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石川直樹 東京の記憶を旅する
No.001
石川直樹「東京の記憶を旅する」インタビュー(後編)
石川直樹[いしかわ・なおき]
1977年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により、日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞。『CORONA』(青土社)により土門拳賞を受賞。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)ほか多数。最近では、ヒマラヤの8000m峰に焦点をあてた写真集シリーズ『Lhotse』『Qomolangma』『Manaslu』『Makalu』(SLANT)を4冊連続刊行。7月発売の最新刊に写真集『潟と里山』(青土社)がある。

石川直樹さんが、故郷である東京を言葉と写真で綴る新連載『東京の記憶を旅する』。連載に向けたインタビュー前半では、ゆかりのある地域を中心に伺った。後半は、東京のイメージや原風景、その魅力について掘り下げる。


――東京のあらゆる場所に、石川さんの記憶が散りばめられているのですね。石川さんの原風景とはどのようなものでしょうか。

小学生の頃、板橋のマンションに住んでいたのですが、目の前にどぶ川がありました。ユスリカが常に発生しているような汚い川です。河岸をコンクリートで固められたその川は、水面までの距離が深くて、水に触れることも遊ぶこともできない。ただ見ているだけでしたが今でも脳裏に焼き付いています。
それから小学生のときに通学で乗っていた満員の地下鉄。目の前にサラリーマンのおなかが見えるのです。ランドセルを背負った僕はそのなかでもみくちゃになりながら夢中で本を読んでいました。
また、通学路だった九段下の坂もよく覚えています。春は皇居の桜がきれいでした。桜の花びらを笛にして遊んだり、北の丸公園のボートを見ながら昼寝をしたり。秋になると、その学校の前に坂に銀杏がびっしりと落ちていて強烈な匂いがしていました。

――東京という都市は、千差万別な要素を持っていると思いますが、石川さんにとっては住み慣れた場所であることが大きいのかもしれませんね。世界に伝えたい東京の魅力はありますか。

今まできちんと考えたことはなかったですが、やはり美術館やギャラリー、劇場などを紹介すると思います。僕は美術館も好きですし、映画や演劇もよく見ます。美術も映画も演劇も小説も、旅と同じで、見知らぬ世界と出会うのが面白い。優れた作品を見ると気持ちがわさわさし、心が揺さぶられますよね。本を夢中で読んでいて降りる駅を乗り過ごし、あわてて駅に降り立って見上げた空がそれまでとは全然違うものに見えたりする。ヒマラヤの山や極地で壮大な風景を見たときに心が揺さぶられて新しい世界に出会う、それとまったく同じ感覚なんです。

――現在は東京にどのようなイメージがありますか。

無色透明な印象があります。例えばインドにしろ沖縄にしろ、旅に行く場所にその土地固有の濃い色があるとしたら、東京には特徴的な色が見えてこない。僕にとっての東京は、「かまえ」がいらずスッと入って行ける場所です。旅先のようにガイドブックで交通手段や土地の情報をあらかじめ調べることもないですし、「わからないこと」もあまりない。スッ、スッ、と歩ける街です。
もちろん旅先でも、東京を思い出します。特に食事のことが多いですかね。実家で親がつくる食事、よく行く定食屋の味、連れて行ってもらったレストラン……。それから通い慣れた映画館や美術館など、山中にはないものを懐かしく思うこともあります。やはり、旅から帰って来て自宅に戻ると、普通にほっとしますよ。

石川直樹さん近影
石川直樹さん近影

――最後に本連載について伺います。タイトルに「記憶を旅する」という言葉を付していますが、それはご自分の「記憶を旅する」ことになりますか。

これまでは過去を思い返す時間をあまりとってきませんでした。いつも前ばかり向いて生きてきましたから。そういった意味で今回の連載は、自分にとっても新しい試みになりそうです。

――新連載『東京の記憶を旅する』。石川さんというフィルタを通してどのような東京が見えてくるのか、今から楽しみです。

文・構成/佐藤恵美


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