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トーキョー・アートエッセンス
No.031 可能性のフィールドをつくりたい
語り手:ギャラリスト/ULTRAフェアマネージャー 池内務さん
90年代初頭、東京大森にオープンした「レントゲン藝術研究所」は、椹木野衣さんが初めて企画展を行い、村上隆さんや会田誠さんほか、当時の新進アーティストが展覧会を開催するなど、さまざまなイベントが繰り広げられていたアートスペースです。そのオーナーが池内務さんで、これまでアーティストだけでなくギャラリストも世に輩出。彼らが、現在のアートシーンで活躍しています。今回は、去年はじまった「ULTRA」(若手ディレクターが、個人単位で出展するアートフェア)について、その誕生の経緯と、目的などについてお話しいただきました。

アートフェア「ULTRA」誕生までの経緯

 日本のアーティストがおかれた状況ってとても特殊で、まずアーティストの数がすごく多いじゃないですか。美大もいっぱいあるし、美術の専門学校もやたらある。美術雑誌も、本来あるべき評論がなくて、美術学校の広告ばかり出ている。むしろそのことが日本のアートの状況を明確に表していると、そのへんのことについては昔、村上隆が突っ込んでいたんですけどね。要は、アーティストばかり増やすんじゃなくて、作品を見せる層も増やしていかなければならい。そういったことができないかなと、以前から思っていました。ただ、「ULTRA」は瓢箪から駒の企画で、去年ある方から「池内さん、なんか面白いことやってよ」と言われてスタートしたもの。その方は、バーゼルからマイアミ、世界中で開催されるアートフェアを見て回った上で、「池内さん、つまんないよ。どこへ行っても同じで刺激がない。新しい切り口で、なにかやってよ」と僕に言うわけです。それで、頭をひねった。

 僕が20代中盤の頃、いまの「アートフェア東京」の前身「NICAF」があって、その前に「東京アートエキスポ」っていうフェアがあったんです。これは、西村画廊さんとかフジテレビギャラリーさんが中心になって運営していたもので、そこに僕は、事務方の下っ端で混ぜてもらったんですね。いわゆる下働きのスタッフではなくて一画廊の代表として混ぜてもらったんですが、そのとき、先輩方に非常にかわいがってもらった。白石コンテンポラリーアートの白石さんにしてもそうだし、フジテレビギャラリーの山本さん、西村画廊の西村さんなんかが、面白いやつがいるってかわいがってくれたんですね。そこでいろんなことを学んだわけですが、そういう先輩後輩みたいな関係性を、なにかしらシステム化した上で次世代に残せないか。そういった思いが、「ULTRA」をスタートさせる意志のひとつにもなっています。


次世代のディレクターを育成する場

 既に、先輩後輩の関係性がギャラリー内でできているところもあって、TARO NASUさんのところがそうかな。去年の「ULTRA」は細井さんというディレクターが出展したんですが、その下の鹿又君が「来年は僕がやりますから」と言っていて、今年出展が決まったとたん「もう僕やりますから!」って(笑)。それぐらい、画廊で働いているスタッフである一定以上の意識を持った人間っていうのは、自分で見せたいことだとか、やりたいことが明確になっているんですよ。それをリリースしない手はないと。だけど、だからこそ、自分のところのスタッフをこういった形でオープンにしている画廊のオーナーさんたちに、僕は敬意を表します。これはすごく度胸がいる。だって、自分のところのスタッフが、自分の画廊の作品じゃないものを持ち出しかねない。もしかしたら、テイストが全く違うものかもしれない。それでも「いいよ、やってこい。お前の力を見せてみろ」って、なかなかできないことですから。

 各画廊内でこういった意識が生まれて、それが細井さんと鹿又君の関係みたいに、先輩が後輩に教えていったり、更には出展している20代前半から40歳までのディレクターの中で、先輩後輩みたいなものが見えてくる、お互いの交流ができる。オーナーレベルだったら、そういった場を持つことは簡単なんですよ。誰誰さんと何何さんを呼んで、ご飯でも食べましょうって。でも、スタッフ同士が交流を持つことってなかなかなかった。だから、こういう場というものを、次のジェネレーション、更にその次のジェネレーション、20年30年先のことを考えて、いまからつくっておかなければならないと思って。それでなにが起きるかって言うと、動きができる。動きができれば広がりができて、みんな幸せ。これはすごく大事。いろんなフェーズで、いろんな人が自信を持てる。「ULTRA」は、そういうものになるんじゃないかなと思っています。


