東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
HOME トピックス 展覧会・イベント情報 美術館・劇場・活動スペース アーティストファイル アート作品ランキング コラム 支援制度・コンテスト情報
トップ > アートの視点
 
アートの視点
No.006
東京都美術館 「ターナー展」前篇
ゲスト:アーティスト まつなみゴリラオブゴリラさん
ギャラリストの小山登美夫さんを学長に迎え、さまざまな分野のアートを楽しむ「トーキョー・アート・ナビゲーション大学」。今月から2回にわたって、東京都美術館で開催中の「ターナー展」を取り上げます。ゲスト・アーティストは筋肉をテーマに作品を発表する、まつなみゴリラオブゴリラさん。「床屋のせがれで趣味が魚釣り」、親しみやすいターナーの人物像をめぐって、話は盛り上がります!
撮影:林道子

やっぱり気になるその名前

よく晴れた秋の日、小山学長とゲスト・アーティストのまつなみゴリラオブゴリラさんは、上野公園の中に位置する東京都美術館にやってきた。

小山 いきなりだけど、何なの、その名前?

オブゴリラ 強そうな名前がいいなあと思ってつけました!

小山 わははっ! いいなあ、そのセンス!

東京都美術館は1926年にオープン。上野公園の隣にある東京藝術大学に通っていた小山学長にとっては、思い出深いミュージアムだ。

小山 うわあ、きれいになったなあ。去年、リニューアルオープンしてから、実はここに来るのは初めて。ずいぶんカラフルになったんだね。設計した前川國男の空間をちゃんと活かして改装されてて、いいね。

東京都美術館学芸員の小林明子さんにターナー展について聞いた
東京都美術館学芸員の小林明子さんにターナー展について聞いた


早熟の才能

この日の目当ては、「ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master」。同館学芸員の小林明子さんに解説をお願いした。

小林 本展では、ターナーの生涯と作風の変遷をたどることができます。当初ターナーは、イギリス各地の風景を水彩で描いてました。

小山 うわっ、12歳でこんな絵を描いてたの!

オブゴリラ すごい! いまで言えば小学校6年生で、こういう絵を描いていたとは!

小山 (解説パネルを読んで)へえー、コベントガーデン(ロンドンの中心部)の床屋のせがれなんだ。日本で言えば、江戸っ子の髪結い屋のせがれみたいなもんだね。違うか。

オブゴリラ なんだか親近感がわいてきますね。しかも、ターナーは、お母さん譲りの鼻がコンプレックスだったとか。

小山 ターナーのお父さんって、店でターナーの絵を一枚数シリングで売ってたんだ。

オブゴリラ えげつない父親ですね。

小山 で、前にテート美術館のターナー・コレクションを見たけど、ほとんど油画だったから、水彩画がとても新鮮。

小林 ええ、ターナーは水彩にこだわり、生涯にわたって自然の風景を描いてきました。ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(英国王立美術院)の中では油彩画が主流で、絵の主題も神話や歴史がもてはやされていましたが、ターナーはアカデミーで活動しながらも、独自のジャンルを切り開いたんですよ。

《ターナーの自画像(W. ホウル[子]による版画)》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014
《ターナーの自画像(W. ホウル[子]による版画)》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

小山 この絵もすごい。写真みたいだよね。コピーして転写したみたい。

小林 ターナーが23歳の時の絵で、《バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨》といいます。

《バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨)》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

《バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨)》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

《バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨)》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

オブゴリラ 23歳! もう、ほとんど完成されてますね。

小山 色がきれいだよね。とくに黄色がきれい。

小林 ターナーは緑が嫌いだったみたいですね。絵によって使ってはいますけど。

オブゴリラ ある絵で、やしの木に緑を使うのが嫌で、黄色を使って描いたらお客さんから責められたというエピソードがありますよね。


ターナーの商才

小山 あっ、この絵もいいなあ。

小林 《イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェント(摂政王太子)の誕生日に》です。依頼されて描いたものではなく、まず描いて、それから売り込みにいったそうです。

《イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェントの誕生日》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

《イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェントの誕生日》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

《イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェントの誕生日》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

小山 タイトルを聞くと、魂胆がバレバレですよね。

小林 野心あふれるターナーです(苦笑)。

小山 商売人だよね。やっぱり、子どもの頃から絵を売ってた人は違う。

小林 なお、丘の下にはテムズ川が流れています。

オブゴリラ ターナーは魚釣りが趣味だと聞きました。

小山 へえー、きっと普通の人だったんだろうね。

オブゴリラ 床屋のせがれで趣味が魚釣り。なんか、親近感が涌きますね。

小山 そうだね。

オブゴリラ あの、これ、何ですか? 右側の木に、何か赤いものがぶら下がってますけど、布かなあ?

小林 よく聞かれるんですけど、はっきりしたことがわからなくて……。

小山 (すたすた歩いて行って)あっ、ターナーのスケッチだ。こんなに丁寧に描き込んでるんだ!

オブゴリラ スケッチでこのレベル! ほとんど作品も同然ですよ。

小山 これ、一枚一枚切って売ったら、高いよね!

小山学長は、ターナーと負けず劣らず商売人ぶりを発揮した。そして、ターナー展はまだまだ続く。来月もお楽しみに!


構成/新川貴詩

もっと知りたい! 東京都美術館

1926年に開館した歴史ある美術館。全面改修を経て、2012年の6月に全館リニューアルオープンした。アート・コミュニケーション事業なども始まり、より身近な美術館として多くの人の「アートへの入口」となっている。世界一のターナー・コレクションがやって来た「ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master」は2013年10月8日〜12月18日まで。混雑が予想されるが、平日の午後3時以降と毎週金曜日の夜間開館の時間帯は、比較的ゆったりと観ることができるのでお勧めだ。http://www.tobikan.jp

小山登美夫(こやま・とみお)

1963年、東京都生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアートを経て、96年に独立し、小山登美夫ギャラリーを開始。奈良美智や村上隆らの展覧会を開催、現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花ら日本人アーティストとともに、海外のアートフェアへも積極的に参加。最近の展覧会では、アルゼンチン生まれでロンドン在住のヴァルダ・カイヴァーノ展(12月7日まで)、カリフォルニア在住の陶芸家アダム・シルヴァーマン展(渋谷ヒカリエ内の8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery、11月13日〜12月2日)を開催。現在は東京とシンガポールでギャラリーを展開中。
http://www.tomiokoyamagallery.com

小山登美夫(こやま・とみお)

まつなみゴリラオブゴリラ

1985年生まれ。高校卒業後、東京消防庁で消防士を務める。その後、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業。株式会社バンダイで企画開発に携わる。第4回ノート展審査員賞(水野学選)、多摩美術大学卒業制作優秀作品選出、ポコラート全国公募展vol.3入選と、数々の受賞に輝く。また、トーキョーワンダーウォール2013でトーキョーワンダーウォール賞を受賞し、12月5日〜26日、ワンダーウォール都庁(東京都庁第一本庁舎3階と都議会議事堂を結ぶ南側空中歩廊)にて個展が開催される。
http://matsunamigog.com/

まつなみゴリラオブゴリラ

創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
美術館・博物館の収蔵作品2万点以上の
デジタルアーカイブ
東京・ミュージアム ぐるっとパス
詳しくはこちら