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松蔭先生の課外授業
No.005
東京都江戸東京博物館 企画展「くらべてみよう江戸時代」
ゲスト:アーティスト/NAOMI YUKIさん
松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)先生が新進アーティストと都内の美術館を訪れる「課外授業」。前回につづき、NAOMI YUKIさんと一緒に、東京都江戸東京博物館で開催中の展覧会の様子を紹介します。企画展「くらべてみよう江戸時代」では、当時の流行を追いかける江戸っ子たちのいきいきとした姿が見えてきます。
駿府城天守模型 撮影:松蔭浩之

東京都江戸東京博物館を訪問した松蔭浩之先生とNAOMI YUKIさんは、常設展示室に足を運んだ。実物大の幅に復元された日本橋を渡りながら、二人は江戸期の芝居小屋や明治時代の新聞社ビルを眺める。そして、江戸の街並みの模型をじっくりと見入った。

松蔭 よくできているなあ。

NAOMI YUKI(以下、NY) ほんと、細かいところまで丁寧につくっていますね。

実物資料や復元模型等が多数展示される常設展示室
実物資料や復元模型等が多数展示される常設展示室

それから松蔭先生とYUKIさんは、高度経済成長期や現代の東京を展示する一角へと足を運んだ。

NY この博物館、一日いても楽しめそうですね。

松蔭 うん、素晴らしい。江戸と東京、両方あるのがいい。時代が移り変わる過程もわかるね。

そして二人は企画展「くらべてみよう江戸時代」を、同館学芸員の眞下祥幸さんの解説とともに鑑賞した。

学芸員の眞下祥幸さんの解説を聞く、松蔭先生とYUKIさん
学芸員の眞下祥幸さんの解説を聞く、松蔭先生とYUKIさん

眞下 テレビやインターネットなどのない江戸時代、人々はどのようにして情報に接していたのか、それを探るのが本展です。たとえば、江戸時代にはさまざまな瓦版が出ていました。博物館で瓦版が展示されることはよくありますが、本展では、ひとつの事件に対して複数の瓦版を並べて展示しているのが特徴です。

松蔭 そこを「くらべてみよう」、ということですね!

眞下 まさに! こちらの安政の地震を取り上げた瓦版は非常に多く発行され、その数は100とも200とも言われるほどです。江戸で最大の災害の様子や規模はどうだったのか、どこが焼けたのかとかさまざまな視点で記されています。

松蔭 瓦版はいくらくらいで販売されてたんですか?

眞下 一般的には4文くらいとされています。そば一杯が16文の時代ですから、かなり手頃な値段だと言えますね。

安政の大地震を取り上げた瓦版を撮影する松蔭先生。発行日付や発行元のちがいによって被害の内容が変化しているのがわかる
安政の大地震を取り上げた瓦版を撮影する松蔭先生。発行日付や発行元のちがいによって被害の内容が変化しているのがわかる

安政年十月二日大地震附類焼場所(部分)、安政2年(1855)10月 撮影:松蔭浩之

安政二年大地震並出火場所方角巨細(部分)、安政2年(1855) 撮影:松蔭浩之

左=安政卯十月二日大地震附類焼場所(部分)、安政2年(1855)10月
右=安政二年大地震並出火場所方角巨細(部分)、安政2年(1855)
撮影:松蔭浩之

その他にも、ペリーの来航を伝える瓦版や、その黒船の蒸気機関がどんな仕組みなのかを絵入りで報じる瓦版など、さまざまな事件に関する瓦版を松蔭さんとYUKIさんは見て回った。

松蔭 あ、象だ。ふむふむ、江戸時代に天竺(インド)から象が江戸にやって来たのか。

眞下 こちらは瓦版とちがって、象の見世物の興行ちらしです。

NY ちらしも一種類じゃなくていろんなバージョンがあるんですね。

眞下 ええ、来日した象は一頭なのに、さまざまに描かれてます。たとえば大きさに注目すると、この絵は適正でしょうが、こちらは小さいし、あちらは大きすぎます。

松蔭 象の背中に10人以上も人が乗ってる! こりゃ、誇大広告だ!

眞下 ええ、誇大広告です。象の鼻をすべり台にしてるほどですから。

松蔭 しかも、いい大人がすべっているし。

NY この時代、象つかいって、いませんよね?

眞下 いないと思います。

NY じゃあ、普通の人が象を扱っていたんですか?

眞下 だと思いますよ。ただ、来日した時は3歳のメスなので、まだ扱いやすかったかもしれませんね。

象の来日を伝える瓦版を見る
象の来日を伝える瓦版を見る

それから一行は、本展のもうひとつの目玉である見立番付の展示コーナーへと足を運んだ。

眞下 見立番付は、相撲の番付と同様、いろいろなものをランキングした表です。たとえば、こちらは物価の番付です。高騰した商品と暴落した商品を並べています。それから、こちらは料亭の番付で、いまでいうとミシュランの星取り表みたいなものですね。展示では、その店がどこにあったのか、地図に落とし込んでいます。

NY 江戸時代もいまも、人が考えることは共通していますよね。みんな知りたがりだし、ランキングが好きだし。時代が変わっても、人の気持ちは大きな差がないとわかりました。

松蔭 「くらべてみよう」というコンセプトが効いてる。いまと過去のメディアをくらべるだけでなく、当時のメディアを比較できて面白い。物や出来事をどう捉えるかという発想の部分では、作品づくりのヒントにもなりそうだ。とくに象くらべはクライマックスだったね!

相撲の順位付だった番付を、ほかの物品で置き換えた見立番付
手前=凹凸諸色高下鑑(翻刻)
相撲の順位付だった番付を、ほかの物品で置き換えた見立番付


構成/新川貴詩

「くらべてみよう江戸時代」

江戸市中で事件が起きると発行された「瓦版」や、相撲番付になぞらえて、さまざまなものや人などを順位づけした「見立番付」といったランキング表などから、江戸っ子たちがどのような情報を持ち、何に興味を持っていたのかを紹介。東京都江戸東京博物館で9月27日(日)まで開催。
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

NAOMI YUKI

大阪府生まれ。2009年にイタリアのローマ国立美術院卒業。以来、国内外の展覧会に参加多数。2011年、日本文学館 アート部門特別賞、2014年、第4回 トーキョー・アート・ナビゲーション・コンペティション 特別賞、2015年、ACT Art Award 2015 優秀賞3位など受賞多数。
http://www.ny-artwarp.com

NAOMI YUKI

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