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松蔭先生の課外授業
No.012
東京都美術館 開館90周年記念展 木々との対話──再生をめぐる5つの風景 前編
ゲスト:アーティスト/倉田悟さん
「松蔭先生の課外授業」は、松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)先生が若手アーティストと都内の展覧会を訪れ、展覧会の見方、美術館の楽しみ方を解説します。今回は「TWS-Emerging 2016[第3期]」(トーキョーワンダーサイト渋谷)にも出品している倉田悟(くらた・さとる)さんをゲストに、東京都美術館で授業を展開します。

松蔭浩之先生と倉田悟さんは、東京都美術館にやってきた。開館90周年記念展「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」を見るためだ。本展は、木を素材とした作品制作を続ける5人のアーティストたちが参加。会場を5つのエリアに分け、各々の作品が展示されている。同館学芸員の田村麗恵さんに解説を願った。

館内を案内してくれた学芸員の田村麗恵さん(左)

館内を案内してくれた学芸員の田村麗恵さん(左)

田村 はるか昔から、木は私たち人間の暮らしと深く結びついています。そして3.11以降、陸前高田の「奇跡の一本松」に代表されるように、多くの人は木に希望を託しました。ではまず、土屋仁応(つちや・よしまさ)さんからご案内しましょう。土屋さんの作品は、目に水晶やガラス玉を入れてあるのが特徴です。

松蔭 うん、確かに動物の目だ。

田村 ええ。ただ、そっくりそのままではなく、形態を抽象化したり、文様を描いたり、着色も独特です。

倉田 着色はどうやってるんですか?

田村 材質や技法は企業秘密だそうです…。

倉田 そりゃ、そうでしょうね…。

土屋仁応《子鹿》(部分)2010年

土屋仁応《子鹿》(部分)2010年

田村 そしてこちらが、最新作の「麒麟」「獅子」「鳳凰」です。本展のテーマ「再生」に基づき、「鳳凰」が制作されました。

松蔭 なんでまた、実在しない獣ばかりにチャレンジしたんでしょう?

田村 麒麟は平和な世の中に出現する動物であることから、そうした世界になるようにとの希望を、獅子は狛犬のように来館者を迎えるなどの意図があります。

ご一行は、続いて田窪恭治(たくぼ・きょうじ)さんのエリアへと向かった。

田村 田窪恭治さんはいわゆる「林檎の礼拝堂」や琴平山の再生プロジェクトで知られています。本展では、1980年代の廃材を使った作品を中心に選びました。当時の作品がまとめて見られる機会はなかなかありませんから。

倉田 さっき、外の作品を見てきました。

松蔭 ああ、イチョウの周りに CORQ® コルク (コルテン鋼のブロック)を敷き詰めた作品か。ぎんなんとか蝉の抜け殻も落ちてて、ほんとに自然と一体化してた。

田村 あのイチョウの木は、71年前の東京大空襲で被災したと言われています。

倉田 そういうエピソードがある木だったんですね。

松蔭 お、これ、シブいな(《No.8/No.9》)。

倉田 あ、これいいですね。ミニマルな感じで。

松蔭 こういう作品、つくろうとしても、なかなかできるもんじゃない。

田村 作家本人もどう解釈して良いかよくわからない、と述べている作品です。押し入れの床板の一部が素材です。

田窪恭治《感覚細胞−2016・イチョウ》(部分)2016年 撮影:松蔭浩之

田窪恭治《感覚細胞−2016・イチョウ》(部分)2016年
撮影:松蔭浩之

そして須田悦弘(すだ・よしひろ)さんの作品を見ようとしたものの、これがなかなか見当たらない。というのも、小さな木の彫刻が、こっそりと展示されているからだ。なお、須田さんの作品は展示室に加えて、アートラウンジや美術情報室にもひっそり展示されている。

田村 松蔭さん、倉田さん、どうぞ探して下さい!

松蔭 どこに置いてあるかわからないところがいいよね。探すプロセスも含めて作品なんだと思う。

倉田 あ、発見しましたーっ!!

田村 須田さんの作品は展示室内に3点ありますが、ひとつはお二人とも通り過ぎました。

松蔭 どこだ、どこだ? なんか、いらついてきた(笑)。と思ったら、おっと、あった!

田村 下の階に降りると、探さなくてすむ作品もあります。

松蔭 ほう、ちゃんとしたインスタレーションもお見事!

倉田 探す作品ばかりだと、見つけられない作家になってしまいますから(笑)。

松蔭 きちんとしたインスタレーションはやっぱりじっくり見てしまうなあ。

倉田 このバラ、吊ってるんですか?

須田悦弘さんの作品を探す松蔭先生と倉田さん
須田悦弘さんの作品を探す松蔭先生と倉田さん

田村 作品から「ほぞ」が出ていて、実は壁に刺してるんですよ。

倉田 あー、ほんとだ! こうすることで、ちょっと浮いてるように見えるんですね。

須田悦弘《バラ》2016年 撮影:松蔭浩之

須田悦弘《バラ》2016年
撮影:松蔭浩之

作品そのものはもちろん、展示の手法にも目を凝らす松蔭先生と倉田さん。「木々との対話」についての二人の対話は、後編へと続きます!


構成:新川貴詩

開館90周年記念展「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」

「木と再生」をキーワードに、永遠と瞬間、生と死というアンビバレントな要素を複雑に包含する作品で構成する展覧会。木の素材を活かした大規模なインスタレーションや彫刻により、現代日本を代表する作家たちの世界を体感できます。
http://www.tobikan.jp/exhibition/h28_treesofllife.html

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。「瀬戸内国際芸術祭2016」に「昭和40年会」として出品。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

倉田悟(くらた・さとる)
1991年、東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。ベルリン芸術大学留学を経て、現在、武蔵野美術大学大学院油絵コースに在籍中。主なグループ展に「トーキョーワンダーウォール2015」(東京都現代美術館)など。2013年、「シェル美術賞2013」で審査員賞を受賞。
「TWS-Emerging 2016」の一環として個展「アジワルラの思い出」をトーキョーワンダーサイト渋谷にて開催(9月3日-10月2日)。
http://www.kuratasatoru.com/

TWS-Emerging 2016【第3期】
http://www.tokyo-ws.org/archive/2016/04/s0903.shtml

倉田悟(くらた・さとる)

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