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インタビュー
No.003
哲学しながらアニメーションをつくる
語り手:アニメーション作家 山村浩二さん
『頭山』など独特の質感をもった短編アニメーションが、国内外で高く評価されているアニメーション作家、山村浩二さん。今秋には、新作『マイブリッジの糸』が東京都写真美術館で公開される予定です。今回のインタビューでは、作家活動をするきっかけになった作品や、制作のプロセスなどについてお聞きしました。
『マイブリッジの糸』2011年/12分38秒 (C) 2011 National Film Board of Canada / NHK / Polygon Pictures

アニメーション作家になろうと思ったきっかけ

 小学生の頃は、漫画家になりたいと思って漫画を描いていました。でも、現実的に創作で生きていくのは難しいだろうなと感じていたので、楽しみとして中学生の頃からアニメーションをつくったり、漫画の自費出版をしていました。ガロ系の漫画に魅かれて、表現としての漫画のあり方を考えることはあっても、十代の頃は本気で漫画家を目指すということもありませんでした。ただ、高校時代に美術の先生がNFB(カナダ国立映画制作庁/1939年に設立されたアニメーションスタジオ)のフィルムを見せてくれて、今まで接したことがないアニメーションの世界があると知ったのは大きかったです。その先生の勧めもあって美大を受験し、東京造形大学に入学。名古屋から上京し、それまで見られなかった映画が都内のあちこちで上映されていたので、大学に入ってすぐは映画青年のようにクラシック映画を見たり、実験映画を見に名画座に通いつめていました。

 二十歳前後は、映画観賞、読書のほかに、大学の課題で絵画、版画、実写の映画をつくったり、といろんなことをしていましたが、作家になろうという意識が芽生えたのは1985年に開催された第1回広島国際アニメーションフェスティバルの時です。イシュ・パテルのレトロスペクティブをスクリーンで見たのが転機というか、『パースペクトラム』の幾何学模様の動き、『死後の世界』の粘土の動き……動きそのもの、質感そのものでアニメーションって語ることができるんだと。ストーリーありきではなく、造形美術、視覚芸術としてのアニメーションがあるんだとリアルに感じたんです。造形の追求、自分自身の美意識の追求がアニメーションでできるということに気づかされてから、作品の傾向もつくり方もガラッと変わり、こういうことをずっと追求していきたいと思ったんですね。それは、食べていけるとかそういうレベルの話ではなく、生きていく上でやり続けていきたいということ。その意識変化が、作家としての自覚につながりました。

『カロとピヨブプト あめのひ』1993年/4分 (C)Yamamura Animation

『カロとピヨブプト あめのひ』1993年/4分 (C)Yamamura Animation

『カロとピヨブプト あめのひ』1993年/4分 (C)Yamamura Animation

作品制作のプロセス

『頭山』2002年/10分 (C)Yamamura Animation
『頭山』2002年/10分 (C)Yamamura Animation

 制作を始めて10年くらいは、NHKの子ども番組の作品づくりが中心でした。テレビの仕事が多くてスケジュールはタイト、自分の表現したいこともなかなかできない、大人向けの作品もつくってみたい。そんな思いもあって、締切りを設けず、自分がやれることを形にしようと企画したのが『頭山』でした。小学生の時に落語の「あたま山」を読んでいて、頭の上に木が生えるというビジュアルイメージを映像にしたら面白いんじゃないか。漠然とそう思ったんです。ただ、話が面白ければアニメーションになるかって言ったらそうではなく、映像だからこそという何かが見えなければならない。そこで原作を読み直したところ、すごく手ごたえがあった。特にラストの落ち。原作では、池の中に飛び込んで死んでしまったという一言で終わるんですが、一番表現しがいがあるなと。また、当時は少しずつ作品が海外で上映されるようになり、日本人としての自分に向き合う機会が増えていました。そこで、ネガティブなところも含めて日本的なものを描いてみようと制作をはじめました。

