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松蔭先生の課外授業
No.003
東京都現代美術館
ゲスト:アーティスト/村瀬都思さん
「松蔭先生の課外授業」では、松蔭浩之先生が若手アーティストと都内の展覧会を訪れ、展覧会の見方、美術館の楽しみ方を解説します。東京都現代美術館で「山口小夜子 未来を着る人」をたっぷりと堪能した松蔭先生と村瀬都思さんの二人は、美術館内のカフェに移動。いよいよこの新連載の目玉のひとつ、「作品講評」が始まります。

《くうどうをただよう》2014年 455×530mm アクリル絵具、綿布
《くうどうをただよう》2014年 455×530mm アクリル絵具、綿布

村瀬 今日は、ポートフォリオ(これまでの作品をまとめた冊子)と一緒にTANコンペで大賞を受賞した作品の原画も持ってきました。私の絵は、写真だとわかりづらいところがあって。よかったら、見ていただきたいんですが……。

松蔭 かさばるのに、わざわざ原画を持ってきてくれるとは! 感激した、当然、見るよっ! えーと、これは、プロペラみたいな形をしてるけど……

村瀬 見た瞬間、すぐに何なのかがわかる形は描いてないんです。

松蔭 ん?

村瀬 まず、何かをドローイングします。しばらくしてから、記憶をたどりながらまた絵にします。それを続けるうち、だんだん形が削り落ちていって、それをあらためて絵のモチーフに使ったりするんです。

松蔭 なるほど。芋虫かコッペパンみたいにも見えるけど、顕微鏡写真のようでもある。ミジンコとか微生物、というかブラウン運動のニュアンスすらある。確かに、何の形なのか、すぐには判断できない。

村瀬 子供の頃、一人っ子だったので家でぼーっとしてることが多かったんです。窓から光が差し込んで、ホコリがくるくると舞うのを眺めるのが好きで。いまの絵には、そのイメージがけっこう入ってますね。何にもない空気を凝視してるんですけど、実は何かがあるといったような場面を描きたい。自分の中の空洞と言いますか、何かがあった残骸や気配を描ければ。

松蔭 うん、この絵を見て、村瀬くんが感じていることが、100パーセントと言わないまでも、おれにも感じることができる。村瀬くんの絵は、力があるし、何よりも手が動いてる。……あのね、すぐれた作品って、表現ジャンルはどうあれ、<装置>なんだよ。さも、ふと見る人が作者と同じ風景を見ているような錯覚を感じるための。たとえばターナーの絵だって、装置だと思うし。

学生のうちはまだしも、いざアーティスト活動を始めると、率直な意見を聞く機会はなかなか少ない。村瀬さんは、真剣な眼差しで松蔭先生の言葉に耳を傾ける。

村瀬さんの作品を講評する松蔭先生
村瀬さんの作品を講評する松蔭先生

《くうどうとふたり》2014年 900×900mm アクリル絵具、綿布
《くうどうとふたり》2014年 900×900mm アクリル絵具、綿布

《くうどうをみつめる》1303×1940mm アクリル絵具、麻布
《くうどうをみつめる》1303×1940mm アクリル絵具、麻布
https://tokyoartnavi.jp/artistfile/artwork_detail.php?work_id=00003717

《みつめている》2014年 1620×1303mm アクリル絵具、麻布
《みつめている》2014年 1620×1303mm アクリル絵具、麻布

松蔭 いま、いくつだっけ?

村瀬 30です。

松蔭 いま同世代で抜きん出たアーティストって、誰かいる?

村瀬 そうですね、たとえばミヅマアートギャラリーの熊澤未来子さんですかね。

松蔭 ああ、熊ちゃん!

村瀬 同じ武蔵野美術大学造形学部日本画学科のひとつ上で、同じアトリエで作業してたこともありました。

松蔭 ただ、熊ちゃん、ちゃんとした個展を開いたのは、こないだがたぶん初めてでしょ。

村瀬 ええ。もう、ぼくと同じ学年だった人はだいたいみんな、やめちゃってて。残ってるのは自分も含めて2〜3人ですよ。

松蔭 そんなもんだよ。30歳はひとつの区切りになるのかな、きっと。

村瀬 松蔭先生の頃もそうでしたか?

松蔭 そりゃ、そうだよ。でもそれは、世代の話じゃなく、そういう世界だから。もちろん、同世代の仲間どうしで、お互いに支えあったこともあるけど、たまたまタフなやつが多かっただけの話。やめてった人もたくさんいるよ。

村瀬 その頃のお話、聞きたいんですけど。

松蔭 おれが学生だったのは、1980年代のバブルの頃。その頃、それこそ山口小夜子さんをはじめ、メディアを通して見るクリエーターたちは大人に見えた。だから、背伸びをして学生の頃からアクションを起こして注目されることを目指したりした。ところが、90年代くらいから、若い人が背伸びする必要がなくなった。子供は子供のままでいいということになったからね。だから、いまは30歳くらいから、やっとデビューという感じがある。ぼくらの時代は20歳くらいでデビューを目指したけど、いまは年齢10年遅れの感がある。

村瀬 (しきりにうなづく)

松蔭 ただね、いまになって思うのは、美術ってものを、一発当てるとか、注目を浴びるという観点だけで考えるのはおかしい。絵を真剣に描く、立体を真剣につくる、写真を真剣に撮る、それをどれだけ続けられるか、どれだけ覚悟があるか、そこだよ、大切なのは。
村瀬くんはいま30歳で、たぶんこれからの展開を考えてるんだと思う。でも、いきなり急展開せずに、いまの手法で徹底的に作品をつくったほうがいい。たとえばレイヤーをもっと増やすほうがいいのか、あるいは逆にスマートにするべきか。そのあたり試行錯誤することで、気づくことがあると思う。それで「あっ!」とわかったら、初めて次の段階に行く。自分を挑発するステップがきっとあるはずだよ。

最後に松蔭先生自ら村瀬さんを撮影。下に掲載のポートフォリオがこの日撮影したもの
最後に松蔭先生自ら村瀬さんを撮影。下に掲載のポートフォリオがこの日撮影したもの


構成/新川貴詩

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。現在、展覧会「おおいたトイレンナーレ」(7月18日から9月23日、 http://www.toilennale.jp )に参加。

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

村瀬都思(むらせ・とし)

1984年、愛知県生まれ。2009年、武蔵野美術大学大学院造形研究科 日本画コース修了。現在、東京を拠点に、絵画を中心に作品を制作。主な個展に「くうどうをみつめる」(Gallery Forgotten Dreams、東京、2014)など。月刊美術 美術新人賞「デビュー2015」入選(2014)、損保ジャパン日本興亜美術賞「FACE 2015」入選など受賞多数。
http://lamb-log.blogspot.jp/
https://tokyoartnavi.jp/artistfile/detail.php?artist_no=20001771

村瀬都思(むらせ・とし)

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