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トーキョー・アートエッセンス
No.046 美術がいちばん遅れている 美術業界の外側に生きるアーティストの作品も多数掲載『現代美術場外乱闘』
語り手:編集者・写真家 都築響一さん
日本全国、世界各地、身近にあり過ぎて正当に評価されないまま人知れずなくなってしまうスポットやカルチャー、本当はメジャーであるのにメディアが採り上げないような人やものなどに焦点を当て、新たな対象を追い続けるジャーナリスト、都築響一さん。今回は、メディアとアートの関係、日本の美術教育の問題点などについてお話しいただきました。

撮影/都築響一
撮影/都築響一

メディアとアートの関係

 これまで僕が取材してきたものは、ネットがない時からやっていますから、もちろん全部自分の足で歩いてまとめたものです。何万キロ走れるかっていう勝負ですよね。今だってGoogleとか使いますけど、検索でヒットすると負けっていう感じがする。出てこないものはすごく嬉しいですね。でも、ものすごいものは、ネットに情報が上がってくるというのも事実。昔みたいに山の中でひとり絵を描いていて、誰もわからないなんてことはありえないので、アーティストはとにかくすごいものをつくっていれば、必ず誰かが見つけますよ。僕は銀座の画廊も行きますが、やっぱり好きなのは貸し画廊です。一週間で20万円くらいかかるようなところを、地味なアーティストがバイトで一生懸命お金を稼いで、何人かで借りて絵を展示していたりするわけです。こういう作家の発表の場をつくる、その役を引き受けているのが貸し画廊で、時々すごく面白いものもある。情報サイトに載っていないところを自分で探し出す喜びは大きいですね。

 例えば先月だったら、国立新美術館でやっていた日展ほど面白いものはない。日展に行くと、これがマジョリティ、これがみんなが好きな美術なんだってことがわかります。とにかく出品点数がものすごい量で、日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書で3000点くらいかな。その一部が京都、名古屋、大阪、富山、福岡、水戸、山形に巡回するんですよ。これが日本のアートの現状をいちばん正確に表していると、以前新聞とかに書いたことがあるんですが、この中に時々本当に面白いものもあるんです。僕が好きな、何じゃこりゃみたいな作品が。現代アート展で見るようなものよりも、はるかに面白いものに出会う。これだけの作品量があるから、偶然出会う確率も高い。本当はこのサイトでも、「とにかく日展に行け」みたいな記事をバーンと出したら面白かった。受けねらいやすき間ねらいではありませんよ。これが、たくさんの人たちが本当に好きな美術なんですから。にもかかわらず、一行もふれてないわけでしょ。「Tokyo Art Navigation」なのに、ナビゲーションしていませんよね。それってちょっと歪んでいませんか。


アートに逆行する日本の美術教育

 アート情報の出し方の歪みや偏りは、メディアや美術業界関係者にも責任があると思いますが、日本の現代美術をダメにしたのは、美術教育のせいだと思っているんですね。例えば、バンドをやりたいと思う。「音大受験しよう!」とは考えないでしょう。とりあえず3コードくらい自分で勉強して、メンバー募集して、スタジオに行きませんか。クラシックをやるなら話は別ですよ。でも同じことですよね、現代美術やろうって人が美大を受験するのは。美術史を究めたいという人はもちろん大学で勉強してください。でも、絵は自分で描くしかない、彫刻も自分で彫っていくしかないわけです。テクニックを教えてもらうのは必要かもしれないけど、キャンバスの下地はどうするかなんて市民講座3回くらいで大丈夫ですよ。写真だってフォトショップを3時間くらいやってみれば、できちゃいますから。受験勉強して予備校でデッサンやって、浪人までして大学に入って4年間。そんなに時間が必要なのかと、僕にはそれが不思議で。だから逆に、美大は4年かけないとわからないような教育にしているんじゃないか。そう思ってしまう。

 仮に4年かけるために、物事を難しくすることで美術教育を成立させる。難しくするには理論をつけなければいけない。理論的になると説明が必要になる。すると、文章がないとわからない作品ができる……美大に行かない方がいいアーティストになれると思いませんか。極端だからこそアーティストになれるのに、まず美大に行くために予備校で「受かりやすいデッサン」を描くようにアドバイスされる。要するに、美大の試験官もそういう絵を描く学生を合格させるってことですよね。他にそぐわないからアーティストになるのに。一生トレーニングして、フリーハンドで完全な絵が描ける日本画家に、中学生がスプレーでシュッと描いた円が勝つ可能性があるっていうのが、アートの面白さです。頑張った方が勝つなら、職人芸というかクラフトが近いかもしれない。だけどアートは、そうじゃないから面白い。もう美大を目指すことが既にアートに逆行しているのに、ずっと変わっていませんよね。美術だけ遅れてしまったと思いませんか。この歪んだ美術教育についても、一度考えた方がいいと思いますよ。

都築響一(つづききょういち) 都築響一(つづききょういち)

1956年、東京生まれ。編集者、写真家。上智大学在学中から雑誌『POPEYE』『BRUTUS』の編集に携わり、現代美術、建築、写真、デザイン関連の書籍編集、執筆活動を続けている。1997年、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(アスペクト)で第23回木村伊兵衛賞受賞。現在、同賞の選考委員を務める。2010年、広島市現代美術館で個展「HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン」開催。主な著書に、『アート・ランダム』(京都書院)、『TOKYO STYLE』(京都書院、筑摩書房)、『賃貸宇宙』(筑摩書房)、『夜露死苦現代詩』(新潮社、筑摩書房)、『現代美術場外乱闘』(洋泉社)、『天国は水割りの味がする 東京スナック魅酒乱』(廣済堂出版)ほか多数。近著に『HELL 地獄の歩き方<タイランド編>』(洋泉社)、『ROADSIDE USA 珍世界紀行 アメリカ編』(アスペクト)など。
http://roadsidediaries.blogspot.com/

 
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