東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
HOME トピックス 展覧会・イベント情報 美術館・劇場・活動スペース アーティストファイル アート作品ランキング コラム 支援制度・コンテスト情報
トップ > 松蔭先生の課外授業
 
松蔭先生の課外授業
No.015
東京都美術館
ゲスト:アーティスト/倉田悟さん
松蔭浩之先生が若手アーティストをゲストに都内の文化施設で展開する「課外授業」。東京都美術館を訪ねた後、松蔭先生と倉田悟さんはお互いの作品について話が弾みました。
上野公園内のカフェにて

東京都美術館で開館90周年記念展「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」をたっぷりと堪能した松蔭浩之先生と倉田悟さん。今度は上野公園に場所を移し、倉田さんの作品を松蔭先生が見ることになった。

倉田 最初のページは最新作《ホテルカナリア》。油絵です。

松蔭 こういうフラットな感じの絵を、アクリルではなくあえて油絵で描いたわけか。

倉田 ぼくの絵は、よくアクリルみたいと言われます。実際に絵を見た人からも「アクリル?」と聞かれたり。

松蔭 動物が着ているセーターが素敵だ。

倉田 パターンとか柄とか、セーターそのものに興味があるんです。自分で買うのも好きなんです。

松蔭 奇妙な絵を油彩で描く人はけっこう多い。でも、ここまで完成度の高い人はあまりいない。油絵はいつごろから描いてたの?

倉田 予備校の頃からですね。ただ、大学に入った時には興味がなくなってインスタレーションを手がけていました。でも、インスタレーションをやっていると技術の習熟がなく、しばらくすると飽きてきて。

松蔭 職人的な技術を必要としないインスタレーションは多いからね。

倉田 そうなんです。それでまた油絵が描きたくなったんです。

松蔭先生は、倉田さんの作品をずいぶん気に入った様子。ポートフォリオ(作品を収めた冊子)を見ながら、色や構図などに矢継ぎ早に質問を繰り返す。

倉田悟 《ホテル・カナリア》  2016  194x260cm キャンバス・油絵

倉田悟 《ホテル・カナリア》 2016 194x260cm キャンバス・油絵

松蔭 抽象画は描かないの?

倉田 はい、具象ばかりです。抽象は描いたことはありません。

松蔭 映画のスチルみたいな絵もあるなあ。

倉田 その指摘はうれしいです! 実は先に物語があって、それを絵にすることも多いんですよ。たとえば、架空の島に家族旅行をしたときの思い出とか。

松蔭 記憶そのものをねつ造するわけか。おもしろい! それから、このポートレート的な絵もいい。ハズシがうまい。

倉田 ありがとうございます!

松蔭 横位置の絵が多いけど、横位置と縦位置の違いをどうとらえてる? ぼくは、ポートレートのようにリアルを追求したい場合は縦位置が多い。一方で、横位置は風景写真のように広がりを見せたい時に使うと思われがちだけど、案外それだけではない。ねつ造とか擬人化も含めて、目の前に自分の何かしら心象的なものが広がる場合に使うことも多い。

倉田 わかります、わかります。ぼくはしばらく横位置しか描けなかったんです。縦だと、うまく描けないんです。でも最近、縦位置が増えてきて…。どういう変化なのか、自分ではよくわからないんですけど。

松蔭 まあ、縦位置のほうが構図が簡単に決まるメリットもあるし。

倉田悟《Masked Elder Brother and Younger Sister on a Paul Smith Couch》2013 137×170cm キャンバス・油絵
倉田悟《Masked Elder Brother and Younger Sister on a Paul Smith Couch》2013 137×170cm キャンバス・油絵

倉田悟《銀色の男》 2016 38x45.5cm キャンバス・油絵
倉田悟《銀色の男》 2016 38x45.5cm キャンバス・油絵

松蔭先生と倉田さんの話は尽きない。倉田さんの作品について語るうち、松蔭先生の作品にも話題が及んだ。

倉田さんの作品に見入る松蔭先生

倉田さんの作品に見入る松蔭先生

松蔭 油絵って、制作途中で描き換えることもできるけど、そういうことしたりする?

倉田 いや、まずないですね。

松蔭 絵を見て、話を聞いて、そうだと思った。最初のインスピレーションが最後まで、ちっとも揺るがないわけだけど、なぜ、それができるの?

倉田 写真も同じじゃないでしょうか? 写真って、撮影は一瞬ですけど、まず先にイメージがあって、それを実現するためにセットを組むのに時間がかかりますし。

松蔭 そのとおり!

倉田 先日、松蔭先生の展覧会に行ったんですよ(田中偉一郎との二人展「怪獣」)。写真の作品に興味を持ちました。

松蔭 あれ、「CGですか?」「コラージュですか?」とよく聞かれた。でも、一発撮りだよ。ありとあらゆるモノをテーブルの上にいろいろと並べては組み替えることを繰り返し、セッティングに二晩かかったよ。

倉田 どういうプロセスでつくるんですか? 置く品々を最初に選ぶとか…。

松蔭浩之《Strange Table》 2008 Digital photo
松蔭浩之《Strange Table》 2008 Digital photo

松蔭 あの作品で使ったモノは、もともとうちにあった。がらくたと言えばあんまりだけど、インスタレーションの素材になるかもしれないと思って取っておいた捨てられないモノとかね。でも、一切合財捨てようかなと思って。それで、捨てる前に、いろんなモノが絵画的、二次元的なハーモニーを生み出すような構成を考えて撮影した。

倉田 えっ、じゃあ全部、捨てちゃったんですか?

松蔭 いや、実はまだある……。


構成:新川貴詩

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「『著者近影』 松蔭浩之・文芸家の肖像写真展」(男木島図書館、香川、2016)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。今年度の「瀬戸内国際芸術祭2016」に出品。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

倉田悟(くらた・さとる)
1991年、東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。ベルリン芸術大学留学を経て、現在、武蔵野美術大学大学院油絵コースに在籍中。主なグループ展に「トーキョーワンダーウォール2015」(東京都現代美術館)など。2013年、「シェル美術賞2013」で審査員賞を受賞。
「TWS-Emerging 2016」の一環として個展「アジワルラの思い出」をトーキョーワンダーサイト渋谷にて開催(9月3日-10月2日)。
http://www.kuratasatoru.com/

TWS-Emerging 2016【第3期】
http://www.tokyo-ws.org/archive/2016/04/s0903.shtml

倉田悟(くらた・さとる)

創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
デジタルミュージアム
美術館・博物館の収蔵作品2万点以上の
デジタルアーカイブ
東京・ミュージアム ぐるっとパス
詳しくはこちら