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トーキョー・アートエッセンス
No.013 絵に呼ばれるっていうのは、必然なんです。 浄土宗大本山増上寺(東京都港区芝公園) 写真
語り手:美術史家・明治学院大学教授 山下裕二氏
最近、日本美術がおもしろい。昨年開催された大型企画、若冲展、狩野永徳展、鳥獣戯画展など、並んで見たという方も少なくないのでは? 日本美術ブームの到来は、展覧会の盛況ぶりからもうかがい知ることができます。今回は、日本美術の魅力を発信し続けている美術史家の山下裕二氏に、“いま、呼ばれている”という狩野一信の《五百羅漢図》についてお話しいただきました。

狩野一信《五百羅漢図》第57幅「神通」部分 (c)増上寺蔵 鏡に写る阿弥陀仏の、後光ならぬビーム光線を見せつける羅漢
狩野一信《五百羅漢図》第57幅「神通」部分 (c)増上寺蔵
鏡に写る阿弥陀仏の、後光ならぬビーム光線を見せつける羅漢
まだ誰も気づいていないものを、発信する

 ここ数年、日本美術の大型企画には、時間待ちの行列ができる。《動植綵絵》33幅がそろって展示された相国寺承天閣美術館の若冲展、京都国立博物館の狩野永徳展、サントリー美術館の鳥獣戯画展などは大盛況でしたね。10年ほど前まで、日本美術は、見る前に何となくただの古臭いものと思われていました。すごく魅力があるのに、一般の人にはほとんど知られていないと。そういった状況を変えるために、私はかなりジャーナリスティックな活動をしてきたわけです。本の表紙でコスプレするようなことも、積極的にやってきました。そういった活動で、まずはメディアの人たちが日本美術のおもしろさに気づいてくれた。仕事の依頼に応えて、一生懸命書いたりテレビに出たりしているうちに、世の中が気づいてきてくれた。そうやって日本美術への関心が膨らみ、21世紀に入ってじわじわ広がってきた状況があって、ここ2、3年で一気にブームになったという感じです。私自身が日本美術のメディアとして機能することを、10年位意識してやってきたことは確かですね。

 岡本太郎だってそうですよね。いまでこそ、書店に行けば岡本太郎の本がずらりと並んでいますが、太郎が亡くなった12年前には、その存在はほとんど忘れられていたんです。こんなにすごい人なのに、これだけ忘れられているという思いがあったから、岡本敏子さんとともに、太郎復活のためにいろいろなメディアで紹介をしてきました。専門家ではなく、センスを持った一般の人たちに情報が届くようにすれば、必ずみんなわかってくれる。太郎の本が、棚にあふれるきっかけはつくれたのかなと思っています。いまの私にとって、こんなにすごいのに忘れられているというギャップ、作品の質と認知度のギャップが最高に大きいものが、狩野一信の《五百羅漢図》です。

狩野一信筆《五百羅漢図》とは
狩野一信(1815〜63年)は本所の骨董商の家に生まれ、後に狩野派に入門。絵師として《源平合戦図屏風》(板橋区立美術館蔵)や、成田山新勝寺不動堂の《雲龍図》、《天女図》などを残しているが、一信最大の画業こそ増上寺に奉納された《五百羅漢図》。縦172.3×横85.3センチメートルの掛軸で、1幅につき5人の羅漢が描かれ、計100幅が存在。極彩色の仏画に陰影法という怪しい世界に圧倒される。しかし《五百羅漢図》公開の機会は少なく、一信は長らく知られざる絵師だった。


テレビ番組制作の様子(増上寺内) 1幅170センチメートルを超える《五百羅漢図》。番組では100幅全てを公開する予定です

テレビ番組制作の様子(増上寺内) 1幅170センチメートルを超える《五百羅漢図》。番組では100幅全てを公開する予定です
テレビ番組制作の様子(増上寺内)
1幅170センチメートルを超える《五百羅漢図》。番組では100幅全てを公開する予定です
《五百羅漢図》も、出るべくして出るもの

 いままでも、雑誌などで断片的に紹介してきましたが、《五百羅漢図》と本格的に関わることになったのは、去年の11月、増上寺から展覧会をやりたいという連絡があってからです。2011年は、浄土宗の開祖、法然の800年遠忌なんですね。その年に、東京で大きな記念行事を行いたい。所蔵作品の中から、展覧会を企画してほしいと依頼がきたわけです。するとその翌日、NHKのプロデューサーから《五百羅漢図》で番組を制作したいという電話がきました。プロデューサーの中沢さんとは10年来のつき合いですが、たまたま増上寺に行き、お寺のパンフレットを手に取ったところ《五百羅漢図》が載っていたと。「これはすごい! 山下さんが紹介していたあの絵だ!」と思い出して、連絡をくれたんですね。展覧会の企画と、番組制作の依頼が1日違いで来るのもすごいですよね。でも、そういうことってあるんです。シンクロニシティなんですね。それがこのサイトにまで波及してるわけ(笑)。草葉の陰から呼ばれるんですよ。これはもう、必然です。あの絵を世に出せという、一信の指令です。

