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イベント・レポート
No.013
増田セバスチャン×佐々木俊尚 トークショー 「世界が注目するジャパンカルチャーの現在と未来」(後篇)

原宿kawaiiカルチャーの第一人者であり、アーティストとしても活躍する増田セバスチャンさんと、ITと社会の相互作用を鋭い切り口で分析するメディアジャーナリストの佐々木俊尚さん。それぞれの分野を牽引する二人のトークショーが、3日14日、日比谷図書文化館においてアートライター宮村周子さんの司会進行で開催されました。今回はその後篇をレポートします。


草の根から湧き上がる力とITを結び付け
世界を動かすカルチャーをつくる

増田:今までのユースカルチャーは欧米の主導で生まれてきたものが多いんですよ。1968年のヒッピーカルチャーのムーブメントや、ウッドストック、パンクもそうです。それがこの時代に来て、東京の原宿から世界を牽引するkawaiiというカルチャーが生まれた。そこが僕は面白いと思っています。

佐々木:まさにそうですね。日本の戦後文化は一貫して欧米があこがれだった。特に音楽やファインアートをはじめとするメインカルチャーは。でも今の時代のカルチャーは、欧米基準はおろか、メインもサブもなくなってきている。個々が独立して小さなクラスターのように無数に存在し、それがくっついたり離れたりしながらぼんやりとしたガス雲をつくっている状態だと思うんです。そのクラスターやガス雲をYouTubeやSNSを使って発信して行けば、世界中の人たちに知られることも可能な時代になった。Facebookのみの告知でこれほど多くの人を集客した今回の増田さんの個展といい、原宿kawaiiのカルチャーの世界への広がりは、まさにこの時代ならではという気がします。

増田:2009年から「Harajuku“Kawaii”Experience」というワールドツアーを行っていたんですが、原宿kawaiiカルチャーは一部には広がったものの、なかなか思うようにスピードに乗らなかった。それが急速に世界に広まったのは、11年の東日本大震災がきっかけでした。各国の人から原宿は大丈夫なのかと心配するメールがFacebookにいっぱい来て、海外のメディアも日本の再起を疑問視していた中で、元気でカラフルなファッションに身を包んだ原宿の子たちが日本の未来像として再び注目され始めたんです。未曾有の天災が起こり、明日はないかもしれない、だったら自分の好きなことをやろうと考えた人は多いでしょう。でも原宿の子たちはずっと変わらず自分の好きなことをやっている。ちょうどそこに現れたのがきゃりー(ぱみゅぱみゅ)で、彼女の勢いもあって原宿kawaiiはYouTubeで一気に世界へ拡散して行ったんです。

東日本大震災を報じた海外各国の新聞
東日本大震災を報じた海外各国の新聞

佐々木:今のお話を聞いて思ったのは、最近僕はよく言うんですが、歴史が終わりつつあるのかもしれないということ。近代化が完了して我々は豊かな先進国の富を享受するようになり、この先、もはや産業革命もなく、右肩上がりの物語を誰も信用しなくなってきている。そこでは現在を楽しむという心持ちでしかいられなくなるんじゃないかと思うんですね。たとえば今、スポーツではランニングや登山、自転車などが流行っていますが、どれも自分に向かうものばかりなんですよ。トーナメントで勝ち進むのではなく、今感じている気持ちよさを大切にする。文学にしても、かつては『ジャン・クリストフ』や『レ・ミゼラブル』のように主人公の成長を描いた物語が好まれていたけれど、今人気の村上春樹の物語構造は、今この瞬間の世界の構造だけを切り取っている。しかもその瞬間がずっと持続してほしい、終わりなき日常として描かれているわけです。今だけを気持ちよく考えて生きようというところが、増田さんのお話とぴったり当てはまって面白いと思いました。

増田:今まではいろいろなことがトップダウンで行われていたので、強い父権のようなものがあったけれど、今の時代はFacebookなどを使って草の根から湧き上がって行く。エジプトも、リビアも、Facebookで革命が起きましたよね。私たちに身近なものからクチコミでどんどん広がって行くところが、今の時代を表しているなと思います。

佐々木:物を買ったりサービスを受けたりする時に、それがブランドだからというのではなく、これを買う、このサービスを受ける、このコンテンツを見たり聴いたりするということによって、その先にいる人たちとつながる感覚が持てる。それは大事ですよね。きゃりーの音楽を聴くと、きゃりーと自分だけでなく、きゃりーを聴いている私たち、みたいな。そういう感覚ってあるんじゃないかな。

