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松蔭先生の課外授業
No.016
東京都写真美術館 東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13
ゲスト:アーティスト/野村恵子さん
松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)先生が若手アーティストと都内の文化施設を訪れ、展覧会の見方、美術館の楽しみ方を解説する「松蔭先生の課外授業」。
今回は写真家の野村恵子(のむら・けいこ)さんをゲストに、東京都写真美術館で開講します。野村さんも出展している「東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13」から鑑賞していきます。
東京都写真美術館1階ロビーにて

「写真」という同じ表現方法をとる松蔭浩之先生と野村恵子さん。二人はこの日が初対面。東京都写真美術館で開催中の「東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13」を、同館学芸員の藤村里美さんの案内で一緒に観ていく。

藤村 本展は野村さんを含め6人の写真家が出展しています。タイトルは「新進」となってますが、中堅の方が中心です。いちばん若い田代一倫(たしろ・かずとも)さんが36歳です。そして本展は、「東京」がテーマです。まずは、中藤毅彦(なかふじ・たけひこ)さんの作品をご覧下さい。キャリアのある方なんですが、森山大道さんに影響を受けてまして……。

松蔭 そうですよね! 影響を受けているように見えます。

藤村 中藤さんは専門学校で森山さんから学んでいたんですよ。もともと海外の都市を撮っていましたが、5〜6年前から生まれ育った東京を改めてとらえ直そうと、東京の街を撮り始めたんです。

松蔭 うん、この写真、いまの「東京」って感じがする。

藤村 次は佐藤信太郎(さとう・しんたろう)さん。建設中の頃から東京スカイツリーを中心に周辺の風景を撮り続け、その成果を写真集にまとめました(「東京 | 天空樹」、青幻舎)。「写真は記録である」という意識を強く持っている方で、写真の隅々までピントが合っているのが特徴です。

野村 人が写ってる写真では、一人一人の顔もわかりますしね。

学芸員の藤村里美(右)の解説とともに
学芸員の藤村里美さん(右)の解説とともに

中藤毅彦〈STREET RAMBLER〉より  2011-2016年 インクジェット・プリント
中藤毅彦〈STREET RAMBLER〉より 2011-2016年
インクジェット・プリント

佐藤信太郎《2011年4月10日 台東区浅草》  2011年 インクジェット・プリント

佐藤信太郎《2011年4月10日 台東区浅草》 2011年 インクジェット・プリント

藤村 それから 小島康敬(こじま・やすたか)さんはニューヨークで写真を学んだ方です。学生時代、目隠しして風景を撮るという課題があったそうです。それがきっかけになって、風景写真に関心を持ったとのこと。

野村 この写真、気になります。シンプルに風景を切り取っているのに、カオス感があって。

松蔭 どこに目を向ければいいのか、よくわからない。そこがいい。

野村 まさに写真の面白さ。肉眼では絶対にこんな風には見えず、写真だからこその風景の切り取り方なんですよね。

藤村 そして元田敬三(もとだ・けいぞう)さんです。一見、人物写真に見えますが、元田さんは新宿や原宿などに出かけ、気になる人に声をかけて撮影するんです。ですから人物写真とも言えますが、人と街を撮っているんですね。

野村 街の空気感が写ってますよね。彼とは学生時代からの友だちで、当時から作風がまったく変わっていません。当時も今も、人と街を撮っていますね。その独特なギャップ感みたいなものが魅力だと思います。

松蔭 そうそう、ギャップがある。

野村 ただ、最近は被写体の年齢が上がってきています。以前は若い子が多かったのに。

松蔭 興味の対象が変わってきたんだろうね。

小島康敬《Tokyo》 2013年
小島康敬《Tokyo》 2013年

元田敬三の作品の前で
元田敬三の作品の前で

一行は、ようやく野村さんの展示スペースにたどり着いた。

松蔭先生絶賛の作品。同じ女性を撮った写真は本展で他にも展示されている

松蔭先生絶賛の作品。同じ女性を撮った写真は本展で他にも展示されている

松蔭 ほう、タイトルは「A Day in The Life」。ビートルズか。

野村 ええ、訳すと「今日の出来事」です。

松蔭 実は僕も、同じタイトルで展覧会をしたことがあって(2014年、横浜、ギャラリー サイトウファインアーツ)。

藤村 野村さんは東京をテーマに写真を撮ってるわけではありません。ただ、東京を中心に写真をまとめられないかと思い、声をかけたんです。

松蔭 人物写真は女性ばかりだけど、どうして?

