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松蔭先生の課外授業
No.018
東京都写真美術館
ゲスト:アーティスト/野村恵子さん
松蔭浩之先生が若手アーティストと都内の美術館で行う「課外授業」。
東京都写真美術館の展示室を後にし、松蔭先生が写真家・野村恵子さんの創作の源に迫ります。
偶然にもシャツがお揃いの二人

東京都写真美術館で展覧会「東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13」と「アピチャッポン・ウィーラセタクン 亡霊たち」をぞんぶんに楽しんだ松蔭浩之先生と野村恵子さん。引き続き、野村さんの写真集を松蔭先生が見ることになった。

松蔭 この写真集『DEEP SOUTH』(リトル・モア刊、1999年)、とてつもなくいいねえ。

野村 沖縄で撮ったものです。私、生まれも育ちも関西ですけど、ルーツは沖縄なんです。これらの写真は、沖縄のコザという町に住んでた時に撮りました。

松蔭 人物写真もいいし、風景も決まっている!

野村 もともとモノクロームでスナップショットを撮っていたのですけど、沖縄を表現する際に、パーソナルな視点を持ちたいと考えたんです。そこで、ポートレートと町の心象風景に切り替えたんです。

松蔭 写真を始めたきっかけは?

野村 学生の時、学生リポーターという形で外国に行くことになって。文章だけだと伝えづらいことも、写真だと伝わりそうだと思って、大学に行きながら写真専門学校の夜間部に通ったんです。で、通ううちに、「あ、写真って難しいんだ」って知ったんです。

松蔭 誰かの写真に感銘を受けて、ということではないんだ?

『DEEP SOUTH』
『DEEP SOUTH』

『Soul Blue』
『Soul Blue』

野村 最初は、ユージン・スミスとかアンリ・カルティエ=ブレッソン、あとはマグナム所属のフォト・ジャーナリストとかに興味がありました。そして学校に入っていろんな作家を知るようになり、関心が広がりました。その後、アメリカに行ったんですが、当時のアメリカは現代写真が盛んで。

松蔭 ニューカラーとか、そのあたりの時代?

野村 そうですそうです、ニューカラーの終わりかけの頃で、こんなに多様な表現があるのだと知りました。写真がアートとして認められていることも目の当たりにしました。

松蔭 当時の日本とは大違い。

野村 ええ。で、帰ってきて、活動をしようと悪戦苦闘していたら、あっという間に時間が経ってしまって。

松蔭 この写真集は出版社にプレゼンをしたの?

野村 何軒も回りました。その中で気に入って下さる編集者に恵まれて、出していただけました。

松蔭 その後、活動はどういう展開だったの?

野村 この写真集を出した後、ブランクが6年くらい空きました。そのあたりから思想をしっかりもって撮影しなきゃという思いがより強くなりました。

そして松蔭先生は、写真集「Soul Blue」(Silverbooks / 赤々舎刊、2012年)を手にした。

松蔭 お、紙がマットからミラーになりましたね。この写真集もすごくいい!

野村 水をキーワードに日常や出かけた先で撮りました。

松蔭 お、この子、いいなあ。きれいだなあ。熱海で撮ってるというのが素晴らしい。やっぱ熱海だよ、熱海!

野村 その子は、今回の展示にも出てますよ。

松蔭 野村さんの写真は詩的。しかも私的でもある。私的の奥にあるポエムを感じる。

野村 わかりづらいとか言葉にしづらいとよく言われます。

松蔭 確かに、コメントはしづらい。

野村 こういうふうに見てほしいという明確さがなくて、なんとなく伝わればいいと思っています。たとえば、私小説は作者の実体験に基づいて書いてるんでしょうけど、フィクションですよね。

松蔭 うん、フィクションであり、普遍性がある。だから残る。

野村 そういうことが写真でもできないかと思ってます。で、いまは山を撮ってます。

松蔭 えっ、山? そのココロは?

野村 パーソナルなことからいったん離れて、原始的なものが撮れないかなあと思って。まだ、どういう方向になるのか模索してる段階で、山に通って撮っている最中です。

松蔭 それ、僕にはできない。僕は現代美術の世界にいるから、展覧会が決まらないと撮らなくて。本当、悪いクセだとわかってるんだけど。

野村 私の場合、撮っていくうちに気づいていく点も多くて。

松蔭 そもそも、撮影する時以外にカメラを持ち歩く習慣もないし。新しいカメラを買っても、すぐさまストラップを捨てるくらい。ストラップ用の金具も外すし。野村さんは、森山大道さんみたいに、常にカメラを持ち歩くタイプ?

野村 はい。いつ、「あっ」という瞬間が訪れるかわかりませんから、持ち歩いてますね。虹が出るかもしれませんし。

野村恵子《Bloody Moon》2006年
野村恵子《Bloody Moon》2006年

野村恵子《赤い水》2014年
野村恵子《赤い水》2014年

野村恵子《A Day in The Life》2016年

野村恵子《A Day in The Life》2016年

野村さんの山をモチーフにした新作に期待!
野村さんの山をモチーフにした新作に期待!


構成:新川貴詩

総合開館20周年記念
第9回恵比寿映像祭 マルチプルな未来

年に一度のアートと映像の国際フェスティバル。東京都写真美術館を主会場として、展示・上映・オフサイト展示・ライブイベント・シンポジウム・地域連携など多彩なプログラムを15日間に渡って開催します。
2017年2月10日〜26日まで開催。
http://www.yebizo.com

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。「瀬戸内国際芸術祭2016」に「昭和40年会」として出品。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

野村恵子(のむら・けいこ)
兵庫県生まれ。同志社女子大学英文学部中退、大阪ビジュアルアーツ専門学校を卒業後、アメリカへ。1997年、コニカプラザ「新しい写真家登場」特別賞受賞。1999年、日本写真協会新人賞受賞。2000年、東川賞新人作家賞受賞。主な個展に「赤い水」(銀座ニコンサロン、大阪ニコンサロン、2014)、「Soul Blue 此岸の日々」(Poetic Space、ビジュアルアーツギャラリー、NADER、2013)など。
http://www.keikonomura.com/

野村恵子(のむら・けいこ)

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