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イベント・レポート
No.064
手を合わせることで伝わるいのちの躍動 「みらいへのまなざしパフォーマンス」

2019.11.6

会場全員が参加するパフォーマンス「瑠璃色の地球」
会場全員が参加するパフォーマンス「瑠璃色の地球」

2019年9月15日に新宿区の牛込箪笥区民ホールで、NPO法人みんなのダンスフィールドによる「みらいへのまなざしパフォーマンス」が行われました。みんなのダンスフィールドは、年齢、性別、からだの大小、障害の有無に関係なく、互いの個性を尊重しながらともに表現活動を行う団体です。普段は月2回の定例活動で、所属メンバーを中心に見学者や体験者と創作活動や交流を行ったり、国内外でのパフォーマンスや教育機関などでのワークショップを行っています。

車椅子ダンサーのスピード感に圧倒!

この日は、創立20周年を記念した「みらいへのまなざしプロジェクト」の一環として、夏休みに初めて出会った9名の小学生たちとの3回のワークショップを通して生まれた作品と、定例活動の参加メンバー総勢30名による作品が発表されました。
体育館の床に会場と客席が設けられ、パフォーマーと同じ目線の高さと、通常のステージより近い距離感に緊張しながら開演を待ちます。

ファシリテーターのかけ声に合わせて自由に動きながらも、周りにいる仲間の動きを意識しながらパフォーマンスしている様子が伝わってくる
ファシリテーターのかけ声に合わせて自由に動きながらも、周りにいる仲間の動きを意識しながらパフォーマンスしている様子が伝わってくる

明るいマーチのような音楽が流れはじめると客席の後ろから子供たちと数名の大人が登場し、笑顔で舞台をぐるっと行進します。「みるみる探検隊」と題されたこの作品では、ファシリテーターの「走れ〜!」「誰かと一緒に、見る!」「指でお絵描きしよう!」というかけ声に合わせて、パフォーマーが元気良く走ったりポーズをとったりします。楽しそうに力いっぱい動き回る子供たちの満面の笑顔もとても印象的ですが、車椅子ユーザーのパフォーマーたちのスピード感溢れる動きにも圧倒されます。

「ドキドキ土器」の冒頭シーン。二手に分かれたダンサーたちがゆっくりと舞台中央に向かって進んでいく
「ドキドキ土器」の冒頭シーン。二手に分かれたダンサーたちがゆっくりと舞台中央に向かって進んでいく

舞台を縦横無尽に走り回るエネルギッシュな作品の次は一転、照明が落とされて荘厳な音楽が流れます。縄文人に扮した大人のパフォーマーによる「ドキドキ土器」という作品です。
惑星を彷彿とさせる白い球体を持ったダンサーが車椅子の上に立ち、それを数人で踊りながら押して動くというダイナミックなダンスで始まるこの作品は、大きくゆったりとした表現と車椅子による滑らかな動きが、オーケストラによる壮大な音楽にぴったりです。

定例活動メンバーによる「どんぐりの森は宝石箱」は、大人と子供の息の合ったパフォーマンスが印象的な作品
定例活動メンバーによる「どんぐりの森は宝石箱」は、大人と子供の息の合ったパフォーマンスが印象的な作品

客席を巻き込んだ「手合わせ」で大人も子供もどんどん自由に

公演も中盤に差し掛かり、次は、お互いの手のひらを合わせて相手の動きを感じながら動くという「みんなのダンスフィールド」が長年培ってきた表現方法「手合わせ」を取りいれた「てあわせ・のはら」です。この日は客席からも子供たちだけでなくお父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんが参加しました。最初は恥ずかしそうにしていた人たちも、周りの人の手に触れながら音楽やファシリテーターの「走れ〜!」「誰かと一緒に、見る!」「指でお絵描きしよう!」というかけ声に合わせて動いているうちに、どんどんと表情も体の動きも柔らかになっていきます。ダンスの経験がない、それも初対面の人同士があっという間に自由な表現にたどり着けることに驚き、そして感動しました。

「てあわせ・のはら」では、近くにいる人と手のひらを合わせながら輪になって床に座って揺れたり、立ち上がって木のように伸びたりする
「てあわせ・のはら」では、近くにいる人と手のひらを合わせながら輪になって床に座って揺れたり、立ち上がって木のように伸びたりする

