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イベント・レポート
No.048
東京都江戸東京博物館 えどはくカルチャー
都内で開催される注目のアートイベントをご案内し、その模様をレポートするコラムです。リアルな空間で、そしてオンラインで、日々の暮らしにアートを取り入れてみませんか。
約160名の受講者の熱気に包まれる会場

東京都江戸東京博物館の見どころは、展覧会だけではありません。豊富な講演、寄席など、楽しく学べるプログラムも数多く開催されています。今回はその一つ、江戸と東京の歴史や文化について学ぶ講座「えどはくカルチャー」をレポートし、講師の小澤弘さんにもお話をうかがいました。


ロングヒットの名物講座

東京都江戸東京博物館を支える魅力のひとつ「えどはくカルチャー」は、江戸と東京の歴史、生活文化、美術、それらに加えて考古や建築、文学、芸能などを紹介する講座・講演会で、なんと年90回も開催されている。主に、同館で開催される企画展や特別展の関連講座と、展覧会の内容に限定しないテーマを扱う「江戸と東京を学ぶ」シリーズの二本柱で成り立っている。

その「江戸と東京を学ぶ」の中でもトップクラスの人気を誇るのが、「浮世絵師列伝」シリーズである。講師を務めるのは同館名誉研究員の小澤弘さん。先日、「浮世絵師列伝VII番外編」を受講してみた。「VII」というくらいだから、長寿講座であることがうかがえる。この日は、「浮世絵名品100選」と題し、名作をつぎつぎに紹介。大きく投影された画像に、小澤さんによる軽やかでユーモラスな解説が加わり、会場は終始、和やかな雰囲気に包まれていた。講座終了後、小澤さんに話をお伺いした。

小澤さんの解説とともに次々に名作が紹介される
小澤さんの解説とともに次々に名作が紹介される


収蔵品をより深く知りたくなる

「浮世絵名品100選の中には、江戸東京博物館の収蔵品も多く含まれています。講座では、作者の生い立ちや社会での評価、そのあと後世にどのような影響を与えたかを解説するとともに、当館の収蔵品をしっかり見て欲しい。講座を聞く前と聞いた後では、きっとコレクションの見え方も違ってくるはずです」

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》1832〜34(天保2〜4)年、東京都江戸東京博物館蔵
画像提供:東京都江戸東京博物館
葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》1832〜34(天保2〜4)年、東京都江戸東京博物館蔵
画像提供:東京都江戸東京博物館


両国の地で当時のアーバンライフを知る

講座では、葛飾北斎の《富嶽三十六景》が取り上げられ、中には万年橋や両国橋を描いた作もあった。いずれも、江戸東京博物館から程近く、帰りがけにゆかりの地を散策したくなる。
小澤さんは、同館の設立準備の段階から関わり、展示や保存、研究などいろいろなセクションがある中、とりわけ教育部門に力を注ぎ、教育普及の重要性を提唱し続けてきた。

「武家や町人によって創られた江戸文化を知ることは、当時のアーバンライフを知ること。食や文化、服、劇場、興行、いろんなものが結びついていました。その点、両国にあるこの博物館は、まさに地場。周辺を散歩したり、周りの文化施設をめぐるのも、江戸を学ぶことにつながります。ですから、教育とはいえ、遊んで、楽しめる内容を目指しました。講座は毎日開いてもいいと言っていたほどで、博物館の中だけにとどまらず、“出前講座”と銘打ち、大学や商業施設に赴き、講座を開いたこともあります」

歌川広重《名所江戸百景 真崎辺より水神の森内川関屋の里を見る図》1857(安政4)年8月、東京都江戸東京博物館蔵
画像提供:東京都江戸東京博物館
歌川広重《名所江戸百景 真崎辺より水神の森内川関屋の里を見る図》1857(安政4)年8月、東京都江戸東京博物館蔵
画像提供:東京都江戸東京博物館

鈴木春信《楊枝屋お藤》明和末頃、東京都江戸東京博物館蔵
画面には「浮世美人 寄花 楊枝屋婦 菫菜」とあり「すみれつむ春の野はらのゆかりあれば  うす紫に袖や染けん」の和歌が添えられる。
画像提供:東京都江戸東京博物館
鈴木春信《楊枝屋お藤》明和末頃、東京都江戸東京博物館蔵
画面には「浮世美人 寄花 楊枝屋婦 菫菜」とあり「すみれつむ春の野はらのゆかりあれば うす紫に袖や染けん」の和歌が添えられる。
画像提供:東京都江戸東京博物館


熱心な受講者が集う講座

今なお、小澤さんは大学の教壇に立ち、各地の講演会にもしばしば招かれる。大学や外部の講座と比べ、この「えどはくカルチャー」の特筆すべき点は何か、聞いてみた。
「『えどはくカルチャー』の受講者は知的好奇心がとても強く、外部の講座と比べて熱心な印象を受けます。浮世絵名品100選はあくまで私の観点です。最終的には、受講者の皆さんそれぞれが選ぶようになると素敵ですね」
ユーモアをまじえた語りで浮世絵の裾野を広げる小澤さんの講座「浮世絵師列伝」を始め、「えどはくカルチャー」は実際の作品を目にできる博物館の力を活かした好企画であった。

構成:新川貴詩
Photo: Shu Nakagawa

えどはくカルチャー

東京都江戸東京博物館の職員が主体となり、江戸と東京の歴史や生活から文化、考古、建築などを紹介する講座・講演会。その数、年90回を超えるなど、数の多さも特徴。
次回は企画展「発掘された日本列島 2017」(6月3日〜7月23日)の開催に合わせた講座を開催。7月4日(火)・7月11日(火)(全2回)
10月以降の東京都江戸東京博物館休館中も場所を移して開催される予定だ。
詳細は公式ウェブサイトをご確認ください。
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/event/culture/

小澤弘(おざわ・ひろむ)

東京都江戸東京博物館名誉研究員・淑徳大学人文学部客員教授。
1947年生まれ。明治大学大学院文学研究科博士課程修了。調布短大教授、江戸東京博物館都市歴史研究室長・教授を歴任。専門は日本芸術文化史。国際浮世絵学会常任理事。モナコ「京都-東京〜サムライからマンガまで展」共同監修者。ボストン美術館など日本美術品の調査研究も行う。著書に『都市図の系譜と江戸』、共著に『「熈代勝覧」の日本橋』ほか。

小澤弘(おざわ・ひろむ)

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