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インタビュー
No.001
やりたいことをやっている、ただそれだけ
語り手:写真家 ホンマタカシさん
写真とは何か──そう考えることを刺激するような多彩な仕事を、様々なメディアで展開するホンマタカシさん。ホンマさんにとって初めての美術館での個展が金沢21世紀美術館でスタートし、現在巡回展が東京オペラシティ アートギャラリーで開催されています。今回はホンマさんにインタビューし、これまでの活動と展覧会についてお聞きしました。
《Tokyo and My Daughter》2006 (c)Takashi Homma

修業時代

 写真について本格的に考えるようになったのは大学に入ってからですね。当時の日本大学藝術学部の写真科は全国の高校の写真部の部長が集まるようなところで、みんな、芸術熱が高かった。でも、ただ飲み屋で芸術談義をしていても写真はうまくならない。大学2、3年のときにある雑誌社のアルバイトでプロの仕事に触れ、やっぱり学校より現場のほうが自分には合っていると思いました。僕はせっかちだし、プラクティカルに写真に取り組みたかった。
 ライトパブリシティという広告制作専門会社に入ったのは、きちんと広告のことを学びたかったからです。80年代は、広告に一番勢いがありました。写真を扱うギャラリーは少なかったので、写真でアートを志すという考え自体がなかったのです。そのころはブルース・ウェーバーのような写真家を意識していました。でも明確な目標という訳でもなく、不勉強な面もありました。今ほど写真について詳しくないですし。その後、ロンドンに滞在し帰国するまでは、とにかく修業の時代でした。

《Together》より2007 (c)Takashi Homma
《Together》より2007 (c)Takashi Homma

《M / Washington D.C.》2009/2010 (c)Takashi Homma
《M / Washington D.C.》2009/2010 (c)Takashi Homma


90年代は幸せな時代

 ユースカルチャーや「郊外」をテーマに、新しいイメージを打ち出してホンマタカシは登場したという印象があるかもしれませんが、それはひとつの見方ですよね。「写真を撮る」というある種単純な行為が社会状況と密接に関係していても、代理店のマーケティングのように計算しながら考えたわけではないし、僕からあまり偉そうなことはいえないというか、取り立てて凄いことをしているという意識はありません。ともあれ、このころデビューした作家にとって、90年代は雑誌や広告というメディアを利用して自分の写真を撮ることができた幸せな時代ではないでしょうか。今はもっとクライアントの要望が厳しいし、それこそマーケティング的に表現が制約されることもあるでしょう。雑誌は情報誌になり、見開きなど余裕をもって写真が載せられなくなっている。それは情報社会が成熟し高度化したからだと思いますが、90年代はもっと隙間がありました。


役に立たないものの意味

 若者にはとにかく一見無駄に思えるようなことを勧めたいですね。どうやったら成功するかとか、効率とかを先走りして考えないほうがいい。僕は大学などで写真について教えたり、ワークショップを開くことがありますが、それは一般教養としての写真の見方を共有したいからです。作家になるために、どうしたらいいかを教えているつもりはなく、学生にすぐに出るような成果や効果を求めているわけでもありません。むしろ、そういう機会では、なにも役に立たないと思えるものを見たり、一緒にやりたいんです。それは僕にとっても意味があること。忙しいなか、そういう縛られない時間を過ごすことは僕にとって贅沢なんです。
 教えることも僕の表現だし、僕自身の勉強です。授業でいろんな映像を見て議論しますが、それはたぶん学生以上に僕の勉強になっています。こういう活動と自分の表現を分けているつもりはないんです。『たのしい写真―よい子のための写真教室』という本も、僕にとっては写真集のような表現手段のひとつだし、たとえば小説と思って読んでもらってもかまいません。

《Trails》より2010 (c)Takashi Homma
《Trails》より2010 (c)Takashi Homma


「ニュー・ドキュメンタリー」展

 今回はインスタレーションやビデオの作品も展示していますが、そういう写真以外のメディアの表現を手がけることも、僕にとっては以前から実践していることと変わらないんです。たとえば、雑誌の6ページなり8ページ分の撮影の場合、撮ったものを編集者に選んでもらうということをせず、自分で撮った写真の構成やレイアウトをなるべく自分でやるということを15年間続けています。同じように、インスタレーションやビデオも写真の延長と考えていますし、それがまだまだ拡張する可能性もあります。
 共有といえば、今回の展覧会は場の共有もひとつのテーマです。作品は半分以上、金沢展と重なっていますが、会場によって違う体験ができるように構成しています。次の会場、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館でもガラッと変える予定。「なぜ展示を変えたのか」を考えてもらいたいし、感じてもらいたい。東京展は東京オペラシティ アートギャラリーのほかにサテライト会場が9か所あるのもポイント。外に出て、大きい美術館と小さいギャラリーやお店をつなげたいし、作品も展示も連続しているものだと感じてもらえたら嬉しいですね。


インタビュー・文/西野基久


Information

■ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー

会期/ 4月9日(土)〜 6月26日(日)
時間/ 11:00〜19:00(金・土は20:00、入場は閉館30分前まで)
休館/ 月曜日 ※ただし5月2日(月)は開館
料金/ 一般1000円、大学生・高校生800円、中学生・小学生600円
会場/ 東京オペラシティ アートギャラリー
交通/ 京王新線(都営新宿線乗り入れ)初台駅東口徒歩5分
備考/ 開館時間変更の可能性があります。お出かけ前には公式HPをご確認ください
http://www.operacity.jp/ag/
ホンマタカシ ホンマタカシ

1962年東京生まれ。日本大学藝術学部写真学科在学中に、ライトパブリシティに入社。1991年ロンドンに渡り、ファッション・カルチャー誌『i-D』で活動。1998年刊行の『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』(光琳社出版)で、1999年、第24回木村伊兵衛写真賞受賞。2010年より、東京造形大学大学院客員教授を務める。主な写真集に『東京の子供』『Tokyo and my Daughter』『NEW WAVES』『TOKYO』『Trails』。著書に『たのしい写真―よい子のための写真教室』ほか。
http://betweenthebooks.com/

 
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