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トーキョー・アートエッセンス
No.035 美術館が核となり、都市のアートを牽引する
語り手:森美術館館長 南條史生さん
六本木ヒルズ内、森タワーの最上層に位置する森美術館。館長の南條史生さんは、これまで「都市とアート」という視点で、様々なアート・プロジェクトを企画。一夜限りのイベント「六本木アートナイト2010」の開催を3月27日(土)〜28日(日)に控え、現在はその準備を進められています。今回のインタビューでは、六本木だけでなく日本における街と美術館の今後の可能性などについてお話いただきました。

昨年度の「六本木アートナイト」より、ヤノベケンジ《ジャイアント・トらやん》
昨年度の「六本木アートナイト」より、ヤノベケンジ《ジャイアント・トらやん》

六本木におけるアートの展開

 これまでずっと、都市におけるアート、アートによる都市づくりという考え方が底流にあって、都市とアートが一体化するようなプロジェクトを手がけてきました。1994年にスパイラルで「人間の条件展」という展覧会を企画しましたが、これは建物の裏手の非常階段、男女のトイレ、楽屋や倉庫と多様な空間を使って実現しました。つまり、ギャラリー空間でない場所を利用して展示することを、かなり早い時期に実験的にやっていたわけです。それは、このような手法を拡張し、アートが街へ出て行けば、「都市におけるアート」の展開につながると思っていたからなんですね。それを最大限に実現したのは、第1回の「シンガポール・ビエンナーレ2006」で、この展覧会では市内のモスク、ヒンズー教の寺院などの宗教施設、古い市庁舎、旧軍事施設など19か所に作品を配置し、都市の様々な空間を全部使おうという発想でディレクションしたものでした。これは、外国からの訪問者のみならず、市民にさえ、もう一度シンガポールという街を読み直す、あるいは体験するきっかけとなりました。今年の3月に開催する「六本木アートナイト」も、同じ考えが根底にあります。

 「六本木アートナイト」は、森美術館、国立新美術館、サントリー美術館から成る「六本木アート・トライアングル」が出発点にあって、街の中にアートを展開するイベントへと発展させたものです。今、美術館は社会の中でどういう役割を果たしていくべきなのかという問いに答えるべき時だと思うんですね。そういう流れの中で、美術館がアートの仕掛人になれればいいなと考えています。都市や地域社会におけるアートの展開のリーダーシップをとって、「生活の中のアート」というサービスを社会に還元していく。そういった役割を持つことが、日本型美術館のレーゾンデートル(存在理由)になっていくかもしれない。特に地域振興にアートは重要な存在になっていますしね。「六本木アートナイト」も、東京のイベントの核になるように育てられないかなと考えています。東京の他のイベントを全部この時期に集中させて、「この時期に東京に来れば多様なアートが見られますよ」ということを海外に発信できれば、強いメッセージを出すことができるでしょう。


街とアートのこれから

 地域活性化と都市開発が結びついて美術館がつくられるようになったのは、1999年に開館した福岡アジア美術館くらいからだと思うんですが、それ以前の美術館の多くは行政が持っている地価の安い土地に、公共事業の一環として建てられるものでした。街の中心部から来るバスが1時間に3本とか、そういう利便性の悪い美術館が日本にたくさんつくられました。しかし都市開発のアイテムにアートが取り入れられるようになると、街の中心に美術館が戻ってくるわけです。金沢21世紀美術館は、街の真ん中にありますよね。しかも、ガラス張りで通り抜けられる広場という考え方になっている。十和田市の現代美術館は白い箱が点在する美術館建築ですが、企画展をやりたい時には、なるべく街へ出て行って展示する。また将来は、街の中にも美術館と同じ白い箱を建て、美術館が街へ出て行く、という展開が可能です。ということで、十和田では、ホワイトキューブの白い建築物を増殖させたり、その間にパブリックアートを設置したりと、極めてフレキシブルに街とアートと美術館が融合します。

 結局、都市がアートを活用するという立場から見ると大きくふたつの方法があって、インスティテューションをつくるか、イベントをつくるかのいずれかなんです。つまり、美術館を建設して、恒久的にアートを発信していきますというマニフェストを掲げるか、ビエンナーレのような瞬間的に人が集まるイベントで、極めて強い情報発信をするかという選択。あるレベルの都市になったら両方やるべきだと僕は考えています。一方で、日本には美術館、ギャラリーといった施設、ビエンナーレ、トリエンナーレなどのアートイベントが、既に随分ある。ひょっとすると、今や淘汰される段階に入っているのかもしれない。例えば、美術館の合併、コレクションの管理の一元化など、最終的に本当にいいものに収斂させていくべき時代なのかなと。

