東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
HOME トピックス 展覧会・イベント情報 美術館・劇場・活動スペース アーティストファイル アート作品ランキング コラム 支援制度・コンテスト情報
トップ > アーティスト・サバイバル・メソッド
 
アーティスト・サバイバル・メソッド
method 13
コンテストに応募する[後編]
学生CGコンテスト(Campus Genius Contest) 受賞者インタビュー
(euglena)さん

2019.4.3

最新のテクノロジーを使った作品も多く出品される学生CGコンテスト(Campus Genius Contest)。そのなかで、天然の素材を使った作品でアート部門優秀賞、エンターテインメント部門審査員賞を受賞した(euglena)(ユーグレナ)さんの作品は、大きなインパクトを与えました。多種多様な作品が集まるコンテストで存在感を示すには、どうしたらよいのでしょうか。

エンターテインメント部門トークイベントでは、プレゼンテーション動画の映像美に感嘆の声が上がった
エンターテインメント部門トークイベントでは、プレゼンテーション動画の映像美に感嘆の声が上がった

自分だけの着地点

学生CGコンテスト(Campus Genius Contest)のスタート当初は、テクノロジーをいかに使いこなしているかが評価基準の一つでした。しかし現在は、新しい技術への挑戦に加え、自分の伝えたいことと表現の仕方がマッチしているかを重視しています。(euglena)さんの受賞作《watage》は、タンポポの綿毛や綿毛を水に浸けてしずく型に変形させたものを、水のりで一つひとつ接着して再構成したオブジェを使ったインスタレーション作品です。わずかな空気の流れにも反応して揺れ動く姿は、素材の魅力を最大限に活かした表現と言えます。

「素材の新しい表情をみせたい。そこに驚きや発見がある」と語る(euglena)さん
「素材の新しい表情をみせたい。そこに驚きや発見がある」と語る(euglena)さん

――天然の素材を使うに至った経緯を教えてください。

今は音や光による大規模な空間演出の作品をはじめ、さまざまなテクノロジーを駆使した作品がたくさんあります。そのなかで、派手なテクノロジー表現に引けを取らない新しい表現はないかと、自分なりのアプローチを考えました。その結果、タンポポの綿毛という天然の素材を通して、鑑賞者が自身の存在を再認識するコンセプトにたどり着いたんです。
審査段階では作品をみていただくことができないので、作品の制作工程や展示風景を映した動画資料を提出しました。空間自体を作品とするインスタレーションは実際にみてもらわないと魅力を伝えるのは難しいので、見逃しがちな作品の些細な魅力を、鑑賞者に気づいてもらえるような映像構成にしました。

素材となる綿毛は、5月頃に路上に生えているものをタッパーに入れて持ち帰るそう。制作過程を映した動画からもこだわりが感じられる
写真提供:(euglena)
協力:多摩美大学情報デザイン学科メディア芸術コース

素材となる綿毛は、5月頃に路上に生えているものをタッパーに入れて持ち帰るそう。制作過程を映した動画からもこだわりが感じられる
写真提供:(euglena)
協力:多摩美大学情報デザイン学科メディア芸術コース
素材となる綿毛は、5月頃に路上に生えているものをタッパーに入れて持ち帰るそう。制作過程を映した動画からもこだわりが感じられる
写真提供:(euglena)
協力:多摩美大学情報デザイン学科メディア芸術コース

――次はどんなユニークなアイデアが出てくるか、楽しみですね。

次回作は「人の体重と空気の移動」がテーマです。アイデア自体は《watage》以前に考えていたのですが、その時は力不足を感じてつくれずにいたんです。最初はいいアイデアだと思っても、時間が経つと「そうでもないな」と思うこともありますよね。しかし、このアイデアはずっとひっかかるところがあって、制作を進めることにしました。
今年の10月に個展をやるので、今は着々とプロトタイプをつくっています。失敗を重ねながら、やっと形になってきたところです。

《watage》2018年。本作品は第22回文化庁メディア芸術祭アート部門新人賞も獲得した

《watage》2018年。本作品は第22回文化庁メディア芸術祭アート部門新人賞も獲得した
《watage》2018年。本作品は第22回文化庁メディア芸術祭アート部門新人賞も獲得した

