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イベント・レポート
No.051
夏の夜をミュージアムで楽しもう!
いとうせいこうさんと、江戸の園芸を語る

都内の国立・都立6つのミュージアムが夏休みの金曜夜を中心に、21時まで夜間特別開館を行った「サマーナイトミュージアム-宵の美-」。7月中旬から8月下旬にかけて各施設では、さまざまな夜間イベントが開かれました。東京都江戸東京博物館では去る8月18日、作家でクリエイターのいとうせいこうさんと、園芸文化研究の第一人者である平野恵さんを迎え、江戸時代の絵巻や図譜を参考にしながら園芸について語るトークセッション「いとうせいこう イン えどはく」を開催。同博物館の学芸員・市川寛明さんと田中実穂さんも交え、園芸談義に花が咲きました。

いとうせいこうさん(右)と平野恵さん(左)
いとうせいこうさん(右)と平野恵さん(左)


夏の花といえば朝顔

自身のエッセイ『ボタニカル・ライフ 植物生活』『自己流園芸ベランダ派』などで植物好きとしても知られる、いとうせいこうさん。植物と付き合って25年以上になるものの、「植物はいまだに謎が多い」と言います。
「自ら再生する能力がある植物は人間とはまったく違うシステムを持っています。植物の生命史は人間よりもはるかに長く、彼らのシステムをできるだけ知りたいと思います」
いとうさんの語る植物の魅力から今日のトークが始まりました。

左から市川寛明さん、田中実穂さん、平野恵さん、いとうせいこうさん
左から市川寛明さん、田中実穂さん、平野恵さん、いとうせいこうさん

まずはスライドに、庭を愛でる武士の姿を描いた絵巻の画像が映し出されました。描かれているのは江戸時代に参勤交代で江戸に住んでいる久留米藩(現・福岡県)の武士の様子。おそらく園芸が好きで、庭で朝顔をはじめとしたたくさんの植物を育てています。

坪庭の朝顔を愛でる勤番武士。「久留米藩江戸勤番長屋絵巻」(明治時代、東京都江戸東京博物館所蔵)
坪庭の朝顔を愛でる勤番武士。「久留米藩江戸勤番長屋絵巻」(明治時代、東京都江戸東京博物館所蔵)

「あれ、おかしいな? 日が当たってないように見えるのですが……?」と、いとうさん。
「そうなんです。これは江戸時代の挿絵で、縁側や庭に植物が描かれたりしていますが、バランスが悪く明らかにおかしいところがあるんですね」と平野さんは話します。

次にスライドに映されたのは、朝顔の鉢を描いた絵。四角い立体的な支柱で朝顔のツルが支えられています。「江戸時代の絵本の中の一コマです」と平野さん。
「鉢に竹を組んでいる、現代でもおなじみの朝顔の植え方です。この時代、生け花や盆栽などは向きが決まっており、『正面』があるのが当たり前でした。ただこの『行灯づくり』という支柱の立て方によって、園芸文化の正面性の概念は崩されました」と言います。

江戸時代に見られた朝顔の支柱。『犬の草紙』第七編下(個人蔵)
江戸時代に見られた朝顔の支柱。『犬の草紙』第七編下(個人蔵)

「育つことを推奨する社会になった、ということですね。立体的で屋根のようになっていて、この支柱の立て方は見たことないです。憧れてしまうくらい。現代に売っていたらアイリスオーヤマで買っちゃいます」と、いとうさんは絶賛。会場は笑いに包まれました。


江戸時代、園芸ファンを魅了した「変化朝顔」とは

変化朝顔の噴水咲牡丹

風鈴獅子牡丹

変化朝顔の噴水咲牡丹(左)と風鈴獅子牡丹(右)

ここからは朝顔の歴史、そして平野さんが長らく研究をしている「変化朝顔」の話に話題は移ります。「変化朝顔」とは、花弁が白と青の2色になったり、ボタンのような八重になったり、と突然変異によって朝顔とは思えないような形をした朝顔のこと。江戸時代に園芸ファンの中で一躍ブームとなり、現代でも熱心に栽培されています。
平野さんによると、江戸時代の大阪など上方は江戸よりも園芸人口が多く、誰の花が一番か、といったコンテストも行われていたそうです。

変化朝顔の図譜。『両地秋』(江戸時代、東京都江戸東京博物館所蔵)
変化朝顔の図譜。『両地秋』(江戸時代、東京都江戸東京博物館所蔵)

「この印刷物の発行元は植木屋さんです。多色刷りで豪華ですし、作るのも結構大変だったと思いますが、これはおそらく園芸カタログの代わりなんです。大阪で良い種をもらって育て、この図譜に載せる。今でも園芸ファンの間では、自分の育てた個体が写真集や雑誌に載るのは嬉しいですよね。同じ気持ちだと思います」と平野さんは言います。

いとうさんは2013年の夏に田中実穂さんらが企画した特別展「花開く 江戸の園芸」を見るため来館され、そこでおまけとして配布された変化朝顔の種をまいて育てたことがあるそう。「いつのまにか葉が分かれたり、丸まったり、と初めての経験でした。すごく面白かったです」


菊を楽しむ江戸庶民

その後、園芸談義は菊にも。江戸時代、菊も園芸植物として親しまれていました。一度平らに咲いたのち、花弁がねじれたり、折れ曲がったり、と様々な変化(芸)をする菊は「芸菊」と呼ばれていました。また歌川国芳の「百種接分菊」では1本の茎に100種類も花を接ぎ木した菊が描かれています。

歌川国芳画「百種接分菊」(1845年、東京都江戸東京博物館蔵)
歌川国芳画「百種接分菊」(1845年、東京都江戸東京博物館蔵)

そして最後に、田中学芸員の自宅ベランダの写真がスライドで公開されました。田中さん曰く、家族が育てていらっしゃるというベランダと屋上には日除けに湿度の維持などと本格的。万年青(おもと)、春蘭、尢磨iけいらん)、松葉蘭など葉が美しい植物を中心に育てているそうです。「素人じゃないですね!(笑)」といとうさん。

こうして約1時間のトークは終了。100年以上を経て現代につながる園芸の魅力にしばし思いを馳せながら、両国の夜は更けていきました。
サマーナイトミュージアムは来年度も開催予定です!暑い夏の夜はぜひ涼しいミュージアムに足をお運びください。

トークセッション「いとうせいこう イン えどはく」開催模様

Text:佐藤恵美
Photo:中川周

東京都江戸東京博物館、休館前の無料デー!
「江戸博感謝の日」

東京都江戸東京博物館は2017年10月1日(日)から2018年3月31日(土)まで改修工事のため全館休館します。休館前日の9月30日(土)を「江戸博感謝の日」とし、入館料(観覧料)が無料になります。新日本フィルハーモニー交響楽団のミニコンサートや公式キャラクター・ギボちゃんも登場!

◎日時:2017年9月30日(土)9:30-19:30(入館は19:00まで)
◎会場:5階・6階常設展示室
◎住所:東京都墨田区横網1-4-1
◎TEL:03-3626-9974
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp

「サマーナイトミュージアム-宵の美-」とは?

東京都立の東京都江戸東京博物館、東京都美術館、東京都写真美術館と国立の東京国立近代美術館、国立西洋美術館、国立新美術館の6つのミュージアムで7月末から8月末まで、主に金曜の開館時間を21時まで延長。(本年度は終了しました)学生無料などのおトクな観覧料やミニコンサートなどさまざまなイベントで、真夏の夜を盛り上げました。
https://www.rekibun.or.jp/nightmuseum/

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