15分の休憩を挟んだ後も、「みんなのダンスフィールド」のメンバーによる作品や子供たちの思い思いの表現が続き、最後にパフォーマー全員と大勢の観客が参加して地球の美しさを表現する、「瑠璃色の地球」という作品でこの日の公演は締めくくられました。

大人のメンバーによる「前へ」は、躍動感とシャープな動きが溢れる作品

「みらいへのまなざし」という作品では、小学生たちが一人ずつ思い思いのパフォーマンスを見せた

左:大人のメンバーによる「前へ」は、躍動感とシャープな動きが溢れる作品
右:「みらいへのまなざし」という作品では、小学生たちが一人ずつ思い思いのパフォーマンスを見せた

「瑠璃色の地球」では会場全員が参加し、互いに手を合わせたり体を揺らしたりして森の木や地球の上を吹く風を表現した
「瑠璃色の地球」では会場全員が参加し、互いに手を合わせたり体を揺らしたりして森の木や地球の上を吹く風を表現した

世の中の人はもっと表現してほしい!

公演の後に、NPO法人みんなのダンスフィールド代表の西洋子さんにお話を伺いました。

代表の西洋子さんは、東洋英和女学院大学で身体表現論や舞踊学を教えている
代表の西洋子さんは、東洋英和女学院大学で身体表現論や舞踊学を教えている

今日の公演で印象的だった「手合わせ」ですが、活動初期から取り入れているそうです。自身の体験から西さんは、病気で寝たきりの人でも生きている限りは動き続けていていると考えます。「手を合わせることでわずかでもその動きを受けて動きはじめると、相手も同じように動いてそこから表現がつくられていきます。」
また、発達障害の子供たちは、本当は接触することを嫌がるそうです。しかし何回か続けていると手を出してくれるようになり、そうして人と関わることで社会のなかでの生きやすさにつながったり、何かクリエイティブに出てくるものがあるということが、わかってきました。車椅子の子供たちも、漕いで、動いてというのでは一緒に動いていて違和感があったそうですが、手を合わせて片手を引っ張ることでスムーズに動けるようになったとのこと。

そんなふうに誰でもが参加できるよう工夫が積み重ねられてきた「みんなのダンスフィールド」の作品は、誰かが振付けるということは基本的にしないそうです。「多様な人たちがいて、できることもできないことも、社会的な背景もダンスの経験もそれぞれなので、みんなが精一杯自分の表現をするように、私たちファシリテーターは声をかけ、『耕す』ような関わり方をして作品がだんだんと出来上がります。」
今回ワークショップに参加した小学生たちの作品もそうしてつくられ、本番ではリハーサルの時と全然違うことをしている子供もいたそうですが、みんなとてもイキイキしていて「自分の表現」だと思ってパフォーマンスしていることが伝わってきました。
今は多様性やインクルージョンが大切と言われている時代ですが、障害のある人と本当に対等な立場での活動、たとえば違う人がいるからこんなに面白いものが出てきたとか、自分のなかの新しい部分が耕された、といったことは実態としては少ない、と西さんは感じています。今後は、そうした活動がどんどん生まれてくる土壌をつくっていきたいと考えているそうです。
最後に、「世の中の人はもっと表現してほしい!」と伝えたいとのこと。「お父さんやお母さんたちも忙しくて大変だと思うんですが、少しの時間でも子供と手を合わせると世界の見え方や生きているものに対する感じ方が変わっていきます。こうしたことが今の社会のなかでのアートの役割ではないでしょうか。手を合わせるというとてもシンプルなことですが、奥が深いんです。」

多様な人たちが文字通り触れ合うことで、相手の動きや温かさを感じ、自分のなかで何かが耕されていく。春の雪解けのように手合わせの輪が伝播していく、そんな未来が見えるような公演でした。

公演では最後にみんなでもう一度手合わせをして終わりました
公演では最後にみんなでもう一度手合わせをして終わりました

Text:澤口えりか
Photo:中川周

なつやすみ2019ダンスワークショップ&パフォーマンス
「みらいへのまなざしパフォーマンス」
子どもたちはインクルーシブ・ダンスで対話する
日程:2019年9月15日(日)13:00(12:30開場)
場所:牛込箪笥区民ホール
主催:NPO法人みんなのダンスフィールド

「みらいへのまなざし」特設サイト
https://www.mirai-manazashi.org/

みんなのダンスフィールド ウェブサイト
https://www.inclusive-dance.org/

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