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イベント・レポート
No.012
増田セバスチャン×佐々木俊尚 トークショー 「世界が注目するジャパンカルチャーの現在と未来」(前篇)

原宿kawaiiカルチャーの第一人者であり、アーティストとしても活躍する増田セバスチャンさんと、ITと社会の相互作用を鋭い切り口で分析するジャーナリストの佐々木俊尚さん。それぞれの分野を牽引する二人のトークショーが、3日14日、日比谷コンベンションホールにおいてアートライター宮村周子さんの司会進行で開催されました。その模様を2回にわたりレポートします。


原宿kawaiiとニューヨークのアートシーンが出合い
新しい文化のダイナミズムを巻き起こす

トークショーは、ニューヨークで2月27日から3月29日まで開催の、増田さんのデビュー展「Colorful Rebellion−Seventh Nightmare」の話題からスタート。展示会場全体を溢れんばかりの色彩で埋め尽くした迫力ある展示は衆目を集め、現地のアート情報サイトでトップを独走するなど、無名のアーティストとしては異例の反響を呼びました。

冒頭では、増田さんの初個展の写真を見ながらトークを展開した
冒頭では、増田さんの初個展の写真を見ながらトークを展開した

司会:今回は、ジャパンカルチャーの中でも最も勢いのある原宿kawaiiカルチャーを牽引されてきた増田さんの初個展の様子を見せていただきながら、お話を進めて行きたいと思います。

佐々木:こうして写真で見るだけでも圧倒されますね。インパクトがある。

増田:今回の個展は、僕が今までやってきたこと、つまり日本の原宿のスピリッツをそのまま持って行って、アート界にデビューするのが目的でした。日本ではアートディレクターとして名前が知られるようになったので、誰も僕を知らないところ、しかもアートシーンの最先端で、僕がこれまでつくってきたものがどういう評価を得るのか見てみたかった。このギャラリーは、チェルシー地区のアートコンプレックスの3階にある、5〜6人も入ればいっぱいになるような小さなところなんですが、初日は1000人集まりました。

佐々木:それはすごいですね! 来た人はみんなどうやって情報を得たんですか?

増田:何の後ろ盾もない初めての個展なので、美術雑誌に広告を載せるとか、そういうことはまったくできなかったんですよ。だから告知はfacebookのみ。それが口コミでどんどん広がって行き、これは何かが起きているんだということで、一般の人やいろいろな業界の方が現場を一目見ようと集まって来たんです。

佐々木:反応はどうでしたか?

増田:面白いと思ったのは、たとえばケイティ・ペリー、ニッキー・ミナージュのように、カラフルなものを使って東京をイメージしたアーティストはたくさんいるけれど、そのルーツのひとつがこういうものなんだと認識できたと言われたこと。カラフルな色の持つ力と東京・原宿カルチャーの素晴らしさが、初めて繋がったんですね。

増田セバスチャン個展「Colorful Rebellion−Seventh Nightmare」の展示風景。原宿kawaiiを生み出す自分自身の姿を具現化した、圧巻の作品。会場には長蛇の列ができた 撮影=GION
増田セバスチャン個展「Colorful Rebellion−Seventh Nightmare」の展示風景。原宿kawaiiを生み出す自分自身の姿を具現化した、圧巻の作品。会場には長蛇の列ができた 撮影=GION

佐々木:僕は、増田さんが個展を日本ではなくニューヨークで開催したところが面白いなと思います。我々日本人は、原宿のカルチャーであったり秋葉原のカルチャーであったり、そういうものをその枠組みの中でステレオタイプ的に捉えがちなんですよ。たとえば、アキバのカルチャーというと、オタクの男性から見た未成熟な少女的なものが喜ばれるとかね。そんな風に見ているうちは、そこから一歩も出られない。増田さんの作品を見ると、そういったアキバカルチャーのいわゆる「萌え系」の枠組みとも原宿kawaiiの枠組みとも違う、とてもプリミティブなイメージがあって、これは今まで言われてきている未熟性や幼児性とは違う、新しい文化なんじゃないかなという気がします。

増田:もうひとつ現地の記者に言われて印象的だったのは、個展会場に集まってくるお客さんが原宿の影響を受けていろいろ着飾っていて、その人たちが街に出てクローンのようにどんどん増殖して行くように見える。そこがアートとして面白いんじゃないか、と。

