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イベント・レポート
No.054
東京芸術劇場 マタニティ コンサート

2018年3月6日(火)に東京芸術劇場で開催された「マタニティ コンサート」は、美しい歌声と優しいリュートの響きによる癒しの時間を、お腹の赤ちゃんとお母さんが一緒に過ごせる、ユニークなコンサートでした。一児の母でもあるソプラノ歌手の小林沙羅さんに、コンサートに込めた想いをお伺いしました。

© Hikaru.☆
© Hikaru.☆


新しい聴き手に音楽を届ける

東京芸術劇場ではこれまでも、親子で楽しめるコンサートやワークショップなど、老若男女を広く対象にしたプログラムが開かれてきましたが、今回の「マタニティ コンサート」では、妊娠中のお母さん、そして生まれる前のお腹の赤ちゃんにも音楽を届ける、新しい試みとなりました。
発案者は、自身も1年半前に出産を経験し、マタニティ期間を過ごしたソプラノ歌手の小林沙羅さん。「子供が産まれて最初の1年ほどは、子育てに精一杯でなかなかコンサートに行くことも難しかったです。むしろ、妊娠期間中の方が自由になる時間がありました。マタニティのあいだは、ちょっとホッとしたい、音楽を欲する時期でもあると感じました」と、小林さんは振りかえります。
今の時代、妊婦は出産間際まで仕事に携わることも多く、将来のこと、子供のことなど、考えなければならないことが特に増える時期です。小林さんも妊娠中、産婦人科の先生から心身を休めることの大切さを説かれ、音楽を聴いてリフレッシュする必要性を実感しました。
「妊娠中のお母さんは、コンサートへ行こうという気持ちになれない方が多いのではないかと思います。そんな方々にも、安心して来ていただけるようなコンサートをつくりたいと思いました」

小林沙羅さん Photo: 櫛引典久
小林沙羅さん
Photo: 櫛引典久


古楽器リュートの魅力

小林さんの澄んだ歌ともにコンサートを盛上げるのは、つのだたかしさんが演奏する、リュートの繊細な響きです。
リュートは、16〜17世紀、ルネサンス期からバロック期にわたってヨーロッパで普及した楽器で、当時の詩人・劇作家であったシェイクスピアの劇音楽でもリュートが重要な存在でした。今回のコンサートでは、最初に演奏されたT.モーリーのシェイクスピア『お気に召すまま』からの曲、「それは恋人たち」のほか、リュートが活躍した時代につくられた曲が多く披露されたことも特徴となりました。
また、『マザーグース』歌曲集からの「きらきら星」は、小林さんのお子さんも大好きな曲。「ラベンダーブルー」は幼少のときにお祖母様が英語で歌って聴かせてくれた曲とのこと。親しみやすく心を和ませる、小林さんの思い入れのある曲で構成されました。

MC中のふたり。リュートのこと、それぞれの曲のエピソードなどが語られた © Hikaru.☆
MC中のふたり。リュートのこと、それぞれの曲のエピソードなどが語られた
© Hikaru.☆


めぐり逢う、かけがえのない存在

終盤に歌われた武満徹さんの「めぐり逢い」は、恋人、友人、家族など、人生のなかで縁するさまざまな大事な人と出会いを想起させる歌詞となっています。妊娠中だった小林さんが「めぐり逢い」を聴いたときには、これから生まれてくる子供についての歌のように感じられたそうです。
「『生きる悲しみさえも 共に抱いて 共に歩き』という詞があります。生きていくことは、楽しいことばかりではないけれど、一緒に生きていこうと子供に語りかける、強いメッセージを感じました。希望のある曲だと思い、ぜひお届けしたいと思いました」
会場となったシアターイーストの座席には、お腹の大きな人の姿もみられました。6月に出産を控えているという女性にお話を伺うと、「東京芸術劇場にはよく来ていました。ふだん家では胎教を意識していないけれど、知っている曲も多く、今日は私もお腹の子供も楽しみました」とのこと。心をリフレッシュさせる音楽の力が、あらためて感じられるコンサートでした。

1回目(14:00開演)の会場の様子。妊婦さんと音楽ファンが一緒にコンサートを楽しんだ Photo: 櫛引典久
1回目(14:00開演)の会場の様子。妊婦さんと音楽ファンが一緒にコンサートを楽しんだ
Photo: 櫛引典久

お話を伺ったお母さん Photo: 櫛引典久
お話を伺ったお母さん
Photo: 櫛引典久

Text:竹見洋一郎

小林沙羅(ソプラノ)

東京藝術大学音楽学部卒業。同大学院修士課程修了。2010年よりウィーンとローマにて研鑽を積む。国内外のオーケストラとの共演を重ねるほか、オペラやオペレッタでは持ち前の演技力とダンスの能力を活かし多くの舞台に出演。2015年には野田秀樹演出/井上道義指揮『フィガロの結婚』のスザンナ役にオーディションで抜擢され、その演技力と歌唱で観客を魅了した。2014年にはファーストアルバム『花のしらべ』、2016年にはセカンドアルバム『この世でいちばん優しい歌』をリリース。2017年第27回出光音楽賞受賞。

つのだたかし(リュート)

ヨーロッパで中世からバロックにわたって愛された弦楽器リュートの演奏家。独奏に加え、歌曲の伴奏者として深い信望を得て国内外で数多くのコンサートを行う。古楽器バンド《タブラトゥーラ》主宰。モンテヴェルディのオペラ「オルフェーオ」企画やシェイクスピアの「十二夜」などの舞台、映画の音楽も手がける。リュートのソロ、リュートソング、イタリアの初期オペラの時代の歌曲、リュート伴奏による武満徹songs他、CD作品多数

東京芸術劇場 マタニティ コンサート

東京芸術劇場 シアターイースト(地下1階)
日程:2018年3月6日(火) 1回目:14:00開演(13:30開場)/2回目:19:00開演(18:30開場)
出演:小林沙羅(ソプラノ&ナビゲーター)、つのだたかし(リュート)
主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
http://www.geigeki.jp/performance/concert135/

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