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トーキョー・アートエッセンス
No.010 プロの鑑賞者を目指してほしい 千住 博 写真
語り手:日本画家 千住 博 氏
千住博氏が学長として携わっている京都造形芸術大学は、新しい大学です。教授には、さまざまなバックグラウンドを持った方々が集まり、それぞれが専門の境界を超えた情報を発信していける大学を目指しています。今回は、千住博氏の芸術教育についての考えを語っていただきました。

芸術は平和創造のために備わった知恵である

 私は、芸術はイマジネーションをコミュニケーションすることだと思っています。自分の考え方を、何とかわからない人に伝えていく行為。料理でも、音楽でも、バレエでも、彫刻やデザインも同様です。こういう発想が、今の日本の中には抜け落ちているように思います。連日報道される悲惨な事件の根幹にあるのは、まさにイマジネーションの欠如。そこには、相手も同じ人間であるというコミュニティの意識が存在していません。イマジネーションをコミュニケーションするという芸術的発想が、今の日本人に何よりも大切だということを日々痛感しながら、多くの芸術家たちも同じ思いを持って活動しているのです。そのため、京都造形芸術大学では、芸術は平和創造のために備わった知恵であるという考えに基づいて、建学の理念に「平和創造」を掲げています。これは21世紀のシンボルになりうるコンセプトだと思っています。

水の森水の森
 これから芸術とどうつきあっていくか、ということがひとつの課題になるのではないでしょうか? 一般的に、美術館に行くというと急に身構えてしまうことがあります。わからなければ恥をかくと思わないでほしいですね。私も新しい展覧会を観に行くときは、何もわからないところから始めています。それを何時間もかけてしっかり観ているうちに、「なるほど。この作家はこういうことを考えているのかな」とわかってくるのです。同業者ですらそうなのですから、素人の人たちは、自分は素人だからと思わないでほしい。難解な作品は、作っている本人も模索しながら、自分の中からわき上がるものを見い出したり、自分は一体何をしようとしているのかを冷静に見るためにつくっているのです。作者は何を考えているのだろうと思って作品を観ると、同じ人間の作業としての面白さが出てくると思います。

プロとアマチュアの違いはまさに使命感にある

 アーティストのプロとアマチュアの違いですが、アマチュアは自分のために作品をつくっていると思います。アマチュアというのは、わかる人だけを相手にするとか、自分の自己満足を目的にする。プロは違います。自分の作品で人を励ましたい、元気を与えたい、問題を提起したいと考えて作品をつくっている。有名であるとか、お金を稼げるかではありません。プロとアマチュアの差はまさに使命感だと思います。

 そういう意味では、観る人にもプロとアマチュアがあっていいはずです。自分を癒したり暇つぶしのために美術を鑑賞するということもありますが、できれば皆さんにプロの鑑賞者としての意識を持ってほしいと思います。それは、自分が観たものの素晴らしさを伝えたいという意識です。ある作家の作品を観て感動したということを、職場や学校の人に伝えるだけでいいのです。東京では、いろいろなギャラリーで作家の個展が開かれています。ぜひ足を運んで、プロの受け手としていいものを自分なりに鑑賞して、わからなければわかるまで本人と徹底的に話をしてみる。それが、若い作家を励ますことにもなり、本当の心の豊かさをわかち合うことができるのだと思います。

羽田空港第2旅客ターミナル
羽田空港第2旅客ターミナル
 芸術は雲の上に存在しているものではありません。どなたも、自分はプロの受け手、プロの鑑賞者なんだと思えばいいだけです。芸術はコミュニケーションです。作品を理解するには、まず鑑賞した上でわからないことは尋ねるなど、努力しないといけません。それでもダメだったら、その作品は自分にはよくわからない、ということでいいのです。自分のいいと思った作品に拍手を送ればいいわけです。私たち作家と、皆さんは同時に存在しているのだということをわかっていただきたいと思います。

次回は・・・
デザイナーの宮城壮太郎氏をご紹介します。[2月14日(木)アップ予定]

千住 博(せんじゅひろし) 千住 博 写真
撮影:山口和也
1958年東京都生まれ。'82年、東京芸術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。'87年、同大学大学院博士課程修了。以後、日本画家として世界各国で個展を開催するなど活躍している。'93年、ニューヨーク・ギャラリー・ガイドの表紙に選出される。'95年、第46回ヴェネチア・ビエンナーレ絵画部門で東洋人として初の優秀賞を受賞。2002年、第13回MOA美術館岡田茂吉賞絵画部門大賞受賞。近作では、大徳寺聚光院別院の全襖絵、ホテル・グランドハイアット東京の壁画など。羽田空港第2ターミナルのアートディレクターなども手掛ける。『千住博画集-水の音』(小学館)、『絵を描く悦び』(光文社)などの著書も多数。2008年3月6日より日本橋高島屋にて千住博展、大阪、京都、横浜を巡回。
 
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