個人の可能性を解放する

 もともとレントゲンから独立する人間というのも多くて、ZENSHI、ユカササハラ、山本現代、名古屋のマッチング・モウルのひとりも卒業生、ギャラリー・ハシモトさんもそうですね。彼らはうちにいたときからすごく独立心があった。入ってきたときも、アシスタントとしてではなく、必ず企画をやらせているんですよ。それが、新しい作家を世に出すきっかけになったり、それまで別の畑にいた人が、こっちの畑に来たりだとか。そういう可能性のフィールドっていうか、そういうものをつくりたいっていうが、そもそも僕にはあったんですね。結局画商は、作品を見せたいという意志を持って生きているわけです。そして、その意志はひとりの人間から発せられるもの。だから、アートフェアも個人の意識をそのまま持ってきたら、そのフェアは面白くなって然るべきだと。「ULTRA」の出展単位が個人なのは、そういう意味もあります。

 参加資格については、まず年齢を40歳以下に限定しています。これは、いま40歳以上でディレクターを務めていたら、ひとつの権威なり価値なりが個によって達成されていなければならないとか、そういうのがあると思うんですよね。それまでは、育てなきゃいけないし助け合わなきゃいけない。独立には経験も必要だし、一方で若さもすごく重要。それで、40歳。あとは、一定期間以上のギャラリー勤務経験など、ものを見せるということに対してある程度プロフェッショナルでなければならない。選考方法は論文で、全員に書いてもらいました。内容は、自分がどういうギャラリストであるか、どういう展示をするか、アーティストのプレゼンテーション方法について。みんな本当に真面目で真摯で、その態度だけでも泣けたね、正直。明確に自分のスタンスを認識した上で、こういう理由だからやっていきたいっていう。見せる側の意志が感じられるもので、今後の展開が楽しみです。

※掲載画像すべて昨年度の「ULTRA」(スパイラル)より
Photo: Katsuhiro Ichikawa (c)SPIRAL/Wacoal Art Center

information

「あるがせいじ 新作展」より
「あるがせいじ 新作展」より

■ULTRA002 EMERGING DIRECTORS’ ART FAIR
40歳以下の若手ディレクターが、個人単位で出展するアートフェア。美術界の次世代を担う彼らがセレクトするアーティストやその作品も必見。
会期/2009年10月29日(木)〜11月3日(火・祝)
時間/11:00〜20:00
会場/スパイラル(東京都港区南青山5-6-23)
http://gemba-firm.com/001ultra/002/ultra002.html

■あるがせいじ 新作展
紙にカッターで1ミリ角の穴を無数にあけ正確に並べることで創出する、あるがせいじの世界。それは、圧倒的な驚愕を与える。 2年ぶりとなる個展が現在開催中。
会期/2009年10月31日(土)まで ※日・月休廊
時間/11:00〜19:00
会場/ラディウム―レントゲンヴェルケ(東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17)
http://roentgenwerke.com

次回は…
引き続き池内務さんに、画商としての美学などについてお聞きします。[11月26日(木)アップ予定]
池内務(いけうちつとむ) 池内務(いけうちつとむ)

1964年、東京生まれ。玉川大学演劇専攻卒。ラディウム―レントゲンヴェルケ代表。美術商を営む家庭に生まれ、株式会社池内美術の現代美術部門として1991年、レントゲン藝術研究所を大森(東京都大田区)にオープン。倉庫を改造した3階建の空間で、椹木野衣のデビュー・キュレーションとなる「アノーマリー」展を開催。この時期、村上隆や小沢剛、会田誠、飴屋法水といった作家たちの展覧会も手がける。1995年以降、青山、吉祥寺、六本木と拠点を移動し、現在は日本橋馬喰町のラディウムで「hyper technik」(超絶技巧)、「solid shock」(固体衝撃)、「clever beauty」(怜悧美学)をコンセプトにかかげ、毎月企画展を開催。また、2005年より故・小笠原年男氏より引き継いだ那須の「藝術倉庫」の運営を継承。2008年9月からは、福岡「グラニフギャラリー」のプロデュースとディレクションを行う。

 
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