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トーキョー・アートエッセンス
No.037 「個」に宿った文化・芸術意識を引き出す
語り手:3331 Arts Chiyoda統括ディレクター 中村政人さん
2010年3月、秋葉原に新たなアートスペース「3331 Arts Chiyoda」がプレオープンしました。「3331」とは、江戸時代から受け継がれてきた江戸の一本締めを表し、地域社会に根差した芸術・文化プロジェクトを発信する場となることを目的としています。今回は、アーティストであり同施設の統括ディレクターである中村政人さんにインタビュー。これまでのアートプロジェクトのお話から、今後の活動についてお聞きしました。

創作意欲を喚起させる街、秋葉原

 アーティストが主体となってアートプロジェクトを行う組織、「コマンドN」を立ち上げたのが、1997年。どうやって自分の表現活動を組み立てていこうか。そんなことを考えていた時期ですね。それまでグループショーをつくったり、ゲリラ展も何度か企画していました。ゲリラと言っても、委員会のようなものがあって、仲間うちで夜な夜な飲みながら作戦会議を練っていたという。めちゃくちゃでしたけどね(笑)。そこから、このめちゃくちゃは面白いけど、組織的に動けるようになりたいと。計画したことを実行するまでの段取り、公共という場に対して問題意識をもって活動していきたいと思ったんです。ですから秋葉原、神田を拠点とした活動は10年以上前から続けているんですね。

 そもそも「秋葉原TV(電気街の店舗に並ぶTVモニターに、国内外の映像作家の作品を上映する国際ビデオアート展)」をつくろうと秋葉原に来たのがはじまりです。街には専門用語が飛び交い、つくり手に対して「どうだ、つくれるか?」「こんなことも知らないのか?」みたいなプレッシャーをかけてくる。これは意欲の高い人たちに表れる傾向で、自分の立っているステージまで、相手がある程度同調してくることを望むわけです。創作者に何かを喚起させる街というか、街自体がエネルギッシュで、つくる意欲にあふれているんですね。実際、コンピュータが出てきて、サブカルチャーと言われていたアニメやゲームが主流になり、今あるカテゴリーでは抱えきれない発想や表現意欲が生まれています。秋葉原は、それを受け止めるだけでなく、街自体が次のステップに導こうとしているところ。新たな情報や考え方を街が吸収してくれたら、更なる選択肢もできるでしょう。

ビデオインスタレーション 秋葉原TV 秋葉原電気街での展示風景
ビデオインスタレーション 秋葉原TV 秋葉原電気街での展示風景

東京ラビット・パラダイス・プロジェクトより
東京ラビット・パラダイス・プロジェクトより


アーティストが地域文化を代弁する

 3331 Arts Chiyodaは、千代田区のアートスクエア構想の一環としてオープンした施設です。「江戸と現代」というテーマの中で、このエリアの地域性は何か? そのクエスチョンに応えていくことも活動目的のひとつになっています。そこで地域性、つまり地域の文化とは何かを考えると、そもそも文化って「個」に根差していて、ひとりの人間の習慣、その人が暮らしている街の慣習、風土が根付いているものです。普段はわからないけど、お祭りや儀式的なものがあると表に出てくる。それが見える瞬間って、やっぱり面白いじゃないですか。僕は、こういった街の人たちの日常に宿っている文化意識、芸術的な意識を引き出すことができるのが、アーティストやクリエーターだと思うんです。彼らの活動を通じて、この地の「個」に宿ったものが見えはじめる。すると、表出した文化を感じる人が生まれ、その人たちが増えれば新しいコミュニティの派生につながる。「個」が全体に広がるような、アートによって今まで感じにくかったことを感じはじめることができれば、それは成果のひとつになるのではないかと考えています。

 今年2010年3月14日にプレオープンし、4月11日まで開館記念の第1弾として「見るまえに跳べ」展を開催していたんですが、関連企画として行った日比野克彦さんのワークショップ「MATCH FLAG PROJECT in 3331」は、サッカーの対戦を国旗の上で再現するものでした。サッカーに宿っている文化を、アートを通じて体感するというか。ワークショップは、自分ひとりで何かをつくったり完結させるのではなく、「個」から全体へつながるためのアクションやきっかけづくりなんですね。この場で、知らない人と友だちになる。それが隣の街まで広がる。そういうつながり感、つながる意識や行為を経験することが大事だと思うんです。同じ日に行われた八谷和彦さんのワークショップはニコニコ動画で生放送されたんですが、視聴者にアートの意識が芽生えてくれたらいいなと。今後も、自分からものをつくり出す場をできるだけ提供していきたいなと思っています。

開館記念展 第1弾「見るまえに跳べ」日比野克彦 HからAへ移動した時に起こることより Photo:Ujin Matsuo
開館記念展 第1弾「見るまえに跳べ」日比野克彦 HからAへ移動した時に起こることより Photo:Ujin Matsuo

