東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
展覧会・イベント情報 アーティストファイル エッセンス ビジョン スポット
マイページ サイトマップ
Tokyo Art Navigationとは?
TOPICS
TOP
トップ > トーキョー・アートエッセンス
トーキョー・アートエッセンス
No.029 自分にしかできないことをやる
語り手:編集者/クリエイティブ・ディレクター 後藤繁雄氏
大学教授、ギャラリーのディレクター、コンペの審査員など、さまざまな肩書きを持ち、これまで数多くの若手アーティストを世に発信してきた後藤繁雄さん。編集歴30年のキャリアを持ち、現在でも「独特編集」者というスタンスで、コンテンポラリーアートの動向に深く携わっています。今回は、創作活動を続けている若手作家のみなさんに向けて、この時代をどのようにサバイバルすればいいのか? アーティストとしてすべきことは何か? などについてお話しいただきました。 後藤繁雄(著)『僕たちは編集しながら生きている』


9月5日(土)からスタートするグループ展「NEW DIRECTION:exp.」ではキュレーションを担当

新しい価値観を創出するひとつの方法が編集

 気がついたら長く仕事してきたし、よくしゃべるし、インパクトも強いから、大学教授とか肩書きがついてるんだけど、基本的に僕は権威をめざす人間ではなくて、ゲリラ戦の人だと思っています。18歳とか大学生の頃から編集の仕事をはじめて、もう30年くらいずっと現場にいる。どうすれば「私は編集者です」と言えるようになれるのか、自分でいろいろやっていくうちに編集者になってしまったというタイプで、僕みたいなのは珍しいでしょう。印刷所でアルバイトをしながら編集を覚えたので、レイアウトも取材も全てひとりでやらなきゃいけない。だから、編集は全部独学。基本的なスタンスは、何かをやりたいと思ったら自分で考えてやればいいと。

 僕は70年代の人ですから、モダンの終わりですね。全共闘運動みたいなのが終わり、価値観が多様化し、芸術と科学の組み合わせであるとか、新しい価値観というものが掛け算でつくれるかもしれないという可能性のあった時代。新しいものへの期待感、新しい表現が生まれたり新しい才能や思想が現れたりすると、世の中が変わるっていうことを、体では信じている世代なんです。そういうとき、ある新しい価値観を発明するためのクリエイティビティの方法として、編集があると思った。当時は、カタログとか商業主義的な編集にノウハウが集中してしまったり、広告の時代に入ると本の制作が分業制になっていったりと、世の中の編集の動きは変わっていくんですが、時代を変えていくのは人間だという信仰が今も強いですね。

トーキョーポートフォリオレヴュー(*)Vol.2の様子*G/P galleryとオランダの写真誌『Foam magazine』が共同で行う写真家発掘イベント。

トーキョーポートフォリオレヴュー(*)Vol.2の様子*G/P galleryとオランダの写真誌『Foam magazine』が共同で行う写真家発掘イベント。

トーキョーポートフォリオレヴュー(*)Vol.2の様子
*G/P galleryとオランダの写真誌『Foam magazine』が共同で行う写真家発掘イベント。


世の中を変える可能性のあるものがアート

 ひとことで言うと才能フェチなんですが、この世の中のどこかに、時代をひっくり返したり動かしたりするやつが隠れているに違いないという信仰があるんです。だけど世の大人は、世の中こんなもんだってすぐ言う。絵画は死滅したとか、この表現は既に経験したとか、自分たちが知ってるものに置き換えてしゃべりがちなんだよね。僕はこういった「あきらめ」の背景があるからこそ、「希望」をつくり出さなければいけないとも思っていて。つまり、世の中を変えるような才能を発掘し、「この世は捨てたもんじゃない」ってことが言いたい。美大の就活とかで「卒業後どうするんだ? どうやって食っていくんだ?」って、必ず聞かれるでしょ。僕は「どんな手を使ってでもやれ」と言うし、具体的なノウハウを考えるのが好き。不可能なことほど、すごく燃えるね(笑)。

 結局、アーティストが漠然と創作をしていればうまくいくとは、全然思ってない。経済の右肩上がりとか、放っておいてもうまくいく時代とは今は違う。狭い部屋の中で、限られた空気をみんなで吸い合って生きているみたいな社会だと思うんだよね。だから、サバイバルとクリエーションというのは、不可分に結びついているという意識も非常に高い。絵描きで、ただうまいだけでは差別化できないし生き残っていけない。他の人と違うことはどうやってできるのか。自分でないとできないことは何かということを考えて、なおかつ実行しなければいけない。こちらも、本気で才能を発掘しない限り、世の中は変えられないという状況だと思う。


Paris Photo 2008の様子
Paris Photo 2008の様子

比較があってこそ成長できる

 僕は昔から、近いライバルと遠いライバルがいないと成長しないと言っているんです。やっぱり、どんなものでも競争相手が必要。自分だけでは伸びない。だから、まず近いライバルは、自分の周りにいるやつを設定する。もう一つは遠いライバルっていうのがいて、仮にピカソが自分のライバルだと思ったとする。恥ずかしいじゃん、言うの(笑)。だから人には言わなくていいわけ。でも、そういう歴史上のとんでもない人を設定することは大切。志は高い方がいい。俺はあいつとタメはるぜとか(笑)。

