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トーキョー・アートエッセンス
No.045 東京からアートを発信とか言ってる場合じゃない 本当の日本の姿が収められた作品集『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』
語り手:編集者・写真家 都築響一さん
日本全国、世界各地、身近にあり過ぎて正当に評価されないまま人知れずなくなってしまうスポットやカルチャー、本当はメジャーであるのにメディアが採り上げないような人やものなどに焦点を当て、新たな対象を追い続けるジャーナリスト、都築響一さん。今回は、文化の中心地と言われていた東京を取りまく環境の変化や問題点などについてお話しいただきました。

都築さんの足取りがマッピングされた日本地図。新しい文化は地方から東京にやってくる
都築さんの足取りがマッピングされた日本地図。新しい文化は地方から東京にやってくる

文化や芸術の辺境、東京

 以前、社会学者の吉見俊哉さんと東京の文化について対談したことがあるんですが、もともと東京には地方の人がつくりあげた文化というのがあって、それが東京人の文化として根づき、浅草や上野、さらにそこから銀座や新宿をつくってきた。だけどそれは、バブル期の1990年代位でピークに達したんじゃないか。そんなことを二人で話し合っていたんですね。じゃあピークを過ぎた今、東京はどうなっているかと言うと、昔みたいにいろんなものが集中していないってことです。だから、これから何が起こるかというと、もう一度、地方から東京に文化がやってくる。もう一回、明治時代くらいに戻って、東京の人たちが地方の文化を探しに行く時期なんじゃないかと思うんです。

 僕は本をつくる仕事をしていますけど、東京経由でなければできないことがたくさんありました。文学に関して言えば、地方でいくらいい作品を書いても出版社は東京にある。音楽をつくったってレコード会社は東京。絵を描けば画廊は銀座でしょ、みたいな。でも今、地方で音楽をつくっている人たちは、もうほとんど東京で売らないですよね。自分たちの地元のレコード屋とオンライン・ショップで売れば、わざわざ東京で売る意味がないと言うか。本だって、あと1年くらいで東京の出版社なんて関係なくなる。美術だってそうですよね。地方の画廊がそのまま海外と取引すればいいわけだから。歴史的に見てはじめて東京経由で発信していく必要がなくなった時代、今の東京は、知らないうちに文化や芸術の辺境になってしまったということです。

 東京から情報を発信する立場にいる人たちは、東京に住み、ほとんど東京の業界の人としか接触していないからわからないでしょうけど、今、日本でいちばん遅れているのが東京。東京は田舎です。だから「東京からアートを世界に発信」とか言ってる場合じゃなくて、東京は本当は超辺境だということを自覚して、ますます加速する辺境化について考えた方がいいですよね。展覧会だって、いちばんつまらないのが東京の美術館じゃないですか。ほとんど海外美術館のコレクションを、お金を払って借りてきているだけ。これだけ美術館があって、東京が生んできた作家、現代アーティストの作品を常設で見られるところがないなんて、おかしいですよ。


サバービア・カルチャーの存在

 外国から来た人を案内する場所も、都心にはほとんどありませんね。表参道や銀座なんて同じものしかないし、歌舞伎町や六本木は役所やデベロッパーによって街がめちゃくちゃにされてしまった。都心からどんどん活気が奪われているわけです。原宿に行った方が全然面白いですよね、変な格好した子どもたちがたくさんいて。だけど彼らは原宿に住んでいるわけではなく、郊外から遊びに来ているだけ。原宿はディスプレイの場所に過ぎない。つまり原宿の文化は東京の文化ではなく、サバービア・カルチャーなんですね。僕が面白いと思うのは、この都心と地方の境界にあるところの文化。都心の文化じゃないし、完璧に地方の文化でもない、郊外の文化です。例えばヒップホップが生まれたのはニューヨークのサウス・ブロンクスという地区ですが、都市の周辺エリアには、都市の真ん中ではつくり出せない文化が存在していて、そういうものが力を持ちはじるんですね。

 もちろん東京にも面白いところはたくさんありますよ。東京は小さな街の集合体ですから。西荻なら西荻の文化が、足立区なら足立区の文化があって、ひとつの街がひとつの都市くらいの文化をもっているわけです。そういうゆるい集まりが東京であって、東京はひとつの大きな都市ではないんですね。東京に住んでいても、行ったことのない区がたくさんあるんじゃないでしょうか。それなのに東京のことを知っていると言うのは、自分の街と都心を指しているだけ。都心の反対側にある東京のことなんて全然知らないでしょう。アートに関して言えば、各区に一応ミュージアムはあるのに行かないとか。折りたたみ自転車をもって、いろんなところに行ってみていいと思いますけどね。


アートのマジョリティ

 例えば「足立区 アート」でググって(Googleで検索して)何も出てこないからって、そこは無人の荒野じゃないわけです。足立区には半蔵門線で直通で行けるし、北千住には東京藝術大学のキャンパスもある。もう2つくらい大学ができるのかな。駅前は栄えているし、週末ともなればロマンスカーで箱根まで行けちゃう。そんな北千住の先、川を越えると本当の足立区が広がっているわけです。ここでしか生まれないカルチャーがあって、探せば面白いことをやっている人もいるんですよ。他にもメディアに載っていなくても、みんなが知っているイベントがたくさんあります。江戸川競艇場内に江戸川アートミュージアムというのがあって、そこのアートツアーは毎回美術好きのおばさまで満員なんですね。館内ツアーをしてくれて、ご飯もついて1000円。素晴らしい。抽選で見に行く展覧会なんて、現代の美術ではないでしょう。美術のマジョリティというのは、こっちなんですよ。

 どっちがいい悪いではないけれど、いわゆる現代美術業界の人たちはアートを区別するんですね。例えば、お友だちが家を新築したと。そこで、ダイニングルームにかける絵をプレゼントしようと思う。ご飯を食べる場所にふさわしい絵って、わけのわからない現代美術作品なのか、イルカがジャンプしているような絵がいいのか。どちらがおいしく食べられるかを考えたら、当然イルカの方を買いますよね。世の9割はそうなんですよ。それを見て気持ちよくなるとか、楽しいとか。それがメジャーなアートじゃないかって、僕は思うんですね。ところが美術側の人たちは、そういう人たちのアートは違う。わかってないと。9割の存在を踏まえた上で言っているんでしょうか。僕には、それがすごく滑稽に見えるんですよ。その辺の歪みを直していけるといいなとも思いますね。

次回は…
引き続き都築響一さんに、日本の美術教育などについてお話しいただきます。[1月27日(木)アップ予定]
都築響一(つづききょういち) 都築響一(つづききょういち)

1956年、東京生まれ。編集者、写真家。上智大学在学中から雑誌『POPEYE』『BRUTUS』の編集に携わり、現代美術、建築、写真、デザイン関連の書籍編集、執筆活動を続けている。1997年、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(アスペクト)で第23回木村伊兵衛賞受賞。現在、同賞の選考委員を務める。2010年、広島市現代美術館で個展「HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン」開催。主な著書に、『アート・ランダム』(京都書院)、『TOKYO STYLE』(京都書院、筑摩書房)、『賃貸宇宙』(筑摩書房)、『夜露死苦現代詩』(新潮社、筑摩書房)、『現代美術場外乱闘』(洋泉社)、『天国は水割りの味がする 東京スナック魅酒乱』(廣済堂出版)ほか多数。近著に『HELL 地獄の歩き方<タイランド編>』(洋泉社)、『ROADSIDE USA 珍世界紀行 アメリカ編』(アスペクト)など。
http://roadsidediaries.blogspot.com/

 
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