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トーキョー・アートエッセンス
No.042 強烈な体験の追究が、才能を開花させる 2010年7月17日〜19日に開催されたワークショップの様子
語り手:Q.サカマキ氏、外山俊樹氏
現在進行形の歴史を写真に収めるフォトドキュメンタリー/フォトジャーナリズム。その第一線で活動しているのが、写真家でフォトジャーナリストのQ.サカマキさんと『AERA』フォトエディターの外山俊樹さんです。お二人は東京都写真美術館で毎年開催される「世界報道写真展」のワークショップで講師を務めるなど、写真家や編集者育成に携わっています。今回は前回に引き続き、Q.サカマキさんと外山さんの対談の後編をご紹介。業界を目指す方へのメッセージなどをいただきました。

写真家と協働するフォトエディターに必要なこと

『AERA』表紙(三池崇史/映画監督)。フォトジャーナリズムを学ぶ上で参考となる雑誌に『TIME』『Newsweek』『DAYS JAPAN』などもある。
『AERA』表紙(三池崇史/映画監督)。フォトジャーナリズムを学ぶ上で参考となる雑誌に『TIME』『Newsweek』『DAYS JAPAN』などもある。

サカマキ
東京都写真美術館のワークショップでは、エディターを育てたいという思いもあります。その理由は、日本のフォトドキュメンタリー/フォトジャーナリズム界が育っていないのは、写真のわかるエディターがあまりにも少なすぎるから。そこなんですよ。

外山
1988年の『AERA』創刊当時からフォトエディターはいますが、僕はもともと朝日新聞社に写真部員として入社していて、仕事を続けていくうちにフォトエディターになりました。ですから、最初は凄く混乱したんです。前任者の仕事を横で見ていたので「写真家の作品を使って誌面をつくる」という流れは理解していたのに、いざ仕事の球が投げられた時、どうしていいか全くわからなかった。まず、フリーランスのカメラマンと仕事をしたことがなかったので、写真を売り込まれても選べない。僕には国外の紛争地の撮影経験がなく、例えばイスラエルの紛争を撮ってきたカメラマンに写真を見せられると、それだけで凄いなあと。ただ、どう凄いのかよくわからないし、掲載するにあたって写真の活かし方も判断できない。そこで、売り込みに来た写真は全部見ようと決めたんです。ファッション、建築、カンボジアの難民キャンプ、エイズ問題……そのうちパターンがわかり、どういう写真が来るかということも見えてきた。自分の中で整理がつくと、言葉で説明できるようにもなる。今考えると、これが自分自身の訓練になっていたんだなと思います。

サカマキ
とにかく、エディターも写真家も、写真を見ている量が圧倒的に少なすぎますよ。

外山
それはありますね。若い時ほどお金がないんだけど、30歳過ぎると感覚が鈍ってくるので、やっぱり若いうちに1万円以上の値がついた写真集でも感動したものだったら飲み会を4回我慢して所有するとか、アルバイトして写真集買って何回も繰り返し見ることが大切です。僕も20代の頃、好きな写真集以外に写真史上で重要とされるものもお勉強的に集めていたんですが、当時感動した写真集がたくさんあります。今見ると、どうしてこんなものが? と思うものもあるけれど、それが自分自身の成長もしくは退化のものさしになる。何より、感動する写真があることは凄くラッキーなことです。写真にのめり込む大きなエネルギーになりますからね。


フォトジャーナリストとしてステップアップするために

外山俊樹講師(『AERA』フォトエディター)

ワークショップでは、スライドをまじえた熱心な授業が行われた。

Q. サカマキ講師(WPP07受賞者、NY在住)

ワークショップでは、スライドをまじえた熱心な授業が行われた。写真左は、外山俊樹講師(『AERA』フォトエディター)。右は、Q. サカマキ講師(WPP07受賞者、NY在住)。

サカマキ
「どうやったらフォトジャーナリストになれるのか」ですが、まず自分の作品をつくってできるだけ多くの写真関係の人に、とりわけフォトエディターに見てもらうことです。例えば、ウェブサイトやポートフォリオ・ブックをつくって、それを可能な限り編集者に見せること、あるいはアクセスしてもらうようにすることです。フランスのパピィニャンなどのフォトフェスティバルに参加し、そこで世界各国のフォトエージェンシーに作品を見せることも、大きなチャンスに繋がるかもしれません。また、新聞社のインターンからはじめるのもありです。それに、ドキュメンタリー分野の写真家を顕彰するような賞をとることも挙げられるかもしれません。賞をとろうとすることによって自然に実力も上がるし、写真を見る眼が絶対的に高くなるでしょう。ひと昔前は、ステップアップの手段が何もありませんでしたから、今の若い人たちはラッキーですよ。

