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トーキョー・アートエッセンス
No.012 美術館の建築や空間をひとつの芸術として楽しむ 宮城 壮太郎 写真
語り手:デザイナー 宮城 壮太郎 氏
商品デザインから、グラフィックや空間デザインなど、幅広い分野で活躍しているデザイナーの宮城壮太郎氏は、現代アートが好きで、学生時代から美術館やギャラリーに足繁く通っていたそうです。今回は、宮城氏が好きなアーティストや美術館についてお話をうかがうとともに、日本のデザインについて最近考えていることを聞かせていただきました。

芸術の持っているエネルギーに惹かれる
工事中のMoMAは仮設建築もおもしろかった
工事中のMoMAは仮設建築もおもしろかった

 デザイナーにとって、美術館に行くことはとっても大事だと思います。美術館や博物館は、今まで見たことのないものを見る、受けたことのない感動を受けることができる場だと思います。好き嫌いは別として、やったことのないこと、見たことのないものを受け入れてみるということは、デザイナーとしてひと通り経験しておくべきでしょう。

 アートとデザインは一般的に近いものだと考えられていますが、根本的には対極をなすものだと思います。アートはアーティスト個人の作品ですが、デザインは非常に多くの人の考えを反映させるもの。私が美術館に行くのは、何かアイディアをもらいに行くというよりは、芸術の持っているエネルギーに惹かれるからです。個人的には、新しい現代アートが好きですね。素材や色の扱い方、形などに、すごく新鮮な驚きがあります。大学時代から、美術館やギャラリーに通っていました。

海が見えるデンマークのルイジアナ美術館
海が見えるデンマークのルイジアナ美術館

 好きなアーティストは、何度見てもすごいと思います。その作品を見ないと損、と思わせてくれるのです。キーファー、ジャスパー・ジョーンズ、クリスト、川俣正、舟越桂などの作品は、本当に驚くほど美しく、エネルギーにあふれていると思います。私はコンセプチュアルアートにはあまり興味がなくて、言葉はいらないと考えています。言葉にすると薄っぺらになるような気がしてしまうんです。単純に美しいとか、でかいなあとか、手間がかかってるなとか、心が癒されるなとか、びっくりしたなあとか、このエネルギーは何なんだ!?というものが好きです。美術館の建築にも興味があります。それぞれの展覧会の作品の見せ方や、見せる工夫にも注目しています。

 海外に行っても、よく美術館に行きますね。ニューヨークではMoMA(ニューヨーク現代美術館)には必ず足を運んでいます。いつもいくつかの企画展をやっていて、常設展の品揃えもすごいなと思います。改修工事中の仮設の施設(MoMAQNS)も興味深かったです。ニューヨークではグッゲンハイム美術館もおもしろいですし、イサムノグチのアトリエを使ったノグチミュージアムも素晴らしいです。他に好きな美術館は、パリのピカソ美術館、ベルリンのハンブルガーバンホフ美術館と新ナショナルギャラリー、ヘルシンキ現代美術館(キアズマ)。デンマークのコペンハーゲン郊外にあるルイジアナ近代美術館は、海が見える美術館です。大学時代に行って感動したのですが、数年前に再訪することができました。訪れてみたいのは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館、ロンドンのテートモダン、現代アートではありませんがパリのケブランリー美術館などですね。外国に限らず、私は展覧会で何をやっているかということではなく、美術館の建築や空間を、ひとつの芸術として楽しみに行っているように思います。


日本的な何かが持つポテンシャリティ
「TsunTsun」(アッシュコンセプト) シリコン製の石鹸置き。
「TsunTsun」(アッシュコンセプト) シリコン製の石鹸置き。

 最近の日本は、ものをつくりすぎていると思います。お店も多すぎるし、人も都市に集中しすぎる傾向があります。もっと自然に、うまくやっていく仕組みを考える時代になったのではないかなと思っています。そのひとつの材料が、アートかもしれないと考えています。大量にモノをつくらなくても、きちっとやっていく方法があるはずなのです。テクノロジーの面でも、教育の面でも新しいやり方を考えていかなければならないと思っています。

 日本は時間をかけないで、急激に近代化した国で、その弊害が出てきているのではないでしょうか。産業化を進めて、工業製品を大量に生産するためにつくりあげた社会のシステムの中で、我々は生活しています。しかしながら、社会のしくみや考え方が現実の社会に追いつかなくなってきたのではないかと思うのです。今後の日本のあり方や人々の生活のあり方を、我々は真剣に考えていかなければならないでしょう。

 先日、「新日本様式」協議会の評議委員として「新日本様式」100選の選定に参加しました。経済産業省が、世界的な産業競争力を高めるために「日本」ということを切り口に日本の伝統文化に基づくものづくりを再評価し、そこから、新しい考え方やライフスタイルを考えてみようという試みです。日本企業によるMade in Japanの商品、コンテンツ、サービス、システム、空間などを対象とし、2007年は63点のアイテムが選ばれました。(2006年と合わせて116点)

 商品選定の基準に「3つのこころ」というものがありました。「匠のこころ」「ふるまいのこころ」「もてなしのこころ」というものです。最初は、今さら日本にこだわらなくてもよいのではないかとも思ったのですが、実際に選定をする中で、技とか美意識とか思いやりといった「こころ」の要素が反映されたものが日本には多いのかもしれないと感じました。現場の人間としては、日常の仕事の中で日本の文化や場所性、風土、デザインなどを強く意識してモノづくりをするわけではないけど、結果として「日本的なる何か」がなんとなく備わっていれば、それはそれで自信を持ってもよいのではないかと思います。そして漠然とした印象なのですが、そこに世界にも通じる日本のポテンシャリティがあるのではないかと感じたのです。

千駄ヶ谷の自宅
軽井沢オフィス
左:千駄ヶ谷の自宅、右:軽井沢オフィス 
2006年より職住接近を実現した。また、10年前から夏には軽井沢オフィスで仕事をする体制を整え、約3ヶ月間東京を離れて生活をしている。

次回は・・・
美術史家の山下裕二氏をご紹介します。[4月10日(木)アップ予定]

宮城 壮太郎(みやぎそうたろう) 宮城 壮太郎 写真
1951年東京都生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒業後、浜野商品研究所を経て、1988年宮城デザイン事務所設立。商品企画、商品開発、プロダクトデザイン、スペースプランニング、インテリアデザイン、建築計画、商業施設企画、パッケージデザイン、グラフィックデザイン、デザインコンサルティングなどを行う。「HD-1」などの光学機器、「Bioライト」などの照明器具、プラスの文房具、松下電工の照明器具、空気清浄器、チェリーテラスの調理・ダイニング用品、革小物など多くのプロダクトデザインを行う。他にASKULのCIデザインや東急ハンズ、セルリアンタワー東急ホテルのサインなど、グラフィックデザインや環境デザインのプロジェクトも手掛けている。湘南工科大学工学部機械デザイン工学科 非常勤講師。法政大学大学院システムデザイン研究科 兼任講師。千葉工業大学工学部デザイン科学科 非常勤講師。新日本様式協議会評議会委員(2007年)。日本デザインコンサルタント協会 会員。
 
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