 現在、数本のテレビ番組制作が進行していて、既に放映が終わってしまっているものもありますが、1時間半位のハイビジョンスペシャルで《五百羅漢図》の特集を夏以降に放映します。この番組の映像は必見ですよ。広いスタジオの中に100幅を1幅ずつ林立させて、その中をカメラが動いていくというものです。1幅170センチメートル以上の大作が100幅並んだ迫力は、相当なものです。ひとりの人間が命がけで10年かけて描こうとし、ただただ、自分が描きたくて描いた。10年かかって96幅まで描いて、力つきて一信は死んじゃった。凄まじい絵です。それなのに、これだけすごいのに、ほとんど誰も知らない。

 戦前までは、増上寺に羅漢堂という建物があり、そこで《五百羅漢図》を公開していました。名所にもなっていたんです。しかし、お堂は昭和20年の空襲で焼失。幸い作品は助かりましたが、展示する機会がほとんどなくなってしまったんですね。その後、数点は展覧会に出品されることもありましたが、《五百羅漢図》を知っているのは、専門家の中でもごく一部の研究者のみ。100幅全てを見たのは、私が2人目でしょう。まだ誰も気づいていないもの、こんなにすごいのに認知されていないものこそ、展覧会で世に問うべきなんです。3年後には、しかるべき場所で《五百羅漢図》100幅全てをまとめて初公開します。まだ少し先のことなので、まずはテレビ放送で一信の奇想天外な世界にふれてほしいですね。

次回は…
山下裕二氏が思い描く「R指定の美術館」についてご紹介します。[5月8日(木)アップ予定]

狩野一信《五百羅漢図》第61幅「禽獣」部分(c)増上寺蔵 動物まで手なずけて教化する羅漢。右の羅漢の下、見えない部分が必見 ※掲載画像の全ての複製・転載、無断使用する行為は禁止いたします。
狩野一信《五百羅漢図》第61幅「禽獣」部分(c)増上寺蔵  動物まで手なずけて教化する羅漢。右の羅漢の下、見えない部分が必見
※掲載画像の全ての複製・転載、無断使用する行為は禁止いたします。

大岩オスカール《ガーデニング(マンハッタン)》部分 2002年 東京国立近代美術館蔵 (c)Oscar Oiwa 東京都現代美術館「大岩オスカール 夢みる世界」より 会期:4月29日(火・祝)〜7月6日(日)山下氏所蔵の大岩作品も出展される予定です。
大岩オスカール《ガーデニング(マンハッタン)》部分 2002年 東京国立近代美術館蔵 (c)Oscar Oiwa
東京都現代美術館「大岩オスカール 夢みる世界」より
会期:4月29日(火・祝)〜7月6日(日)
山下氏所有の大岩作品も出展される予定です。
インフォメーション
各イベントの詳細、お申込み方法等は、公式ホームページ・お電話にてご確認ください。

■「大岩オスカール 夢みる世界」展 トークイベント 大岩オスカール×山下裕二
 日時:4月29日(火・祝)15:00〜
 会場:東京都現代美術館 地下2F 講堂 参加無料
 公式ホームページ:http://www.oscar-oiwa-mot.com

■ナディッフ モダン アート・セミナー 「日本美術」の現在・過去・未来
 講師:山下裕二
 日程: 第1講 6月28日(土)
第2講 7月5日(土)
第3講 7月19日(土)
第4講 7月26日(土)
 “日本美術ブーム”の現状
 “アートバブル”の功罪
 メディアと美術 −微妙な関係
 美術館への提言
 時間:各回17:00〜19:00
 受講料:1回/3,500円 4回/12,000円
 会場:Bunkamura 地下1F 会議室
 電話:03-3477-9134(4/28〜受付開始、各回定員25名)

■「生誕290年 木喰展」 特別対談「柳宗悦が発見した木喰」
 山下裕二×尾久彰三(日本民藝館学芸員)
 日時:7月6日(日)14:00〜
 場所:そごう美術館 展示室内(そごう横浜店 6F)
 電話:045-465-5515(当日10:00〜座席券配布、定員80席)
 ※参加費は無料ですが、入館料が必要となります

狩野一信筆《五百羅漢図》関連
■NHK BS ハイビジョン番組:今夏以降の放映を予定
■展覧会「増上寺展」(仮称):2011年の公開に向けて現在準備中

山下裕二(やましたゆうじ) 山下 裕二 写真
1958年、広島県生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院修了。美術史家。明治学院大学文学部芸術学科教授。日本美術応援団団長。1993年、論文「夏珪と室町水墨画」で国華賞受賞。室町時代の水墨画研究を端緒として、縄文から現代まで幅広い領域で評論活動を展開。主な著書は、『室町絵画の残像』(中央公論美術出版)、『岡本太郎宣言』(平凡社)、『日本美術の二〇世紀』(晶文社)、『若冲になったアメリカ人ジョー・D・プライス物語』(小学館)、赤瀬川原平氏との共著『日本美術応援団』(日経BP社)、『実業美術館』(文藝春秋)など。刊行中の雑誌の連載に、『文藝春秋』(文藝春秋)の「日本美のかたち」、『みる花椿』(資生堂)の「其ノ、ココロハ」、『美術の窓』(生活の友社)の「山下裕二の今月の隠し球」などがある。
 
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