外山
それでも、写真学校でジャーナリズム学科ってほぼないですし、大学でも、古い時代の報道写真家の方法論が踏襲されていることが多いので、コンテンポラリーとは少しずれた古い文法だったりして、なかなか人材が育っていませんよね。あとは、写真の教育を受けなくても、ある程度撮れると思い込んでいる人があまりに多い。カメラをもって街へ出れば何か撮れるんじゃないか。そこで大きな事件でも起きれば一丁あがりといったアプローチ。パパパッと撮ったものが世の中で評価されるんじゃないかという錯覚。もちろん感覚で撮るのもいいんですが、撮影にあたっていろんな条件が出た時、自分なりの表現をしようと思っても、技術がないと表現できないわけです。ところが、そのままフリーランスとして名刺を刷ってしまう人、かなりいるんじゃないでしょうか。

雑誌の売り込みにはいくつかのパターンがあって、例えば「バンコクの騒乱を撮ったので、もしよかったら使ってください」というもの。「これまでこういう写真を撮ったので、アサインメントがあったらお仕事ください」。そして卒業したばかりの方からの「写真を見てください」。この中で、1週間前に起こった事件をもって来られても雑誌に使うことはできませんが、仮にワールドカップの開催されたアフリカで、その人しか撮っていないアフリカ鉱山のリポートがあれば、それは半年後でも使えるかもしれない。フォトジャーナリストは、そういった視点をもつことも必須でしょう。

サカマキ
海外へ行くのも、訓練になりますね。3か月は遊びだけど、1年住んだらかなり変わる。どこの国を選ぶかは、自分に合ったところでいい。あとは時代がつくります。常に時代が強烈に動かす地域があるので、そこに自分が入ると凄い刺激を受けます。今はどこかな。中国やインドかもしれないし、違うかもしれない。90年代はモスクワだった。ソ連が崩壊してからのグチャグチャのエネルギーが充満していて、凄かったと思う。
単純なことですが、自分が感動するいろんな世界をできるだけ見るようにした方がいい。ビジュアルに興味のある人間なら自然と目が肥えていきます。人それぞれですが、強烈な悲劇に遭うこと、強烈な喜びに会うことも必要かもしれないですね。


Information

2009年世界報道写真「現代社会の問題」の部 単写真2位 ステファノ・デ・ルイジ(イタリア) 干ばつで死んだキリン(=9月、ケニア北東部) VIIネットワークからル・モンド・マガジン
2009年世界報道写真「現代社会の問題」の部 単写真2位
ステファノ・デ・ルイジ(イタリア)
干ばつで死んだキリン(=9月、ケニア北東部)
VIIネットワークからル・モンド・マガジン

■「世界報道写真展2010」巡回先
・9月22日(水)〜10月16日(土) 立命館大学国際平和ミュージアム(京都)
・10月19日(火)〜11月7日(日) 立命館アジア太平洋大学(大分)
・11月10日(水)〜11月23日(火・祝) 立命館大学びわこ・くさつキャンパス(滋賀)

■次回の「写美フォトドキュメンタリー・ワークショップ」開催について
来年も7月中旬に開催する予定です。募集要項等の詳細は2011年春頃、東京都写真美術館公式ホームページにてご案内いたします。

■東京都写真美術館より
「写美フォトドキュメンタリー・ワークショップ」は2008年より開始して、今年で第3回目となりました。このようなワークショップを実施して、これからフォトジャーナリストを目指す方や、フォトドキュメンタリーに携わる方達が活用できる場を提供していきたいと考えています。是非、展覧会で歴史に残る作家達のオリジナルプリントを間近で観て、図書室で4万点を超える写真集に触れながら、積極的にワークショップに参加し、作品制作のヒントを見つけてください。
http://www.syabi.com/

Q.サカマキ(キュー・サカマキ) Q.サカマキ(キュー・サカマキ)

写真家。1986年からニューヨークを拠点に活動を展開し、『TIME』『Newsweek』等に寄稿。2007年、スリランカ内戦の一連の作品が「World Press Photo(世界報道写真)2007」の「ニュースの中の人びとの部:組写真」で1位となったほか、国際的なコンテストで多数の受賞歴がある。主な著書に『Fight AIDS!』(新泉社)、『パレスチナ:自爆テロの正義』(小学館)、写真集『戦争』(小学館)、写真集『Tompkins Square Park』(powerHouse Books/アメリカ)など。コロンビア大学院(国際関係学修士)卒。
http://www.qsakamaki.com/

 
外山俊樹(とやまとしき) 外山俊樹(とやまとしき)

『AERA』編集部フォトエディター。1985年に朝日新聞社入社後、『AERA』スタッフフォトグラファーを経て、2000年より現職。撮影コンセプトの企画立案から、写真家への依頼、掲載作品の選択など、写真を軸に同誌のエディトリアルに携わっている。2008年から東京都写真美術館で毎年開催されているワークショップの講師や、若手写真家の作品レヴュアーなども務める。『名ソムリエの、おうちワイン―毎日飲める、とっておき。』(朝日新聞社)では写真を担当。
http://www.aera-net.jp/

 
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