写真左より、十和田市現代美術館「チェ・ジョンファok!展」三本木小唄ナイト、商店街での作品展示

写真左より、十和田市現代美術館「チェ・ジョンファok!展」三本木小唄ナイト、商店街での作品展示

写真左より、十和田市現代美術館「チェ・ジョンファok!展」三本木小唄ナイト、商店街での作品展示


美術館運営と新しいビジネスモデル

 現在のアートの経済というのは、お金持ちがアートを支える構造になっています。一般の人は入場料を払って作品の鑑賞はするけれど、作品を購入するのはお金持ちというふうに。しかしこういう仕組みを変えることはできないのだろうか。今まであるシステムに依存するのでなく、根本的に違う新しい経済モデルをみんなで考えられないだろうか、ということを思います。マイクロクレジットという考え方でノーベル賞をとった、バングラディシュの銀行家ムハマド・ユヌスのように、例えばこうした方法を使ってインターネット上で、一人のアーティスト、あるいは一点の作品のスポンサーを募る。具体的に言うと、一口一万円で、みんなでアーティストの作品を買う。そんなスポンサーシップができないかという思いがずっとあるんです。既にネット上では昔の経済モデルが変わっているとも言えるわけだから、一対一の物々交換ではない経済、消費者と支援者と制作者の新しい関係に基づく経済を発想する必要があると思います。

森美術館で開催されている展覧会「医学と芸術展」(2009年11月28日〜2010年2月28日)より会場風景
森美術館で開催されている展覧会「医学と芸術展」(2009年11月28日〜2010年2月28日)より会場風景

 また、森美術館としては、アジアの美術業界やマーケットに対して何ができるのか、を考えています。他の美術館と展覧会を一緒につくるなど、何か今までとは違う美術館同士のネットワークの構築方法はないのか。そういったことを考えています。それに今は日本の中だけ見ていても生き残れないと思うんですね。MoMAやポンピドゥーは海外からの観客がものすごく来ているはずで、東京の真ん中にある森美術館もそういう存在になれないのかと思います。だから入場者を増やすために隣国で記者発表を開催するとか、外国の方にも森美術館のメンバーシップに入ってもらうということも必要です。それは社会に根を入れていくことですし、その結果新たな展開が可能になるわけです。既に海外の美術館数館とは友好関係をつくっていて、企画展の巡回や人の交流などを行っています。これを香港、台湾、中国、将来的にはシンガポール、マレーシア、インドネシアあたりともつくっていきたいなと思います。


Information

■六本木アートナイト2010
日時:3月27日(土)10:00〜3月28日(日)18:00
コアタイム:27日(土)日没17:58から28日(日)日の出5:34まで
※全体の開催の中でメインとなるインスタレーションやイベントが実施される時間
会場:六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、国立新美術館、サントリー美術館、森美術館、21_21 DESIGN SIGHT、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
http://www.roppongiartnight.com/

主催:東京都、東京文化発信プロジェクト室(財団法人東京都歴史文化財団)、六本木アートナイト実行委員会
【国立新美術館、サントリー美術館、東京ミッドタウン、21_21 DESIGN SIGHT、森美術館、森ビル、六本木商店街振興組合】(五十音順)
※本事業は「東京文化発信プロジェクト」事業です。
http://www.bh-project.jp/

南條史生(なんじょうふみお) 南條史生(なんじょうふみお)

1949年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部、文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。国際交流基金を経た後、インディペンデントキュレーターとして様々なアート・プロジェクトをディレクションしている。2002年森美術館開館準備室より副館長、2006年森美術館館長就任。これまでに、第47回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館コミッショナー(1997年)、ターナー賞審査委員(1998年)、第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞審査委員(2005年)等を歴任。アーティスティック・ディレクターを務めた「横浜トリエンナーレ2001」(2001年)、「シンガポール・ビエンナーレ」(2006年)は、第1回の立ち上げから携わっている。また、パブリックアート計画のコンサルタントとして「新宿アイランドアート・計画」(1995年)等がある。現在、各種団体の選考委員、コンペティション審査委員等としても活躍。
http://www.mori.art.museum/

 
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