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アートの視点
No.004
東京都写真美術館 「米田知子 暗なきところで逢えれば」
ゲスト:アーティスト 川久保ジョイさん
ギャラリストの小山登美夫さんを学長に迎え、さまざまな分野のアートを楽しむ学校「トーキョー・アート・ナビゲーション大学」。今回の授業では東京都写真美術館を訪れます。生徒役を務めるゲスト・アーティストの川久保ジョイさんとともに、まずは7月20日から9月23日まで開催されている「米田知子 暗なきところで逢えれば」の会場へ。物や場所が持つ記憶や歴史を写真の背景に投影する、米田知子さんの世界を探ります。
撮影:林道子 作品図版提供:東京都写真美術館

作品のタイトルを知ると、見えてくるものがある

小山学長とゲスト・アーティストの川久保ジョイさんは、東京都写真美術館にやってきた。お目当てのひとつは、米田知子さんの個展「暗なきところで逢えれば」だ。

小山 この題名、何て読むんだろう? 「くらなき」?

川久保 いやあ小山さん、「あんなき」じゃないですか?

広報担当者 「やみなき」です……。

小山・川久保 えー、読めないよー!

気を取り直して、二人は展示室へと向かった。学芸員の藤村里美さんが迎えてくれた。

藤村 この個展の企画が決まったのは2年前のこと。当時、大半の人々が「この先、日本はどうなるんだろう?」と不安に思っていた頃でした。そこで、外から見た日本や、日本やアジアの近代化をテーマに作品を選ぶ方針を立てました。

小山 米田さんの個展、久しぶりですよね。

藤村 美術館では、原美術館以来5年ぶりですね。本展は、8つの写真作品シリーズと映像作品で構成されていて、まずは「Scene」シリーズから始まります。たとえば、この写真、青空がきれいな風景写真に見えますが、タイトルを知ると、見えないものが見えてきそう。題名は《道-サイパン島在留邦人玉砕があった崖に続く道》と言います。

川久保 米田さんの写真は視覚的にとても面白いけど、背景が少しずつ明らかにされていく点にも引き込まれます。

小山 普通、写真は撮りたいと思ったきに撮るもの。でも米田さんは、リサーチにリサーチを重ねて、ドキュメント映画みたいに、写真によって歴史を記録するんですね。

藤村 米田さんはもともとジャーナリズムを勉強しようと留学しましたが、文章より写真のほうが思いを伝えやすいと写真を選んだんですよ。

川久保 ジャーナリズムは声高々と伝えるけど、米田さんの場合、ささやきなんですね。でも、叫ぶよりも強い印象を受けます。

「Scene」より  道−サイパン島在留邦人玉砕があった崖に続く道  2003年
「Scene」より 道−サイパン島在留邦人玉砕があった崖に続く道 2003年


「めがね」シリーズが復活!

藤村 こちらは「見えるものと見えないもののあいだ」、通称「めがね」シリーズです。

小山 あっ、安部公房だ、めがねの新作ですね。こっちは谷崎潤一郎だ。

藤村 このシリーズは、米田さん本人はコンプリートしたつもりだったんですが、「新作、撮りませんか〜?」とそそのかして撮っていただきました。

小山 安部公房、字、ヘタ! でも、几帳面な性格が出てますね。

藤村 安部さん、すごい乱視で。ピントがなかなか合わなくて、米田さん、撮影に苦労なさってましたね。それから谷崎の原稿、これ実は松子夫人へ宛てたラブレターなんですよ。

川久保 原稿用紙にラブレターを書くとは!

小山 谷崎特製の原稿用紙があるんだよね。しかも、墨で書いてるのが、いい感じ。

「見えるものと見えないもののあいだ」は、作家たちがかけていためがねのレンズを通し、ゆかりの文書や手紙を撮影したシリーズ
「見えるものと見えないもののあいだ」は、作家たちがかけていためがねのレンズを通し、ゆかりの文書や手紙を撮影したシリーズ

「見えるものと見えないもののあいだ」より 谷崎潤一郎の眼鏡−松子夫人への手紙を見る 1999年
「見えるものと見えないもののあいだ」より
谷崎潤一郎の眼鏡−松子夫人への手紙を見る 1999年


これまでにないエモーショナルなシリーズ

藤村 そしてこちらは、シリーズ「積雲」です。東日本大震災後の平和記念日の広島や終戦記念日の靖国神社、それに一般参賀の皇居や避難区域に指定された福島の飯舘村など、日本各地で撮影したものです。

川久保 トーキョーワンダーサイトのレジデンス・プログラム滞在中の半年間で撮ったんですよね。

小山 これまでの米田さんとは、すごく変わった感じがしますね。エモーショナルに撮ってる。そこがいい。

川久保 そうですね、情緒的というより感情的な写真ですよね。普段は冷静な米田さんにとって、これまでなかったタイプのシリーズだと思います。

小山 「Scene」シリーズの方法があるからこそ、この「積雲」も生きる。で、このシリーズは写真美術館のコレクションですか?

藤村 はい。

小山 すごいっ! こういう作品が美術館に残るのは有意義なこと。

藤村 ええ、美術と震災がどう関わったか、積極的に残していきたいと考えています。

学芸員の藤村里美さんに作品を解説していただいた
学芸員の藤村里美さんに作品を解説していただいた

「積雲」より  馬・避難した飯舘村・福島 2011年
「積雲」より 馬・避難した飯舘村・福島 2011年

このように米田知子さんの個展をじっくりと味わった小山学長と川久保ジョイさんは、次にコレクション展へと向かった。その模様は、来月に!


構成/新川貴詩

もっと知りたい! 東京都写真美術館

1995年に開館した、日本で初めての写真と映像の専門美術館。国内外の作家の作品2,9000点以上を収蔵する。1階のホールには、美術館には珍しい映像作品の上映施設があり、9月21日から10月11日は、ドキュメンタリー映画「もったいない! 」 を上映。世界で生産される食料の3〜5割にあたる約20億トンが廃棄されている驚愕の事実を追いかけるドキュメンタリー映画。写真の展覧会と合わせて楽しみたい。http://www.syabi.com

小山登美夫(こやま・とみお)

1963年、東京都生まれ。東京芸術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアートを経て、96年に独立し、小山登美夫ギャラリーを開始。奈良美智や村上隆らの展覧会を開催、現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花ら日本人アーティストとともに、海外のアートフェアへも積極的に参加。最近の展覧会では書の巨人、井上有一展を9月28日まで開催中(渋谷ヒカリエ内の8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Galleryでは10月7日まで)。その後10月9日から21日までは、陶芸作家吉村昌也の「素白(しろ)と玄黒(くろ)」展を開催。現在は東京とシンガポールでギャラリーを展開中。
http://www.tomiokoyamagallery.com

小山登美夫(こやま・とみお)

川久保ジョイ(かわくぼ・じょい)

1979年、スペイン・トレド市生まれ。18歳までスペインに滞在し、2003年、筑波大学人間学部卒業。05年に同大大学院を中退し、金融業界に就職、トレーダーを務め、2年後に退職、制作活動を開始。主な個展に「零像 - Infininte vision」(13年、Tokyoarts Gallery、東京)、「みえない Beyond the horizon」(13年、西武渋谷オルタナティブスペース)、「The Colossus drive and the black sun」(12年、hpgrp GALLERY東京)など多数。
http://www.yoikawakubo.com

川久保ジョイ(かわくぼ・じょい)

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