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イベント・レポート
No.022
青江覚峰トークショー「料理僧と学ぶ日本の心〜“いただきます”とは何か?」(後篇)

食育イベント「暗闇ごはん」をはじめ、食を通じて仏教の心を伝える料理僧・青江覚峰さんによるトークショーが、去る12月4日、浅草の緑泉寺で開催されました。和食とは何か。食事をいただくとはどういうことなのか。レクチャーとワークショップの2部構成で行われたイベントの後半をレポートします。


食への理解を深める「五観の偈(ごかんのげ)」

ワークショップの様子。食事の前に青江さんが料理の内容や食する心がけについて語った
ワークショップの様子。食事の前に青江さんが料理の内容や食する心がけについて語った

レクチャーの後は、いよいよワークショップへ。学んだことを念頭に置き、青江さんが心を込めてつくった食事をいただきます。イベントの冒頭に、青江さんからこんな質問がありました。

「今日 “一生懸命”ご飯を食べたという人はいますか?」

一生懸命仕事をしたり体を動かしたりすることはあっても、食事を一生懸命しているかと聞かれると、答えに窮するもの。会場でも「YES」と答えた人はごくわずかでした。
「我々現代人は忙しいので、常に時間を気にしながら食事をしています。何時に家を出るには、何時までに食べなきゃいけない。次の移動先に何時に着くようにするには、何時までに食べなきゃいけない。そんな風に、目の前の食事ではなく、時間を意識しながら食べていないでしょうか」

一・功の多少を計り彼(か)の来処(らいしょ)を量る
[食事が食卓に上るまでに多くの人がしてきた働きに感謝します]
二・己が徳行(とくぎょう)の全欠(ぜんけつ)を忖(はか)って供(く)に応ず
[ありがたい食事をいただくに値する行いをしているか省みます]
三・心(しん)を防ぎ過(とが)を離るることは貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす
[心を正しく保ち、過った行いを避けるため、貪りの心を持たないことを誓います]
四・正に良薬を事とするは形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんが為なり
[心身を健康に保つための良薬として食事をいただきます]
五・成道(じょうどう)の為の故に今此(いまこ)の食(じき)を受く
[仏道修行を成し遂げるためにこの食事をいただきます]

背景に思いを馳せることで、感謝の気持ちが生まれる

左—青江さんお手製の料理。動物性の食材や、ネギやにんにくなどにおいが強く精のつく野菜は使用していない

右—感謝の気持ちを込めて「いただきます」

左—青江さんお手製の料理。動物性の食材や、ネギやにんにくなどにおいが強く精のつく野菜は使用していない
右—感謝の気持ちを込めて「いただきます」

一人ひとりに供されたのは、10種類の野菜を寒天で固めて湯葉で巻いたテリーヌや、からし菜と姫大根のお漬物、海老芋と茎レタスの炊き合わせなど、青江さんお手製の精進料理3品。全員で合掌して「いただきます」を唱えると、早速箸をつけていきます。彩り豊かな料理を目でも楽しみながら味わう人、隣の人と話し合いながら味や食材を吟味する人、皆思い思いに食していましたが、しばらくすると青江さんから次のようなルールが設けられました。
「ここから5分間は、一切の音を立てない、咀嚼中は手を膝に置く、お箸や湯飲みは両手を使う。この3つを意識して召し上がってみてください」

すると空気は一変。室内はしんと静まり返り、ほとんどの人が目線をお膳に据えたまま、よりゆっくりと味わうような食べ方へと変わりました。目の前の食事の背景に思いを馳せているのか、意識を集中して食事に向き合っているのがわかります。

食事が終わり、青江さんが感想を尋ねると、参加者の一人からこんな意見が。
「この食材はどこから来たんだろう、青江さんはどういう気持ちでつくってくださったんだろう、ということを考えながらいただきました。一つひとつの食材に関わっている人がたくさんいるのだということを改めて考えさせられましたが、遡っていくとあまりにも膨大で、正直なところ考え切れないと思いました」

すると、「それでいいんです」と青江さん。
「僕自身もそうです。毎日考えるけれど、あるところまで考えると、その先はもう考えられなくなる。それでも、これ以上考えられないというところまで考えること自体、日常ではなかなかないことですよね。物事について遡って考えるということは、たとえば配偶者や友達など傍にいるのが当たり前だと思っていた人とのご縁に、あらためて気付かせてくれたりもします。そうすると、そのご縁に感謝して、傍にいる人を大切にしようという気持ちになる。そういう時間を持つことが大切なのではないかと思います」

参加者一人ひとりの心に“余韻”が残ることを願い、お鈴を鳴らす青江さん
参加者一人ひとりの心に“余韻”が残ることを願い、お鈴を鳴らす青江さん

<プロフィール>
青江覚峰(あおえかくほう)
1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。カリフォルニア州立大学にてMBA取得後、料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」の運営や超宗派の僧侶達が集うウェブサイト「彼岸寺」の創設など、幅広い活動を行う。著書に『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)など。

インタビュー・文/杉瀬由希
撮影/館野帆乃花


 
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