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トーキョー・アートエッセンス
No.011 心地よい生活のためのデザインを心がける 宮城 壮太郎 写真
語り手:デザイナー 宮城 壮太郎 氏
デザイナーの宮城壮太郎氏は、商品をデザインするほか、企業やブランドのロゴマーク、CI(コーポレイト・アイデンティティ)にかかわるグラフィックデザインや、店舗などの空間デザインなど幅広いデザインワークを行っています。心地よい生活のためのデザインを心がけ、ものをつくるだけでなく新しい人間の生活を提案していくことがデザイナーの仕事、という同氏にお話をうかがいました。

デザインの仕事は「用の美」を追求すること
「オールラウンドボウルズ」(チェリーテラス)/ボウルとざると水切りのセット。主要10アイテムをコンパクトに収納。
「オールラウンドボウルズ」(チェリーテラス)/ボウルとざると水切りのセット。主要10アイテムをコンパクトに収納。
 私にとって、デザインと工芸と芸術の世界は、それぞれの境界がゆるやかにつながっているイメージがあります。その境界は単に制作する量の違いなのか、ということについてよく考えますが、答えはわかりません。たとえば1000個以上、大量につくるとデザインで、100個ぐらいだと工芸の世界で、1個だと芸術なのか? とか。実際には、領域をオーバーラップしているつくり手がいると思います。たとえば、漆や陶器の工芸分野の作家でも、実用の面よりも自分の追求するかたちにこだわって、ものをつくっている人がいたり、逆に量産を前提でものづくりをしている人もいる。プロダクトデザインでも、家具などの分野では一点ものの作品も多く見られるので、アートとして捉えられる仕事なのかもしれません。
「パームハウスグラス」(チェリーテラス)/気軽にワインを楽しめて、収納も効率が良いことを狙った3個がきれいに重なるグラス。錦糸町のガラス工場で製作。
「パームハウスグラス」(チェリーテラス)/気軽にワインを楽しめて、収納も効率が良いことを狙った3個がきれいに重なるグラス。錦糸町のガラス工場で製作。
 デザインの仕事は「用の美」、すなわち使えるもので美しいものをデザインすることだと考えています。しかしながら、工芸や芸術と違って、大量にものをつくるということは、多くの人のエネルギーを結集する仕事になります。型代が何百万円もかかるという、現実的な問題もあります。我々デザイナーは基本的には、ものをつくって売りたいクライアントがいて、その依頼の主旨に添った形でその商品のデザインをするわけです。ですから、職人さんやアーティストのように、自分の裁量だけでものをつくって表現することができる人たちを、うらやましいと思うこともありますね。

デザイナーの職能が広がってきている
「フラットかるヒット」(プラスステーショナリー)/綴じる力が少なくて済むフラットタイプのコンパクトなステープラー
「フラットかるヒット」(プラスステーショナリー)/綴じる力が少なくて済むフラットタイプのコンパクトなステープラー

 私が就職した1970年代は、デザイナーは企業に勤めるのが普通でした。今、工業デザインの概念はずいぶん変わってきたと思います。工業デザインは、基本的に産業革命以降のものです。もちろん、職人の仕事にもデザイン性は追求されていましたが、あくまでも少量生産。機械化が進み、職人の手仕事以上にものをつくるという大量生産の仕組みの中で、ある意味違った意匠性が求められてきたのです。日本では、多くのデザイナーはメーカーの中で仕事をしていました。どちらかというと、使い勝手はあまり考えずに、スタイリングを重視していた時代です。家電も自動車産業も、見た目で競合他社に勝てるかどうかが勝負でしたから、テレビでも電気ポットでも、花柄などの飾りがついていました。

 その頃の私は、浜野商品研究所という会社に勤めていて、商品のデザイン以外にもいろいろなことをやっていました。外部の事務所では、工業デザインはなかなかやらせてもらえなかった時代ですが、たとえば「テレビ」をものとして捉えるのではなく、「家族が一緒に楽しむ娯楽」というように「ライフスタイル」のレベルで捉えてみよう、「冷蔵庫」のデザインは上位概念であるキッチンのデザインに従属すべきだ、などという議論をよくしていました。

オフィス用品宅配サービス「アスクル」のロゴマーク
オフィス用品宅配サービス「アスクル」のロゴマーク

 80年代に入って時代が変わり、工業製品も中身の変革を求められるようになりました。景気がよくなって、デザイン教育もされるようになり、人々が新しい生活をするようになったのです。一部のおしゃれな人たちに北欧スタイルの家具が入ってきたりして、生活の中にデザインの幅が広がっていきました。景気や情報の拡大によって、一気にグローバル化が進み、海外の最新のデザインが日本のマーケットにも入ってきたのです。

 そうなると、デザイナーも外側だけじゃなくて、新しい生活スタイルを提案しなければならなくなってきます。さらにITや製造方法、材料などについての新しいテクノロジーのことや、環境問題、安全性などを考慮したユニバーサルデザインなど、デザイナーの職能として知っておかなければならないことが、非常に多くなってきました。


デザイナーが自分で考えて行動する時代に

 私は、デザイナーの仕事は横串を刺す仕事、つまり、ものをつなぎ合わせる仕事ではないかと思っています。どういう人が使うのか、どういうところで売られるのか、どういう目的で商品をつくるのか、コストを抑えること、不便のもとは何かなど、さまざまな立場の人の考えや問題などを考慮しなければならないので、幅広い見識が必要になってきます。昔よりも深掘りしなければならなくなっていると思うのです。

 今、デザイナーの人数は非常に増えています。デザイン系の大学や専門学校の数も増えました。毎年何万人もデザイナーが生み出されているけれど、それだけの仕事があるわけではない。そうすると、自分たちで考えて売り込みにいかないといけない。最近は、ものを実際につくってコンペに出すなど、グループで活動する若い人たちが増えていますね。若いデザイナーや若手の職人さんが、自分たちで考えて、自分たちで売っていこうとがんばっています。彼らは、大企業の中でものづくりをするのではなく、自分たちで工房をつくって活動しています。待っていたら仕事はないという外的な要因も多くあると思いますが、デザイナーが自分で考えて行動する時代になったと頼もしく感じています。


次回は・・・
宮城さんのアートや美術館の楽しみ方をうかがいます。[3月13日(木)アップ予定]

宮城 壮太郎(みやぎそうたろう) 宮城 壮太郎 写真
1951年東京都生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒業後、浜野商品研究所を経て、1988年宮城デザイン事務所設立。商品企画、商品開発、プロダクトデザイン、スペースプランニング、インテリアデザイン、建築計画、商業施設企画、パッケージデザイン、グラフィックデザイン、デザインコンサルティングなどを行う。「HD-1」などの光学機器、「Bioライト」などの照明器具、プラスの文房具、松下電工の照明器具、空気清浄器、チェリーテラスの調理・ダイニング用品、革小物など多くのプロダクトデザインを行う。他にASKULのCIデザインや東急ハンズ、セルリアンタワー東急ホテルのサインなど、グラフィックデザインや環境デザインのプロジェクトも手掛けている。湘南工科大学工学部機械デザイン工学科 非常勤講師。法政大学大学院システムデザイン研究科 兼任講師。千葉工業大学工学部デザイン科学科 非常勤講師。新日本様式協議会評議会委員(2007年)。日本デザインコンサルタント協会 会員。
 
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