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松蔭先生の課外授業
No.002
東京都現代美術館
ゲスト:アーティスト/村瀬都思さん
先月から始まった新連載「松蔭先生の課外授業」では、松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)先生がさまざまな若手アーティストと都内の展覧会を訪れ、展覧会の見方、美術館の楽しみ方を解説します。東京都現代美術館で6月28日まで開催中の「山口小夜子 未来を着る人」を見ていく二人。会場に展示されている松蔭先生が撮影した作品の前では、山口小夜子を撮った当時の貴重なエピソードも話されます。
撮影:松蔭浩之

前回に引き続き、東京都現代美術館の「山口小夜子 未来を着る人」を鑑賞する松蔭浩之先生と村瀬都思さん。学芸員の藪前知子さんの案内で、まずは1970年代前半に撮影された写真を見た。

松蔭 横須賀功光さんのこのシリーズは本当に素晴らしい。経済成長を迎えた70年代、写真はアートよりも広告やファッション写真に勢いがあった。そのエネルギーが味わえる写真だと思う。

藪前 そしてこちらは、沢渡朔(さわたりはじめ)さんの写真です。

村瀬 写真家ごとに違う表情を見せるのがおもしろい。写真家との関係が見えてくるような感じですね。

藪前 ええ、こういう表情は他の写真家には見せませんからね。

松蔭 きっと横須賀さんよりエッチな人なんだろうね、沢渡さんは。

村瀬 そういうことなんですか!

なお、山口小夜子は1973年から86年まで資生堂のモデルとして専属契約を結んだ。その間の数多くの写真やポスターなどに、松蔭先生と村瀬さんは目を見張った。

松蔭 この「花椿」(資生堂のPR誌)の写真、いいなあ。もう、びっくりするくらい。

藪前 横須賀さんと小夜子さんの初めてのフォトセッションなんですよ。これをきっかけに、横須賀さんは小夜子さんに強い興味をもったんです。

松蔭 カラーコンタクトをつけている写真もある。普通のコンタクトですらあまりない時代。目に入れるの、相当、痛かったと思う。

藪前 でも彼女はまったく動じなかったそうです。

村瀬 撮影は73年ですか。それなのに、ちっとも古く感じない。むしろ新鮮。いまにつながる部分があるからでしょうね。

松蔭 うん、新鮮だし、他の広告写真を見て思うのは、小夜子さんはいろんなインスピレーションを写真家やデザイナーなどクリエーターを与えて、ものをつくるきっかけになったんだと思う。

村瀬 広告の写真を見ると、先ほどのファッション写真でモデルを務めていた時の顔と全然違う。

松蔭 うん、違う違う。

村瀬 もうちょっと人間っぽいというか。今回の小夜子展のポスターは、かっちりとポーズと表情を決めてて、なんだかサイボーグみたいに見えます。でも、人間っぽい表情の写真もあって、人間じゃない面と人間っぽい部分と両方あったんですね。

松蔭 そうだね。凝ったメイクでエキゾチックな雰囲気を漂わせる表情もいいけれど、ふっくらした感じの日本人的な表情もグッとくるよね。親近感わくし。

藪前 別人ですよね、たしかに。

資生堂の広告写真
資生堂の広告写真

会場を進むと、2点の写真作品があった。松蔭先生が撮影した山口小夜子のポートレートだ。

松蔭 雑誌「ART iT」で、ファッションデザイナーの津村耕祐がつくった衣装を撮影するシリーズの第一回に、小夜子さんにモデルを頼んでね。OKが出たと聞いた時、「うそだろ!?」と思ったよ。

村瀬 いったい、いくつの方なのか、写真を見てもわからない。

松蔭 本人もそういう方だった。撮影のとき、一人でひょっこりやってきて、「こんにちは」と挨拶して、一人でメイクを始めて。その様子が高校生みたいだった。まるで17歳の女の子が鼻歌交じりでお化粧してるような感じで。

村瀬 確かに、少女のような雰囲気がありますね。

松蔭 当初の話では、顔の撮影はなしで、背中の撮影のみという約束だった。それなのに、撮影するうち、いきなりポーズを構えだして、「ゴクッ」と息を飲みながらシャッター切った記憶があるね。

村瀬 そうなんですか!

松蔭 で、撮影して3年後、他の十数人の写真もまとめて個展をした時、オープニングにもクロージングにも来てくれて。クロージングの後、小夜子さんとご一緒した時、とても激励して下さって、「また何かやろうね」って。でも、その数ヶ月後に訃報を聞いて……。

藪前 この写真が展示できて本当によかった。21世紀に入ってからの小夜子さんの姿が作品として残っているのはほとんどないものですから。

松蔭さん撮影の写真の前で
松蔭さん撮影の写真の前で

それから一行は、森村泰昌や山川冬樹らの新作を鑑賞した。フィナーレを飾るのは、山口小夜子×生西康典×掛川康典による舞台芸術的な仕掛けのインスタレーションだ。

松蔭 この最後の作品、いろいろとシーンが変わっていくわけか。全部で時間はどれくらい?

藪前 30分ほどです。小夜子さんの朗読や舞ったりするシーンもありますよ。

松蔭 これはほんと、ゆっくり見たいインスタレーション。最後にこれをもってくるとは、なんとも贅沢。

村瀬 単純なアーカイブ的な展覧会ではなくて、亡くなった後もまだ作品をつくれる余地があるってすごい。正直言って、山口小夜子さんのことは名前を聞いたことある程度でしたが、あらためて存在の大きさを知りました。

松蔭 なるほどなあ。じゃ、村瀬くんの作品も見せてもらおうか。

(つづきます)

撮影:松蔭浩之
撮影:松蔭浩之


構成/新川貴詩

山口小夜子 未来を着る人

1970年代からアジア人初のトップ・モデルとして、世界のモードを席巻した山口小夜子。自らを「ウェアリスト(着る人)」と名乗り、さまざまなジャンルのアーティストたちと競演してきた彼女の軌跡を辿ります。展覧会は東京都現代美術館で28日(日)まで開催。
http://www.geigeki.jp

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。来月、展覧会「おおいたトイレンナーレ」(7月18日から9月23日、 http://www.toilennale.jp )に参加。

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

村瀬都思(むらせ・とし)

1984年、愛知県生まれ。2009年、武蔵野美術大学大学院造形研究科 日本画コース修了。現在、東京を拠点に、絵画を中心に作品を制作。主な個展に「くうどうをみつめる」(Gallery Forgotten Dreams、東京、2014)など。月刊美術 美術新人賞「デビュー2015」入選(2014)、損保ジャパン日本興亜美術賞「FACE 2015」入選など受賞多数。
http://lamb-log.blogspot.jp/
https://tokyoartnavi.jp/artistfile/detail.php?artist_no=20001771

村瀬都思(むらせ・とし)

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