 アニメーションは、つくるプロセスが面白いんです。最初はちょっとした思いつきで制作が始まるというか、いつもスケッチをするんですね。新作『マイブリッジの糸』の場合は、家の中に馬や牛などの動物があらわれているという日常にはない光景、無意識の中から出てくるイメージがあって、これにどういう意味があるのか、アニメーションで表現するにはどうしたらいいのか。10分の作品をつくるにも、作業に数年かかるので、その間いろんなことをじっくり考える。ある種、瞑想に近いような、哲学しながらものをつくる感じ。自分でもゴールは全然わからないんですよ。考えながら、その場のひらめき、偶然性、様々な思考がパズルのピースのように組み合わさって形になるという。例えば、絵画は1枚の絵の中に時間の層が積み重なって最終的に1枚の絵ができ上がるものですが、アニメーションはそれが、創作の過程がコマに分かれ1本のリニアな時間をつくり出すもの。創作者自身が疑りをもって、探りながら創作していった作品は、見る側も作者の思考の過程を共有して、引き込まれていくのではないかと思います。

『カフカ田舎医者』2007年/21分 (C)Yamamura Animation/SHOCHIKU
『カフカ田舎医者』2007年/21分 (C)Yamamura Animation/SHOCHIKU


今に活きる現場経験と今後の日本アニメーション界

「Animations」活動の様子
「Animations」活動の様子

 振り返って考えると、大学3、4年生の頃にやっていた商業映画の美術・特殊造形のアルバイト、卒業後のスタジオ勤務が基礎力になっていたのかなと感じます。もともと素材の研究や映像制作の現場が見たいという理由で始めたアルバイトでしたが、美術さんって全体を見渡す役なんですよね。ディレクターは、もちろん色々なタイプの人がいますが、意外と役者の芝居しか見てない人が多かったりするので、シナリオから絵作りを考え、どうやって画面ができるのかということを常にトータルで意識していて、映像全体の統一感をつくっていくのは、美術さんなんですよ。アニメーションも同じで、キャラクターの動きをふまえた上で、その芝居が成り立つ世界観と空間設計をしていく。期せずして経験した映画とアニメーション美術の仕事が、トータルで作品をつくるという視点をもつことに役立っていますね。

 僕がアニメーションを始めた頃は、こういった短編作品はなかなか理解されづらいこともありましたが、今ではアニメーションの認知も、環境も、作家も育ってきていると思います。見る側も、ちゃんと見られる人が増えてきたのではないでしょうか。僕自身2006年に「Animations」という会をつくって、毎回ひとつのテーマや作家をとり上げてはみんなで勉強会をして、そのレポートをサイトにアップするといった活動を続け、日本のアニメーション界の底上げをする努力をしてきました。最初のメンバーに、アニメーション作家の大山慶君や和田淳君、評論の土居伸彰君がいるんですが、いまCALFでみんな頑張っていますね。でも、全体的に始まったばかりというところもあるので、これから創作と場作りを継続していくことが勝負だと思います。


Information

新作『マイブリッジの糸』2011年/12分38秒
2011年9月中旬より東京都写真美術館にて公開予定

山村浩二さんが、「音楽の流れに身を任せて、映像そのものにひたるように見てもらえる作品」と語る本作は、過ぎ去る「時間」をテーマに制作された短編アニメーション。バッハ作「蟹のカノン」の調べに乗せて、19世紀末の写真家エドワード・マイブリッジと、21世紀の母娘の世界が交錯する。

山村浩二(やまむらこうじ)

山村浩二(やまむらこうじ)

1964年、名古屋市生まれ。東京造形大学絵画科非具象コース卒業後、ムクオスタジオに入社。2年間の勤務を経て、1989年よりフリーランスのアニメーション作家として活動。多彩な技法が取り入れられた短編アニメーション作品には、マチエールや音に独自の創造性が発揮されている。代表作は、国内外のアニメーション映画祭でグランプリを受賞した『頭山』(2002年)、『カフカ田舎医者』(2007年)のほか、『カロとピヨブプト』(1993年)、『バベルの本』(1996年)、『ジュビリー』(2000年)、『年をとった鰐』(2005年)など。絵本制作なども手がける。2006年、アニメーション制作と評論のグループ「Animations」を結成し後進育成に注力。現在、東京造形大学客員教授、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻教授を務める。
http://www.yamamura-animation.jp/

 
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