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アートの視点
No.007
東京都美術館 「ターナー展」後篇
ゲスト:アーティスト まつなみゴリラオブゴリラさん
東京でさまざまなアートを楽しみ方を学ぶアートの学校。学長の小山登美夫さんと、生徒のまつなみゴリラオブゴリラさんは、先月に引き続き、東京都美術館で「ターナー展」を鑑賞中。同館学芸員の小林明子さんの解説を聞きながら、ターナー独特の輪郭のない茫洋としたスタイルの秘密に迫ります。
撮影:林道子

画面のすみずみまで緻密に描く

小山学長とゲスト・アーティストのまつなみゴリラオブゴリラさんは、東京都美術館で「ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master」を鑑賞し、圧倒的な画力に見事にハマった。

東京都美術館学芸員の小林明子さんの解説を聞く
東京都美術館学芸員の小林明子さんの解説を聞く

《ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014
《ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

小林 こちらの《ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ》は、ターナーが初めてのイタリア旅行を機に描いた一作です。

オブゴリラ ターナーは旅好きで、生涯で30回以上も旅してるんですよね。

小山 うわー、でっけえ。しかも、こんなに大きい(177.2cm×335.3cm)のに、びっしり細かく描かれていてすごい。

オブゴリラ よく描きますよね。ずっと見て描いたんでしょうねぇ。

小山 だって、当時、写真がまだないんだもん。写真術発明以前の精密描写には、ほんと執念を感じる。

オブゴリラ ターナーは目もいいですよね。

小山 だいたい、人間の目にこんな風に見えるはずがない。画面のすみずみにまでピントが入ってる。こういうディテールの細かい絵は、スケッチをコラージュして描いたんですか?

小林 ええ、そうだと思います。この絵では、複数の遠近法が組み合わされていますしね。そして、横長の構図に合うパノラマのような描き方となっています。

小山 建物もほんと丁寧に描いてますよね。

小林 若い頃、ターナーは建築技師の仕事を手伝ってたんです。建物を緻密に描けるのは、その頃に身につけた知識やスキルのおかげでしょうね。


ターナーが描いた自然

小林 では、晩年の頃の作品を紹介しましょう。こちらは《荒れた海とイルカ》で、65歳の頃の作品です。

オブゴリラ ターナーって、初期の頃から自然の猛威を描いてきましたよね。しかも、船のマストに縛りつけになって、半日もかけて嵐を体感したことがあるとか。ぼくは消防士だったんで、共感できるところがあります。

小山 ええっ、消防士だったの!?

オブゴリラ はい、1年で辞めましたけどね

小山 で、タイトルにイルカとあるけど、イルカ、どこ? いないよ。……イルカ、いるか?

《荒れた海とイルカ》のイルカを探す
《荒れた海とイルカ》のイルカを探す

オブゴリラ (右下のあたりを指して)これじゃないですかねえ?

小林 たぶん、それじゃないかと私も思うんですけど、はっきりとはわかっていません。テート美術館の館長ですら正確にはわからないと言ってたくらいですから。

小山&オブゴリラ へえー、テートの館長さえ知らないんだ!


未完? 形のない世界

小林 そしてこちらが、同じ時期に描かれた《湖に沈む夕陽》です。

小山 全然、形らしきものがない。

オブゴリラ 溶けてきましたねえ。

《湖に沈む夕陽》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014
《湖に沈む夕陽》 テート美術館蔵 (C)Tate 2013-2014

小山 ターナーはこれまで細かく描いていたのに、そうじゃなくなったのは、どうしてなんですか?

小林 ぼんやりとした世界に行き着いたわけではないと思います。この時期の作品は未発表の作品が多く、まだ完成されていなくて、描き足すつもりだったのかもしれません。

「ターナー展」を堪能した二人は、上野公園内のカフェと向かった。まつなみゴリラオブゴリラさんは、小山学長に自作を見せた。筋肉が肥大化したイラストレーションをはじめ、バルセロナのサグラダ・ファミリアやパリの凱旋門を訪ねて実行する「世界的名建築に頭突き」シリーズなど、小山学長は大笑いしながら作品をじっくりと見た。また、12月に控えたまつなみゴリラオブゴリラさんの個展(プロフィール欄参照)について、展示方法のアドバイスも話題にのぼった。

まつなみゴリラオブゴリラ 《ファンシーマッスル》 2009年 マーメイド紙にアクリル絵具
まつなみゴリラオブゴリラ 《ファンシーマッスル》 2009年 マーメイド紙にアクリル絵具

まつなみゴリラオブゴリラ 《首長マッチョ族》 2013年 クラフト紙に鉛筆
まつなみゴリラオブゴリラ 《首長マッチョ族》 2013年 クラフト紙に鉛筆

小山 以前、パルコが主催していた公募展「日本グラフィック展」が続いていたら、もっと注目されるかもしれない絵だよね。で、12月の個展は、展示次第で次の仕事が来るか来ないか、決まる。だから、展示はきれいに。そして、都庁の人たちを元気にさせるんだ!

上野公園のカフェで、ポートフォリオを見る
上野公園のカフェで、ポートフォリオを見る


構成/新川貴詩

もっと知りたい! 東京都美術館

1926年に開館した歴史ある美術館。全面改修を経て、2012年の6月に全館リニューアルオープンした。新たに始まったアート・コミュニケーション事業など、より身近な美術館として「アートへの入口」となっている。世界一のターナー・コレクションがやって来た「ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master」は2013年12月18日まで。混雑が予想されるが、平日の午後3時以降や毎週金曜日の夜間開館の時間帯は比較的ゆっくりと観ることができる。http://www.tobikan.jp

小山登美夫(こやま・とみお)

1963年、東京都生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアートを経て、96年に独立し、小山登美夫ギャラリーを開始。奈良美智や村上隆らの展覧会を開催、現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花ら日本人アーティストとともに、海外のアートフェアへも積極的に参加。最近の展覧会では、最近の展覧会は、清澄の小山登美夫ギャラリーにて日高理恵子展(12月14日〜2014年1月25日)、渋谷ヒカリエの8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Galleryでは三宅信太郎展「Sitting on a Chair, Eating Bread」(12月18日〜2014年1月13日)など。現在は東京とシンガポールでギャラリーを展開中。
http://www.tomiokoyamagallery.com

小山登美夫(こやま・とみお)

まつなみゴリラオブゴリラ

1985年生まれ。高校卒業後、東京消防庁で消防士を務める。その後、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業。株式会社バンダイで企画開発に携わる。第4回ノート展審査員賞(水野学選)、多摩美術大学卒業制作優秀作品選出、ポコラート全国公募展vol.3入選と、数々の受賞に輝く。また、トーキョーワンダーウォール2013でトーキョーワンダーウォール賞を受賞し、12月5日〜26日、ワンダーウォール都庁(東京都庁第一本庁舎3階と都議会議事堂を結ぶ南側空中歩廊)にて個展が開催される。
http://matsunamigog.com/

まつなみゴリラオブゴリラ

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