コンテストで経験値を積む

――コンテストに応募する理由はなんですか。

賞を取ることもそうですが、私にとっては展示されることが何より重要です。私はクリスチャン・ボルタンスキーや内藤礼のような、その空間に身を置いたときに作家の世界観に包まれるようなインスタレーションが好きなんです。インスタレーションの醍醐味とも言えるような、繊細な空間演出を施した作品を制作したい。《watage》についても、作品を引き立たせるような什器を自分で制作し、照明や空調にも配慮しています。
個人で展示をする場合、材料費も場所代もかかりますし、グループ展だと明るい空間の中で展示しなければならないことが多くあります。メディアアート系のコンテストだと暗い空間を用意してもらいやすく、《watage》のような暗い空間に適した作品を展示しやすいのです。
コンペには私自身落選することもありますが、落選したとしても応募した価値はあると思います。応募するごとにコンセプトを練り直したり、展示場所によって機材も変わってきます。作家として経験を重ねていくことも目的の一つです。

作家としてのキャリア設計

――今は修士課程1年生だそうですが、卒業後はどうしていきたいですか。

卒業後は作家としてやっていきたいので、アーティスト・イン・レジデンスなどを利用して、日本を拠点にしつつ海外にも作品を広めたいですね。
そのための戦略として、SNSなどでたくさんの人に知ってもらうといった、個人の発信力が大事だと思っています。先日もInstagramをみた海外のコンペティションから応募しないかとメールが来ました。

――(euglena)さんの名前の由来を教えてください。

ユーグレナはミドリムシという意味です。ミドリムシは植物細胞なので光があるところでは光合成を行いますが、光がなくても捕食をしたり、鞭毛(べんもう)で泳ぎ回ったりする動物的な要素があります。私の制作スタイルも、現代美術でもあったりメディアアートに通じるところもあったり、ミドリムシのような立ち位置だと思い、この名前にしました。こうしたジャンルに固執しない考え方によって、新しいものが生まれる気がしています。名前のカッコはミドリムシの細胞膜を表しています。

広大なアートの世界で存在感をどう示していくか、(euglena)さんは戦略的に考えてアクションを起こしていました。

応募を重ねることで、反省点を作品に取り入れてきた里見さん、展示する機会を求めて応募した (euglena)さん。どちらのアーティストも、コンテストへの応募が理想のアーティスト像へと近づく足がかりになっているようでした。

Text:浅野靖菜
Photo:櫛引典久

第24回学生CGコンテスト

応募作品:439作品
ノミネート:アート部門41作品、エンターテインメント部門43作品

アート部門

審査員(主査):寺井弘典(P.I.C.S. クリエイティブディレクター、多摩美術大学特任教授)
審査員:久納鏡子(アーティスト)
審査員:陣内利博(武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 教授)
評価員:大山慶(株式会社カーフ代表取締役/プロデューサー)
評価員:萩原俊矢(ウェブ・デザイナー)
評価員:藤木淳(アーティスト、表現研究)
評価員:やんツー(美術家)

エンターテインメント部門

審査員(主査):塩田周三(株式会社ポリゴン・ピクチュアズ 代表取締役)
審査員:荒牧伸志(監督、SOLA DIGITAL ARTS CCO)
審査員:市村龍太郎(株式会社スクウェア・エニックス プロデューサー)
評価員:井口晃慶(KLab株式会社 クリエイティブ部 グループマネージャー)
評価員:須貝真也(株式会社サブリメイション CGIディレクター)
評価員:齋藤和丈(株式会社デジタル・フロンティア シニアデザイナー)

https://campusgenius.jp/2018/

[お問い合わせ]

現在募集中の支援制度・コンテスト情報
https://tokyoartnavi.jp/support/contest/index.php
創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
デジタルミュージアム
美術館・博物館の収蔵作品2万点以上の
デジタルアーカイブ
東京・ミュージアム ぐるっとパス
詳しくはこちら