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トーキョー・アートエッセンス
No.024 東京から世界に向けて、音楽を発信する (c)kaburagi-amanagroup
語り手:指揮者・東京文化会館音楽監督 大友直人 氏
東京文化会館の音楽監督を務める大友直人さんは、指揮者として全国各地の演奏会で活躍されています。100人を超えるオーケストラを率いる、たった一人の指揮者という役割。どのように指揮者になり、どのような思いで第一線に立たれているのでしょうか。今回は、指揮者になるまでのいきさつ、世界最高峰の演奏家が集まる最大の音楽都市、東京から音楽を発信することの重要性について、お話しいただきました。

巡ってきたチャンス、確実につかむための準備をする
夏休み子ども音楽会2008(管弦楽:東京都交響楽団)より
夏休み子ども音楽会2008(管弦楽:東京都交響楽団)より

 古今東西、どこを見渡しても、「こうしたら指揮者になれる」という常道はないんです。私の場合、最初は作曲家になりたかったんですね。自分が作曲した曲をオーケストラが演奏する、といったことを夢に見ていました。それから作曲より演奏に興味が移り、レナード・バーンスタインのように作曲しながら指揮をしている姿に憧れて、高校から指揮者の勉強を始めたんです。それから、桐朋学園大学に進学しました。東京文化会館前館長の三善晃先生は、当時私の大学の学長だったんですが、大学1年生のとき、先生の音楽会が開かれることになりました。10人くらいのアンサンブルで、ふつうは指揮者がいらない規模ですが、最初にリハーサルをしたとき、曲が難しくて指揮者がいないと演奏できなかったそうで。演奏会は目前、リハーサルは1日しかないという状態で指揮者が必要ということになり、学長の三善先生から学生の私に、急に電話が掛かってきたんです。「プロの指揮者は急で頼めないから、大友さんやってくださる?」と。

 翌日、楽譜をいただき、夜のリハーサルに行ったところ、アンサンブルのメンバーが当時のNHK交響楽団の方々だったんですね。そのことを私がどうのこうのと言える立場でもなく、やるしかないと、コンサートをやり遂げました。それを見ていたNHK交響楽団の方たちが「学校で勉強もいいけれど、NHK交響楽団で実践する方が勉強になるよ」と言ってくださり、大学に通いながらNHK交響楽団でも勉強させていただいて。学生時代からNHK交響楽団と接点があって、推薦をいただき、デビューコンサートに出してもらったんです。これは偶然というか、めぐり合わせですね。実を言うと私はコンクールを受けたことが1回もないまま、デビューしてしまったんです。

 若いときは、可能性がうんと広がっています。先々が不安であったり、チャンスをつかむことは大変ですが、チャンスが巡ってきたときにしっかりとつかめるよう、今できることを積み重ねることが大切です。そしてチャンスをつかんだら、それに甘んじることなく精進を重ね、次のステップに備えるんです。音楽はスポーツと同様、シビアでごまかしがきかない世界。常に自分磨きをしていなければなりません。とはいえ、若いころというのは得で、「若いのによくやってる」と見てもらえます。しかし若いときは、あっという間に過ぎていくもの。「もう若くない」と言われたときから、その人の人生は始まると思います。


世界の水準にアンテナを張り、東京という舞台で勝負する

 いまや東京は、世界で一番クラシック音楽のコンサートが多く開かれている街です。出演するアーティストの顔ぶれも世界最高レベルです。先日もロンドンの5つあるオーケストラのうち、2つが同時期に東京でコンサートを開いていました。東京の8つのメジャーオーケストラを含め内外のオーケストラコンサート、室内楽の演奏会をトータルすると、毎日、大変な数のコンサートが開催されていることになります。例えば12月だったら、東京は一晩で30公演くらいやっていて、世界を見渡してもこのような街は東京くらいです。しかしその割に、クラシック音楽の演奏会に定期的に行く習慣のある家庭は、意外と少ないのではないでしょうか。暮らしの中に音楽が自然にあって、演奏会通いをする人が増えていくようにしたいですね。

 また、東京は、世界中のアーティストが訪れ最高水準の演奏が繰り広げられているにもかかわらず、世界の目で見ると、残念ながらいまだに音楽都市としてカウントされていないんです。クラシック音楽というと、西洋音楽という意識がまだあります。いまだに、ロンドンやパリ、ウィーンで評価されてようやく「成功した」と。「アメリカはちょっとね、やっぱりヨーロッパでないとね」と言う方もいまだにいらっしゃるくらいです。しかし2009年のいま、世界の音楽界は均衡しています。謙虚であることも大切ですが、私たちはもっと自信を持って、そのことを発信していくべきなのです。ヨーロッパやアメリカで評価されたものを追いかけて、またそこで評価されることを追いかけている限りは、未来永劫、日本は変わりません。自分たちがつくりあげたものを評価してもらう、あるいは自分たちがもっと評価されるということに自信を持って立ち向かわなければなりません。

 海外では、日本の漫画やアニメーションが評価されていますが、作家たちは最初から海外に評価されることを意識していたわけではないと思います。まずは自分たちのファンを対象に、漫画やアニメーションを描き、それがたまたま海外で翻訳されてヒットしたということでしょう。まず海外で評価されることを意識しているうちは、自分たちのオリジナリティに自信を持てないのではないでしょうか。幅広い視野を持ち、常に世界の水準を識りながら、自分自身を掘り下げていくことが大切だと思います。私も10代で留学のことを考えましたが、世界中のメジャーが競い合っている日本で勝負をしようという結論を出しました。だからこそ私は、基本的には東京に軸足を置いて活動をしてきました。若い皆さんにも「海外にばかり目を向けないで、情報もクオリティも東京は負けていないんだぞ」ということを伝えたいですね。東京は世界屈指の大都会なのですから。

東京文化会館《響の森》vol.25 ニューイヤーコンサート2009(管弦楽:東京都交響楽団)より
東京文化会館《響の森》vol.25 ニューイヤーコンサート2009(管弦楽:東京都交響楽団)より

次回は…
精神科医であり、日本屈指の現代アートコレクターのひとりである高橋龍太郎さんをインタビュー。
5月20日からはじまる展覧会「ネオテニー・ジャパン―高橋コレクション展」についてお話しいただきます。[4月23日(木)アップ予定]

大友直人(おおともなおと)  大友直人(おおともなおと)
(c)kaburagi-amanagroup

1958年東京生まれ。桐朋学園大学卒業。指揮を、小澤征爾、秋山和慶、尾高忠明、岡部守弘各氏に師事。タングルウッド音楽祭において、A.プレヴィン、L.バーンスタイン、I.マルケヴィッチからも指導を受ける。桐朋学園大学在学中からNHK交響楽団の指揮研究員となり、22歳で同楽団推薦によりNHK交響楽団を指揮してデビュー。日本フィルハーモニー交響楽団・正指揮者、大阪フィルハーモニー交響楽団・指揮者、東京交響楽団・正指揮者、京都市交響楽団・首席指揮者および常任指揮者兼アーティスティック・アドヴァイザーを経て、2004年より東京交響楽団・常任指揮者、東京文化会館・音楽監督、2008年より京都市交響楽団・桂冠指揮者を兼任。2000年、第8回渡邊暁雄音楽基金音楽賞受賞。2008年、第7回齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。

 
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