心を持つ人が重要になってくると思います。

次回は・・・
團氏が手がけている建築プロジェクトと町づくりについてご紹介します。(11月8日アップ予定)

團 紀彦(だん のりひこ) 團 紀彦 写真
1956年神奈川県生まれ。東京大学工学部建築学科卒。1986年團紀彦建築設計事務所設立。東京大学大学院都市工学科非常勤講師なども務める。1995年日本建築家協会JIA新人賞受賞。2003年「NEW TAIWAN by design」国際コンペ一等。小説『るにんせん』などの著書もある。
 
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