 杉本博司さんはすばらしい写真家だけど、やっぱりやるべきことをやってるんです。自分の作品の隣に、室町時代の水墨画とかをかけて、自分の写真と見比べるんだね。時代に消費されない表現だろうかとか、本当にクオリティの高いものを隣り合わせにして、自分の作品を試す。比較があって初めて人間は鍛えられる。こういう習慣をつけることも、成長につながると思います。あとは、そこから自分にしかできないことが何かということを知る。それが一番重要。僕は「独特」という言葉が好きなんだけど、これは「独り特別」という意味。人間というのは結局、その人にしかできないことを体現できるかどうかなんだ。

 これまで1000人以上のインタビューをやってるんだけど、例えば、高円寺に住んでいるアーティストにインタビューしに行くのと、地球の裏側ブエノスアイレスに行くことって、基本的には同じことなんです。そこに行かないと会えない人に会いに行くという点からすれば、距離が違うだけ。会いに行く立場の人間は、そうやって作家に会いに行きます。反対のことを考えるとわかりやすいと思うんだけど、自分が作家だとする。後藤っていうのが、東京にいるらしいぞと。それで会いに来る誰かが現れるかってことが、才能というもののひとつのバロメーターになる。そういう関係性を、世界に対してつくれるか。これからのアーティストには、戦略的に頭を使ってサバイバルすることが必要だと思う。

information

■鈴木親写真展
G/P galleryでは、8月21日(金)より、フランスの雑誌『PURPLE』を中心に写真を発表し続け、国際的に高い評価を勝ち得ている鈴木親の個展を開催。新作15点を展示のほか、新聞スタイルの写真集『LUMEN#6 CITE 』も発表。
会期/2009年8月21日(金)〜9月20日(日)月曜定休
時間/12:00〜20:00
会場/G/P gallery(東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 2F)
http://gptokyo.jp/

■TOKYO PHOTO 2009
国内外のギャラリーが一堂に会し、写真作品の展示・販売が行われる国際的なアートイベント。後藤繁雄さんは東京フォト委員会アドバイザリーとして、ステートメントブースをキュレーション。将来性のあるアーティストを発信する。
会期/2009年9月4日(金)〜9月6日(日)
時間/11:00〜17:00(5日のみ19:00まで)予定
会場/ベルサール六本木1F・BF(東京都港区六本木7-18-18)
料金/当日1,500円
http://www.tokyophoto.org/

■NEW DIRECTION:exp.
若き才能を発掘・育成するため、トーキョーワンダーサイトと京都造形芸術大学が連携。京都造形芸大教授の後藤繁雄さんが中心となり、東京藝大教授の木幡和枝さんとの共同キュレーションで、全国の美術大学・大学院卒業者の中から、「新たな動向」を予感させる才能を選抜し、グループ展を構成。
会期/2009年9月5日(土)〜9月27日(日)
時間/11:00〜19:00 (入館は閉館30分前まで)
休館/月曜日(祝日の場合は翌日)
会場/トーキョーワンダーサイト本郷(東京都文京区本郷2-4-16)
http://www.tokyo-ws.org/

■Paris Photo 2009
毎年パリで開催される写真作品のアートフェア。世界23カ国から88のギャラリーが集結し、G/P galleryでは篠山紀信、上田義彦、小山泰介、うつゆみこを出品。
会期/2009年11月19日(木)〜11月22日(日)
http://www.parisphoto.fr/

■アートビートパブリッシャーズ新刊情報
京都造形大学在学中にギャラリー小柳の展示で注目を浴び、海外でも人気上昇中の佐藤允、初のドローイング集『はつ恋』が限定500部で販売中のほか、注目の作家うつゆみこの写真集も今秋発売予定!

次回は…
引き続き後藤繁雄さんに、アートプロデュースに必要なことなどについてお聞きします。[9月24日(木)アップ予定]
後藤繁雄(ごとうしげお) 後藤繁雄(ごとうしげお)

1954年、大阪府生まれ。編集者、クリエイティブ・ディレクター、京都造形芸術大学教授。「独特編集」をモットーに、坂本龍一、荒木経惟、篠山紀信、蜷川実花など、数多くの写真集やアートブックを編集。インタビュアーとして『high fashion』でアーティスト・インタビューを連載するほか、展覧会企画、キュレーション、アートアワードトーキョー丸の内コミッティ、magical, ARTROOMスーパーバイザー、AMUSE ARTJAMなど、コンテンポラリーアートの分野で若手アーティストを発掘・育成するさまざまなプロジェクトに携わっている。2008年、恵比寿にオープンした写真とグラフィック専門のG/P galleryではディレクターを務め、新進作家を精力的に紹介。2009年度第13回文化庁メディア芸術祭では、エンターテインメント部門の審査員も務める。
http://www.gotonewdirect.com/

 
創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
東京・ミュージアム ぐるっとパス2007
詳しくはこちら