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松蔭先生の課外授業
No.011
東京都庭園美術館 メディチ家の至宝-ルネサンスのジュエリーと名画- 後編
ゲスト:アーティスト/地主麻衣子さん
松蔭浩之先生が都内の美術館で行う特別な授業。前回に引き続き映像作品を手掛ける地主麻衣子さんをゲストに、東京都庭園美術館で開催中の「メディチ家の至宝 ルネサンスのジュエリーと名画」展を探訪。新館での展示に移ります。

東京都庭園美術館を訪問中の松蔭浩之先生と地主麻衣子さんは、本館から新館へと移動した。引き続き同館学芸員の八巻香澄さんが、ガイド役を務めてくれた。

松蔭 新館はいつできたんですか?

八巻 平成26年11月です。本館がリニューアル・オープンするにあたって、新館ができたんです。

松蔭 (本館と新館をつなぐ通路にある)この波ガラス、いいですね。

八巻 デザインのアドバイザーは杉本博司さんです。

地主 そうなんですか!

八巻 このガラス、光を浴びると時間帯によってはハート型の影が出たりするんですよ。

地主 へえ、見てみたいっ! でも、なんでハート型になるんだろ? 不思議……。

八巻 他にも、渦巻き状の虹が現れたりもするんですよ。

松蔭&地主 へぇーーっ!

撮影:松蔭浩之
撮影:松蔭浩之

そして展示室へ。

地主 さっきまでの本館と比べると、絵の感じ、少し変わりましたね。

松蔭 だって絵が描かれた時代が違うし。

そして、本館と新館を比較するうちに、本館にあったフランス・プルビュス(子)による《エレオノーラ・フランチェスコ1世・デ・メディチの肖像》が、ふたたび話題に上った。

フランス・プルビュス(子)《エレオノーラ・ディ・フランチェスコ1世・デ・メディチの肖像》1600-1601年 フィレンツェ ウフィツィ美術館(パラティーナ美術館)蔵 c Firenze, Gallerie degli Uffizi−Galleria Palatina
フランス・プルビュス(子)《エレオノーラ・ディ・フランチェスコ1世・デ・メディチの肖像》1600-1601年
フィレンツェ ウフィツィ美術館(パラティーナ美術館)蔵
© Firenze, Gallerie degli Uffizi−Galleria Palatina

松蔭 それに時代はもちろん地域によって絵も変わる。フランス・プルビュス(子)という画家はアントワープ(現在のベルギーの都市)の人。

地主 メディチ家はフィレンツェ在住だけど、ヨーロッパのいろんな土地の画家たちに絵を描かせてたんですね。

松蔭 うん、そういうこと。多くの芸術家たちのパトロンだったからね。

地主 本館の絵に描かれた服は着るのが重そうで、どう着ていいのかわからないものばかりでしたけど、新館では服が簡素になって、ちょっと着られそうなものが増えましたよね。

松蔭 うん、合理的というかね。そのあたりの違いが面白いよね。

地主 フランス・プルビュス(子)の絵も、華があっていいですけどね。

松蔭 いまのベルギーの写真家も、こういうふうに撮る人が多い。光のとらえ方とか、被写体の顔はもちろん、髪も服もディテールがくっきりしていて、ぼやあっとさせない。

地主 わー、そういう見方ができるんですね。

この絵画をきっかけに、松蔭先生が1987年に結成した「コンプレッソ・プラスティコ」が話題に上った。

松蔭 コンプレッソ・プラスティコは日本人の二人組。それなのにイタリア語の名前を付けて活動してて。

地主 あの名前、イタリア語だったんですか!

松蔭 うん。メディチ家のようなヨーロッパの王侯貴族がやってたような振舞いを1980年代の日本人がやるとどうなるか、ということを表現してた。

地主 へえ、そうだったんですかあ!

松蔭 早い話、まがいもの。もっともらしい服装やアクセサリーを身につけて、エセ肖像写真を撮って、キンキラキンのインスタレーションをしてた。たとえば、大量のレンガを金に塗って金の延べ棒みたいにしてインスタレーションにしたりとかね。

地主 見たかった……。

松蔭 で、この絵に描かれてるような首飾りもつくったなあ。こういう首飾りは日本じゃまず手に入らない。だから手作りして。で、地主さんなら、どうやって作る?

地主 どんな素材で作るかってことですか?

松蔭 そのまんま作るとただのファッションになってしまう。日本人がこういう首飾りをあえて身につけるとしたら、どうするかってこと。

地主 そうですねえ……。100円ショップで売ってるレースペーパーかなあ。

松蔭 なるほど。今ならありかも。ぼくらは、新聞紙でハリセンを作って首に巻いた。

地主 ハリセンですかっ!

いま、この場にハリセンがあったなら、松蔭先生は頭を叩かれていたに違いない。

コンプレッソ・プラスティコ《LOVE & GOLD - TOKYO Version》1989年
コンプレッソ・プラスティコ《LOVE & GOLD - TOKYO Version》1989年

新館では一転、白い壁面の展示空間のなかで鑑賞

アムステルダムの金工家《赤ん坊を入れたゆりかご》1695年頃
フィレンツェ ウフィツィ美術館(銀器博物館)蔵 © Firenze, Gallerie degli Uffizi−Museo degli Argenti

新館では一転、白い壁面の展示空間のなかで鑑賞

アムステルダムの金工家《赤ん坊を入れたゆりかご》1695年頃
フィレンツェ ウフィツィ美術館(銀器博物館)蔵
© Firenze, Gallerie degli Uffizi−Museo degli Argenti


構成:新川貴詩

メディチ家の至宝-ルネサンスのジュエリーと名画-

ルネサンス文化発祥の地フィレンツェで、芸術家たちの擁護者となり、ルネサンス芸術を支えてきたメディチ家。《大公の宝物館》と呼ばれるフィレンツェ ウフィツィ美術館(銀器博物館)が所蔵する、メディチ家の歴史を物語る珠玉のコレクションを一堂に展覧する、日本国内初の展覧会。7月5日まで
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/160422-0705_medici.html

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「『著者近影』 松蔭浩之・文芸家の肖像写真展」(男木島図書館、香川、2016)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。今年度の「瀬戸内国際芸術祭2016」に出品。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

地主麻衣子(じぬし・まいこ)

1984年、神奈川県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。映像作品を中心に、展覧会出品多数。主な個展に「おおきな口、ちいさな手 もしくは ちいさな口、おおきな手」(Art Center Ongoing、東京、2015)など。主なグループ展に「リターン・トゥ トーキョーワンダーサイト レジデンス2015-2016」(トーキョーワンダーサイト本郷、東京、2016)、「Zero Gravity」(Matadero Madrid、スペイン・マドリード、2015)など。
http://maikojinushi.com/
5月28日〜6月25日、HAGIWARA PROJECTS(新宿)で個展『新しい愛の体験』を開催

地主麻衣子

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