増田:それは海外にいてもすごく感じます。私たちが知っているもの、私たちがつくってきたもの、私たちの仲間、みたいな感覚があるみたいで、みんなすごくサポートしてくれようとするんですよ。今回の個展もリピーターが多くて、自分たちがこの展覧会を支えるんだという意識が強いんですよね。僕は、そういう子は信用できると思うし、そういう子たちによって時代は動くと考えています。

ワールドツアー「Harajuku“Kawaii”Experience」で行ったファッションショーの様子
ワールドツアー「Harajuku“Kawaii”Experience」で行ったファッションショーの様子

佐々木:コンピュータプログラムの世界で「伽藍がらんとバザール」という言葉があるんです。昔のプログラムは大会社に請け負って、あたかも大聖堂を建築するように緻密に設計図をつくって全体を組み立てていた。これが伽藍モデルです。それに対してバザールモデルはオープンソース(※編註)で、みんなが自由に開発を行い、その成果を市場(バザール)のように持ち寄りながらひとつのソフトウェアをつくるやり方。つまり、アイデアや技術などを持ち寄って、みんなで交換しながらつくり上げていくんです。僕は、文化の形成もそういう風になってきているのかなと思うんですよ。みんなそれぞれ持ち寄ってそこに参加し、参加すること自体がまた新たなコンテンツになっていく。そういう絶え間なくつくられていくような新しい文化に変わって来ているような気がします。

(※編註)プログラミングの作り方を無償で公開すること


日本人の豊かな創造力が時代を動かす

司会:増田さんは、制作のモチベーションのひとつとして「居場所をつくる」ということをよくおっしゃっていますね。

増田:もともと原宿に通っていた理由は、学生時代、地元にちょっとなじめなかったんですよ。原宿に来ると同じような趣味嗜好の人たちがいて、街がコミュニティの機能を果たしていた。ここに来れば自分自身でいられるという感覚があって、そういう意味では原宿は概念として形成されているんですよ。その中の象徴がきゃりーであり、こういうファッションであり、こういうアートなのかなと。僕は作品をつくる時、アナログで一つひとつの物を貼りつける作業をしているんですけど、最近はアナログの需要がすごく高いですね。影の付け方とか、物の強さとか、やっぱりCGでは表現できないものがあるし、僕は時々、物に訴えかけられて手が暗示を受けたような感覚になる時があるんですよ。

佐々木:確かに最近は段々リアルな、触った感覚のあるものが求められて来ている気がします。結局、どんどん物理空間から引き離されるがゆえに、逆に物理的な物へのあこがれが高まる。そういう逆説的なことが起きているんですよね。今、増田さんがおっしゃった原宿の考え方はすごく面白くて、いわゆる表参道と竹下通り、明治通りのあの場所をさらに抽象化した空間としての原宿ということですよね。そこには街の雑踏だけでなく、インターネットや音楽などいろいろなものが重なり、ひとつの「場」を形成している。そういうことが起きているのが面白いと思います。

会場には幅広い層の観衆が集まり、二人のトークに聞き入った。
会場には幅広い層の観衆が集まり、二人のトークに聞き入った。

司会:最後に、日本発のカルチャーが世界に向けてどうなって行って欲しいか、期待することを教えてください。

増田:こういうkawaiiカルチャーは、表面的な派手さや奇抜さばかりを切り取られがちですが、大事なのはそこに行きつくまでの理由とプロセス。その部分を、僕はこれからアートの文脈を使ってどんどん広めて行きたいと思っています。アートの世界になれば、ファッションには興味がないけど、ああいうカラフルなものには興味がある、という人にまで届くでしょうから。せっかく日本から生まれたオリジナルのコンテンツなので、これを大事に使いたいし、さらにその後にどんどん続いていって欲しい。日本人が持っている物を生み出すエネルギーや時代を動かすパワーを、世界に向けて発信して欲しいと思っています。

佐々木:日本人はもっと自信を持って、世界にどんどん出て行くべきですよ。日本人は協調性が非常に豊かな上に、文化的な面では世界でも屈指の創造性の高い国民だと思います。それは増田さんの活躍が如実に示していますよね。今の時代はマスリーチを狙う必要はないわけですから、テクノロジーを上手く使ってどんどん発信していけば、原宿kawaiiに続く世界を動かす日本発のカルチャーが生まれる可能性も大いにあると思います。

インタビュー・文/杉瀬由希
撮影/村上圭一


 
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