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アーティスト・サバイバル・メソッド
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学び舎に集う[後編]
目白漆學舎

技術の鍛錬が表現にものをいう工芸の世界。学校を卒業してから技術や知識を深める場所が少ないなか、漆芸の学び舎として「目白漆學舎」は誕生しました。後編では、目白漆學舎で研鑽を積む若手作家・吉田秀俊さんにお話を伺いました。

塗り見本。右端の木地に、艶がでるまで漆を何度も塗り重ねていく
塗り見本。右端の木地に、艶がでるまで漆を何度も塗り重ねていく

電気工学から漆の世界へ

「塗りにも一生、蒔絵(まきえ)にも一生。漆芸は突き詰めると一生かけても時間が足りないほど奥深い技なんです」。そう話すのは漆の世界に入って8年目の若手漆芸家、吉田秀俊(よしだ・ひでとし)さん。新潟県出身、31歳の吉田さんは、学生時代は電気工学を専攻していました。その後、電子部品に関する仕事に就き、漆の道へ転身を決めたのは24歳のとき。茶道の師範だった祖母の影響で、幼い頃に見た漆芸品の魅力が忘れられなかったそうです。
「黒い漆に金粉や青い貝。祖母が使っていた茶道具を見て、子供ながらに美しいと感じた記憶があります」

吉田秀俊さん
吉田秀俊さん

「作家という仕事は、食べていくのが厳しい世界」という祖母の忠告があっただけに工芸家への転身に家族は驚きましたが、「現実的な考えではないかもしれませんが、美しいものを追い求めたかったのです」と話します。
その後、石川県立輪島漆芸技術研修所に5年間通い、漆に関する一通りの技術と知識を得ます。研修所卒業後も輪島に残り、そのまま漆芸の仕事をする選択肢もあったのですが、東京に目白漆芸文化財研究所があることを知りました。
「輪島での仕事は、量産製品の制作でした。その仕事にも熟練の技術が必要でやりがいがありますが、私の場合は企画から制作まで自分で手掛ける作品づくりをしたいと思い、目白漆芸文化財研究所に入りました」

漆を塗る刷毛の種類もさまざま

漆を塗る刷毛の種類もさまざま

漆を塗る刷毛の種類もさまざま

奥深い技術の世界

吉田さんは現在、目白漆芸文化財研究所に所属し、人間国宝・室瀬和美(むろせ・かずみ)さんの作品制作をサポートするほか、目白漆學舎では体験教室の講師も担当しています。仕事の合間をぬって、自身の作品は自宅で制作する多忙な日々。
「忙しいですが、輪島で学んだこととはまた違う技術を使うのでとても勉強になります。それを必死に吸収しているところです」

漆に赤色をつけるベンガラ

絵筆

漆に赤色をつけるベンガラ(写真左)。絵筆(写真右)

東京での仕事は3年目。「やはり東京はギャラリーの数が多く、作品を見たり発表したりする機会が多いです」という一方で、作家として自分はまだ途上にある、と吉田さんは続けます。
「まだ下積みの時間が必要だと感じています。2016年に制作した《新生》という作品では、あるとき博物館で目にした鉱石、輝安鉱(きあんこう)がアイデアのもとになっています。時間をかけて放射状に成長する鉱石に自身の思い……何か新しいことをしたい、成長したいという思いを投影し、それを螺鈿(らでん)で表現しました」

吉田さんの作品。吉田秀俊 螺鈿蒔絵飾箱「新生」 2016年 D17.2×W25.2×H9.1(cm)
吉田さんの作品。吉田秀俊 螺鈿蒔絵飾箱「新生」 2016年 D17.2×W25.2×H9.1(cm)

理想の表現のため、いまは焦らず技術に向き合う時間、と腹を据える吉田さんは、目白漆學舎を「学び続けられる場所」といいます。
「ここは漆のことを勉強したい人が来るので刺激になります。日常的に先輩の工芸家に相談もできますし、室瀬和美先生の制作を手伝うことでさまざまな技術を知り得ます。また勉強会ではその道の第一線の方の話を伺える。以前、竹工芸家の藤沼昇(ふじぬま・のぼる)先生がいらっしゃって、実際に手仕事や技術を間近で見たことは印象深いです」
若い工芸家にとって、修行と学びの機会が豊富な目白漆學舎。吉田さんの活動とともに今後の展開に期待が高まります。

文:佐藤恵美
写真:中川周

目白漆學舎
目白漆學舎

◎住所:東京都新宿区下落合4-22-11

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