佐々木:今はグローバリゼーションによって文化が混ぜ合わさるという現象が起きているんですよ。以前、東京都現代美術館チーフキュレーターの長谷川祐子さんがおっしゃっていたんですが、今ビエンナーレで一番面白いのはイスタンブールなんだそうです。ヴェネチア・ビエンナーレはヨーロッパのアートシーンの枠組みでしか語られないけれど、新興のイスタンブール・ビエンナーレは南アジアとヨーロッパのアートシーンが出合い、その衝突で新しい文化を生み出すダイナミズムが起こる。今の増田さんのお話はまさにそれと同じで、原宿kawaiiがニューヨークのアートシーンとぶつかることによって起きた化学反応ですね。


自分にとってのリアリティを求めて

増田:そもそも今の原宿カルチャーのルーツは何なの?という方もいると思うので簡単に説明すると、原宿にホコ天(歩行者天国)があった80年代、派手な服に身を包んでいろいろなパフォーマンスをする「竹の子族」が現れたことに始まります。竹の子族のファッションは、「ブティック竹の子」というところから発生していて、みんな目立つために着飾っていたんですが、段々それでは飽き足らなくなって手づくりするようになる。そこからオリジナルのファッションができていったんですね。僕も彼らを見に毎週のようにホコ天に通っていました。その後「イカ天」こと「いかすバンド天国」という番組の影響でバンドブームが起こりますが、騒音問題で音が規制されると、原宿のホコ天は次第に衰退して行く。ただホコ天は居場所として機能し続けて、ファッションのムーブメントに移行するんです。それが90年代で、僕が6%DOKIDOKIをオープンしたのもこの頃です。

原宿カルチャーの成り立ちについて語る増田セバスチャンさん
原宿カルチャーの成り立ちについて語る増田セバスチャンさん

佐々木:お店をつくろうと思ったのはなぜですか?

増田:当時、こういうカラフルな物やカワイイ物は普通のお店では売っていなかったんですよ。その頃はモノトーンのモードがかっこいいとされていて、僕もすごく憧れてはいたんです。でも、いざ自分が表現しようとした時にリアリティがなかった。

佐々木:増田さんにとってのリアルって何ですか?

増田:僕は子どもの頃商店街に住んでいたんですが、商店街ってお菓子や玩具の箱とか、カラフルなものが多いんですよ。夜店に行くとキラキラしたものが並んでいて。そういうものの方が自分にとってはリアルだった。でも時代はモノトーンだから、最初の頃は散々な言われようでした。

佐々木:モードの文脈にそういうカラフルなものがなかったということですか?

増田:当時の流行としてはなかったと思います。

俯瞰の視点でジャパンカルチャーを分析する佐々木俊尚さん
俯瞰の視点でジャパンカルチャーを分析する佐々木俊尚さん

佐々木:確かにその頃はコム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトが台頭していた時代ですよね。でも日本の文化は、そういう禅的というか、モノトーンでシンプルでミニマムな文化がある一方で、歌舞伎に代表される派手な格好で全身をポップに彩る文化もあり、両極端なものがずっと並行しながら続いてきた。そういう意味では80年代、90年代は片側思考的なところがあったかもしれないですね。今の方が発信するという意味ではよほど正常な状態。

増田:うちのお店に全国から人が来るのも、ここに来れば他にはない、自分の好きなカルチャーがあるからなんですよね。もともとファッションのお店ではなかったんですが、自分の表現を求める子たちが集まるようになって、商品の暖簾を頭に巻いたり、虫籠をバッグにしたり、どんどんエスカレートしてオリジナルのファッションが生まれて行った。そこに最初に目をつけたのがベネトンで、広告に原宿のストリートファッションの写真が起用されたことが広まるきっかけになりました。その後SNSが普及して6%DOKIDOKIのページをオープンしたら、海外からもメールが来るようになり、それを機に僕は原宿カルチャーを引っ提げ世界に出て行くようになったんです。

続きは4月10日(木)更新予定の後篇でご紹介します。

インタビュー・文/杉瀬由希
撮影/村上圭一


 
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