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アートの視点
No.002
東京都江戸東京博物館 「花開く 江戸の園芸」展[前編]
ゲスト:アーティスト 加瀬才子さん
ギャラリストの小山登美夫さんを学長に迎え、さまざまな分野のアートを楽しむ新連載。最初の授業は、ヴィジュアル・アーティストの加瀬才子さんを生徒に、両国の東京都江戸東京博物館で江戸絵画を学びます。7月30日から始まったばかりの「花開く 江戸の園芸」展の出品作品を見ながら、学芸員の方の解説を聞く小山さんと加瀬さん。花や緑に親しむ江戸時代の人びとを描いた浮世絵や当時の園芸書に興味津々です。
撮影:林道子 作品図版提供:東京都江戸東京博物館

江戸の暮らしに触れられる場所

常設展示室に入るなり、小山学長は驚嘆の声をあげた。
「うわっー、で、でけーっ!!」
驚くのも無理はない。江戸東京博物館の5階と6階が吹き抜けになった室内は、約9000平米もの巨大空間。江戸ゾーンと東京ゾーンに分けられ、前者には幅約8メートルの日本橋をはじめ、芝居小屋や長屋などが実物大で再現されているのだ。

小山 でかいとは聞いてましたけど、まさかこれほどとは。菊竹清訓氏が設計した建物はとても特徴的で、外観は以前から写真で知ってました。ただ、中がこうなっているとは予想外です。加瀬さんはこれまでに来たことがあるんですか?

加瀬 ええ、外国人の友だちを案内するため、何度か来ましたね。

小山 ああ、それ、いい手ですね。ここ、外国人には確実に気に入ってもらえそう。

加瀬 たとえば千両箱とか江戸時代の道具(の模型)を実際にかついだりできて、当時の生活習慣が体験できますしね。

小山 うん。普段、ぼんやりと思い込んでいる江戸の暮らしに、ここではちゃんと触れられる。江戸時代について研究し、しっかりした時代考証に基づいて再現されていますからね。時代劇では理解できない、まちの広さや建物の大きさがこのミュージアムでは実感できるのが魅力ですね。

常設展示室の、日本橋復元模型。実際に歩いて渡ることができる
常設展示室の、日本橋復元模型。実際に歩いて渡ることができる

錦絵の販売所の再現。アートギャラリーの原形?
錦絵の販売所の再現。アートギャラリーの原形?


園芸文化が進んでいた江戸時代

続けて二人は別室へと向かった。開館20周年記念の特別展「花開く 江戸の園芸」の出品作を特別に見せてもらうためだ(取材時は開催前)。同館の学芸員、行吉正一さんに解説をお願いした。

行吉 1860年にロバート・フォーチュンというイギリスの植物学者が来日しました。そして日本では、上流階級から下層階級の庶民まで、幅広い人たちが園芸を楽しんでいることにとても驚き、英国よりも進んでいると感動しました。その驚きを改めて多くの人たちに知ってもらおうというのが本展です。たとえば《めでたいづゑ まけてもらひたい》には縁日の植木市の様子が描かれていますが、ご覧のとおり、この頃にはすでに植木鉢があったわけですね。

左から、加瀬才子さん、小山登美夫さん、江戸東京博物館学芸員の行吉正一さん
左から、加瀬才子さん、小山登美夫さん、江戸東京博物館学芸員の行吉正一さん

「めでたいづゑ まけてもらひたい」 歌川国芳 嘉永5年(1852) 個人蔵
「めでたいづゑ まけてもらひたい」 歌川国芳 嘉永5年(1852) 個人蔵

小山 へー、植木鉢って江戸時代からあったんですか!

行吉 植木鉢が広まったのは享保から元文年間(1716-40)のことです。それ以前はお茶碗や徳利の底に穴を開けて水が通るようにした代用品を使ってましたが、次第に植木鉢が生産され使われるようになっていきました。すると持ち運びができるようになり、鉢植えの花を買い求める人も増えたんですね。

加瀬 植木鉢のおかげで室内でも園芸が楽しめるようになったんですね。

小山 それ以前は、花を楽しむにはどこかに見に行くしかなかったわけですか?

行吉 ええ、庶民の間では、お寺とか花の名所に出かけることが盛んでした。《武蔵国隅田川名所絵図》には、梅屋敷や桜並木などの場所が紹介されています。

小山 なるほど、今で言うお花見マップというわけですね! こういう資料を見ると、園芸を通して、過去の人たちとのつながりが感じられますね。

加瀬 ええ、江戸時代の人たちと今の人の違いがわかると同時に、同じなんだなということにも気づきます。

「武蔵国隅田川名所絵図」 文化7年(1810) 江戸東京博物館蔵
「武蔵国隅田川名所絵図」 文化7年(1810) 江戸東京博物館蔵

小山 ですよね。ただ、江戸時代に園芸が盛んだったということ自体、今日初めて知りましたけど……。

加瀬 ほんと、驚きですよね、私も知りませんでした。あっ、この絵、色が鮮やか。バラを描いた浮世絵も珍しいし。

行吉 《薔薇図》です。バラはもともと日本に自生していた植物ですが、なぜかあまり注目されていませんでした。それが明治時代に西洋の品種が入ってきて、がぜん注目されるようになったんです。

小山 そうなんですか、それも知らなかった!

行吉 では小山さん、加瀬さん、変化(へんか)朝顔という奇形の朝顔をご存じですか?

この時、二人は声を揃えた。「ええっ、変化? 奇形??」……変化朝顔とは何なのか、来月をお楽しみに!

「薔薇図」 勝川春好(二代) 文化12年〜文政2年(1815-19) 個人蔵
「薔薇図」 勝川春好(二代) 文化12年〜文政2年(1815-19) 個人蔵


構成/新川貴詩

行ってみよう! 江戸東京博物館

国技館など相撲の町として知られる両国に、東京都江戸東京博物館が開館したのは1993年のこと。菊竹清訓氏の設計による地上62メートルにもなる巨大な建物は高床式の独特の構造。常設展示室には、小山学長を驚嘆させた日本橋の大型模型をはじめ、中村座の複製、千両箱など見どころ満載だ。江戸東京博物館 開館20周年記念特別展「花開く 江戸の園芸」は、2013年7月30日(火)〜9月1日(日)開催。
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp

小山登美夫(こやま・とみお)

1963年、東京都生まれ。東京芸術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアートを経て、96年に独立し、小山登美夫ギャラリーを開始。奈良美智や村上隆らの展覧会を開催、現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花ら日本人アーティストとともに、海外のアートフェアへも積極的に参加。陶芸のアーティストも紹介する他、2013年秋には書の巨人、井上有一の展覧会も開催する予定。現在は東京とシンガポールでギャラリーを展開中。
http://www.tomiokoyamagallery.com

小山登美夫(こやま・とみお)

加瀬才子(かせさいこ)

日本で経済学を学んで金融関係に就職後、シカゴ美術館付属美術大学大学院(SAIC)から全額奨学金を支給され、2011年修士号(MFA)取得。MacDowell Colony Fellowship(2013)、ベップアートアワードグランプリ賞(2012)、 Vermont Studio Center Fellowship(2012)、John W. Kurtich Foundation Scholarship (2011)、その他受賞。近年の展覧会にLife-time Project(2012年10月大分)、Rapid Pulse(2012年6月米国シカゴ)、Territorial Testimonial(2012年5月米国ニューヨーク)、The Next Generation(2012年3月米国エバンストン)などがある。
http://saikokase.com

加瀬才子(かせさいこ)

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