ワークショップ「MATCH FLAG PROJECT in 3331」の様子
ワークショップ「MATCH FLAG PROJECT in 3331」の様子


6月のグランドオープンまでと、その後の展開

 開館第2弾となる展覧会では、全く無名の作家の大個展をやります。佐々木耕成さんという82歳のアーティストで、読売アンデパンダン展の頃に一部では評価されていたんですが、70年代に渡米して、ニューヨークのコミュニティでリーダーをしていたり、ウッドストックの最前列でフィルムを回したりと、すごくうらやましい生活を送ってきた方です(笑)。80年代に帰国してからは、群馬県の赤城山の山奥にこもって世間とは一切情報を絶っていたんですね。でも、何かにとりつかれたように、ものすごい勢いで巨大な絵を描いているんですよ。そのエネルギッシュな活動、制作するパワー、動機……、佐々木さんの「個」に宿っているものが何かを突き動かす表現になっていて、僕はこれがアートの本質だと思うんです。なので、既に価値が決まっているアーティストをただ紹介するのではなく、表の美術史からもう一歩入ったところを見直そうと。カタログは福住廉君につくってもらっているんですが、すごく面白いですよ。

 グランドオープンしてからは、展覧会、ワークショップのほかに、スクーリングも予定しています。9月から来年の3月までに3回展覧会をつくるという授業で、本気の人のためのプロフェッショナルコースと、一般社会人コースの2コースあります。入学時に1回、2回目は外部で実施、3回目は3331全館をつかった展覧会を企画するという内容なんですが、現場でキュレーションを学ぶ機会って、なかなかないですからね。作家の意識、作家が作品をどう考えているかを知ることは、現場にいなければわからない。キュレーターだから大工ができなくてもいいかというとそうでもなくて、やっぱり作家の気持ちを理解して作品をどう見せていくか。ジャーナリスティックな視点をもって、展覧会を組み立てていくことが必要なわけです。作家だけでなく、キュレーターやマネジメント、ギャラリストを目指す方にも、3331という場を活用してほしいと思います。


Information

佐々木耕成 Photo:Ujin Matsuo
佐々木耕成 Photo:Ujin Matsuo

■3331 Arts Chiyoda 開館記念 第2弾 佐々木耕成展「全肯定/OK. PERFECT. YES.」

1960年代「読売アンデパンダン展」に参加するなど、前衛芸術運動の最前線で活躍していたアーティスト、佐々木耕成の個展。今年で82歳を迎える作家が、40年の時を経て新作を発表。巨大な抽象画など約50点を展示し、従来の戦後美術史とは異なる側面を提示する。
・会期:2010年4月23日(金)〜5月23日(日)

・会場: 3331 Arts Chiyoda 1階展示室
千代田区外神田6丁目11-14(東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分他)
・開場: 12:00〜19:00(月〜水)、12:00〜20:00(金、土、日、祝)
※入場は閉館の30分前まで

・休:毎週木曜日(ただし4月29日は開場)
・料金:一般800円、高校・大学生500円(中学生以下無料)


■3331 Arts Chiyoda発行 アーティストブック第1弾 中ザワヒデキ『芸術特許』

美術家、中ザワヒデキは1996年、新画材を発明し特許を出願した際「画材で作品を制作する以上に、画材の発明それ自体が芸術であると確信」。本書には、その発案・取得から証券化、売却に至る全経緯が収録されている。A4判、740ページ、10,000円+税で予約販売中。詳細は公式ホームページよりご確認ください。
http://www.3331.jp

(c)3331 Arts Chiyoda

次回は…
引き続き中村政人さんにお話をお伺いします。若手作家に向けたメッセージもご紹介。[5月27日(木)アップ予定]
中村政人(なかむらまさと) 中村政人(なかむらまさと)

1963年秋田県生まれ。アーティスト。3331 Arts Chiyoda 統括ディレクター。東京藝術大学准教授。89年、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了後、韓国の弘益大学大学院西洋画科修士課程卒業。97年、非営利芸術活動団体「アーティスト イニシアティブ・コマンドN」を主宰し、秋葉原電気街で国際ビデオアート展「秋葉原TV」の開催や、「美術と教育」をテーマにしたインタビュー集の発行など、社会参加型のアートプロジェクトを数多く展開。東京神田の「KANDADA」を拠点に、秋田県大館市の活性化を目的とした「ゼロダテ」、富山県氷見市の「ヒミング」などに携わる。主な個展に、98年「QSC+mV」(広島市現代美術館)、99年「中村政人展―美術の教育1999」(command N)。主なグループ展に、97年「眠れる森の美術」(上野の森美術館EXTRA)、00年「MOTアニュアル2000 低温火傷」(東京都現代美術館)など。01年、第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館出品作、マクドナルドのロゴを用いた《QSC+mV》では国際的な注目を集めた。
http://www.m-lab.org

 
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