野村 ずっと撮り続けている被写体が多くて。それと、人の匂いとか皮膚感、肉体性を撮りたいと思うと、どうしても女性になってしまうんです。

松蔭 この写真、いいなあ。

野村 この子は、18歳の時から18年も撮り続けています。顔や体がだんだん変わっていくのも面白くて。

松蔭 被写体の魅力がよく出ている写真だ。背後の外国人女性と窓ガラスの広告のモデル、そしてこの子とガラスの映り込み。4人の美人が収まった奇跡的な一枚だよ。

藤村 最後が田代一倫さんです。田代さんもずっと街で人物を撮り続けてきた方です。

野村 さっきの元田さんは、ちょっと変わった人や個性的な人を選んでますが、田代さんは方向が全然違う。なんでもない人を撮るって、簡単そうで、なかなかできないんですよね。しかも、背後にはどこにでもありそうな街並みが写ってて。こういう写真を作品として制作するって、難しいんですよね。

松蔭 しかも、看板を外したり、ゴミを捨てたりとか、何かしようとしていることを止めてもらって撮ってるところが面白い。

田代一倫《2015年10月18日 港区六本木》  2015年 発色現像方式印画
田代一倫《2015年10月18日 港区六本木》 2015年 発色現像方式印画

展示室に掲示された田代一倫のステイトメントの一部
撮影:松蔭浩之
展示室に掲示された田代一倫のステイトメントの一部
撮影:松蔭浩之

野村 こういう人たちは私も絶対に見ているはずなのに、いつも目に入ってこない。見ているのに見ていないことに気づかされる。

松蔭 写真はもちろん、ステイトメントが素晴らしい。泣けてくるし、力強い。これはぜひ自分の手で撮りたいっ!

展覧会を鑑賞した後、松蔭先生と野村さんは感想を語り合った。

松蔭 いま、オリンピックに向けて東京が変わりつつある。東日本大震災以降、耐震性不足が理由で壊される建物が多く、再開発がどんどん進んでいる。その中で、いまの東京の姿を示すのは、絵画ではなくて写真なんだと、今日は本当に実感できた。

野村 私は東京が変化する中で、普遍的なものを表現したかったんです。季節が変わっても、雲があって、人が生まれて、朝が来て夜が来て、……そんな視点で東京をとらえたいです。

そして二人は、東京都写真美術館で開催中のもうひとつの展覧会「アピチャッポン・ウィーラセタクン 亡霊たち」の会場へと向かった(その模様は次回!)


構成:新川貴詩

総合開館20周年記念
東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13

毎年異なるテーマを決めて開催している「日本の新進作家」展。シリーズ第13回目となるこの展覧会では、「東京」をテーマとして、東京というメガ・シティに対してアプローチしている6人の現代作家をとりあげています。
2017年1月29日まで開催。
http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2568.html

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。「瀬戸内国際芸術祭2016」に「昭和40年会」として出品。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

野村恵子(のむら・けいこ)
兵庫県生まれ。同志社女子大学英文学部中退、大阪ビジュアルアーツ専門学校を卒業後、アメリカへ。1997年、コニカプラザ「新しい写真家登場」特別賞受賞。1999年、日本写真協会新人賞受賞。2000年、東川賞新人作家賞受賞。主な個展に「赤い水」(銀座ニコンサロン、大阪ニコンサロン、2014)、「Soul Blue 此岸の日々」(Poetic Space、ビジュアルアーツギャラリー、NADER、2013)など。
http://www.keikonomura.com/

野村恵子(のむら・けいこ)

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