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イベント・レポート
No.027
東京都庭園美術館「オモテの面白さ」能楽師/友枝雄人さん

能楽師の友枝雄人さんによるレクチャー&デモンストレーションが、去る5月9日に東京都庭園美術館で行われました。今回は前半に続き、能面の「オモテ」の基本と友枝さんに演じていただいた『清経』のデモンストレーションの模様をお届けします。

レクチャー&デモンストレーション 「オモテの面白さ」より
レクチャー&デモンストレーション 「オモテの面白さ」より


オモテと演技

Q6 視覚に頼らないということですが、オモテの中ではどのくらい見えているんですか?

その質問はよくされるんですが、演技に集中していますが、舞台に立っていると舞っている自分と客観的に測っている自分の両方がいるような気がしまして。あ、寝ているお客さんがいるなっていうのが見えたりします(笑)。


Q7 悲しい演技や怒っている演技の表情など、オモテの中では表情に出さないのでしょうか?

もともと表情で演技をするというものではありません。オモテの見え方というのは自分たちの肉体の表現の稽古で培われてきますので、自分のオモテがどういうふうに表現として伝わっているかというのはあまり計算したことはないですね。それよりも舞台に立っている立ち姿とか、そういうものがオモテに作用します。肉体で表現していますので、首から上だけで演じるようになると非常に陳腐なものになります。首から下と首から上は常に一体になるのが基本です。

会場の様子
会場の様子


Q8 お持ちいただいたオモテをご紹介いただけますか?

今日は3面持ってきました。
一つは「中将」です。このオモテは平家の公達もしくは在原業平など貴族の役に使うものです。後ほど私が演じます『清経』というのは平家の公達で、合戦の最中でハチマキをしているんですね。白ハチマキをするのですが、そうすると眉間の皺が半分失われるんです。それによってまた表情が変わります。私どもが「中将」のオモテを見るときはハチマキが合うか、あるいは業平などのハチマキをしなくてもいい貴族なのかという見方をします。ですから、オモテを見るときは工芸品として「良い」「悪い」ではなく、そのオモテからこの演目に使いたいというイメージが湧くことが重要です。

中将のオモテ
中将のオモテ

次の面は江戸初期のものではないかと思います。これが「童子」のオモテですね(前半Q2を参照)。少年の役で使います。展示されているものは、これよりも面長で表情に野性味がありますね。

童子のオモテ
童子のオモテ

最後は女性の面です。オモテに当たる光の加減を変えると、悲しげな表情と晴れやかな表情がわかるかと思います。これは「小面(コオモテ)」と言います。小は小さいという意味ではなく、プリティという意味ですね。いわゆる出産前の女性のオモテです。出産後の女性というのは子供を人買いにさらわれて、悲しくて探すという演目が多いので、ここまで晴れやかではないですね。小面は静御前などの若い女性で、テーマが男女の恋愛が表題の曲目などに使われます。

小面(コオモテ)。ふだん見ることのできない内側も披露

小面(コオモテ)。ふだん見ることのできない内側も披露

小面(コオモテ)。ふだん見ることのできない内側も披露

Q9 同じ演目でも、使うオモテを変えることもあるのでしょうか?

『清経』となりますと中将しか使いません。それは能楽の決まりとして決まっています。オモテは髪の毛1本1本の描き方が決まっているんですね。こういう描き方をしているから小面であるという決まりがあるんです。ですが、同じ小面でもこの演目には向くけれど、別の演目には向かないということもあります。それはオモテを打たれる方(作る人)にも個性がありますので、演者のセンスや好みで選びます。

レクチャーのあと『清経』から一場面をデモンストレーション
レクチャーのあと『清経』から一場面をデモンストレーション


Q10 好きなオモテはありますか?

あまり考えたことはないですね。いろいろな演目を舞いたくなりますので、限定することはできないですけれど。やはり女性のオモテというのは本当に奥が深いので、今後もっと良いオモテがあったときには、つけてみたいという思いはあります。


トークが終わると友枝さんはデモンストレーションの準備に入ります。その間、友枝さんの演技を映像で鑑賞。演目は『道成寺』と『船弁慶』です。それぞれの見所の部分を鑑賞しながら、デモンストレーションへの期待を高めます。およそ20分後、会場に謡の声が響くと、友枝さんが『清経』の装束で登場。会場は一瞬にして張り詰めた空気になり、能舞台が目の前にあるような雰囲気に。来場者はその圧倒的な迫力に目を奪われていました。
東京都庭園美術館では6月30日まで『フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵 マスク展』を開催中。フランスのケ・ブランリ美術館の大規模なコレクションから世界各国の仮面を見ることができます。日本のオモテも展示していますので、友枝さんのお話を参考に、この機会にぜひご覧ください。

文・構成/TAN編集部

 
イベント・レポート

都内で開催される注目のアートイベントをご案内し、その模様をレポートするコラムです。リアルな空間で、そしてオンラインで、日々の暮らしにアートを取り入れてみませんか。

フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵

マスク展
フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵のアフリカ、アジア、オセアニア、アメリカから集められたマスク(仮面)約100点を展示。人は仮面を纏って舞い踊り、一体化することによって、我と仮面(=他者)という両者の力をあわせ持つ存在となって、未知なる時空の扉を開こうとしました。それぞれの土地の特質や文化を背景に、人々のさまざまな願いが反映されたマスクの魅力を紹介し、その表現の本質に迫ります。展覧会は6月30日まで。
http://www.teien-art-museum.ne.jp

友枝雄人 (ともえだたけひと)

1967年10月28日生まれ。故友枝喜久夫の孫。伯父友枝昭世の養子となる。故喜多実、友枝昭世、塩津哲生に師事。能楽協会会員。
3歳で初舞台「鞍馬天狗花見」。10歳で初シテ「経政」。平成6年「猩々乱」、平成14年「道成寺」、平成17年「石橋」、平成22年「翁」を被く。「五蘊会」主宰。「條風会」同人。平成21年小学館白洲賞受賞。慶応大学経済学部卒業。

友枝雄人 (ともえだたけひと)

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