東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
HOME トピックス 展覧会・イベント情報 美術館・劇場・活動スペース アーティストファイル アート作品ランキング コラム 支援制度・コンテスト情報
トップ > アートの視点
 
アートの視点
No.008
江戸東京たてもの園 近代建築を楽しむ
ゲスト:アーティスト 山本良浩さん
アートの楽しみ方を発見する学校「トーキョー・アート・ナビゲーション大学」。今回の授業のテーマは「建築」です。東京・小金井にある江戸東京たてもの園を訪ねた学長の小山登美夫さんと、生徒の山本良浩さん。歴史的な建築が点在する、約7ヘクタールの広大な園内を見学します。
撮影:林道子

ビジターセンターでは民俗資料の展示が

冬の寒い日、小山登美夫学長とゲスト・アーティストの山本良浩さんは、都立小金井公園の中にある江戸東京たてもの園にやってきた。まずは、園の入口となるビジターセンター(旧光華殿)へ。学芸員の松井かおるさんに案内をお願いした。

学芸員の松井かおるさんの話を聞きながら園内を散策した
学芸員の松井かおるさんの話を聞きながら園内を散策した

松井 ビジターセンターの建物はもともと、1940(昭和15)年の紀元二千六百年記念式典のために皇居前広場に建てられました。その翌年にここに移築され、戦後すぐは学習院中等科の施設として使われ、今上天皇も中学生活を小金井で過ごされたのです。その後、1954(昭和29)年1月、小金井公園の開園にあわせて武蔵野郷土館というミュージアムがオープンしました。そして1993(平成5)年、江戸東京たてもの園の開館にあわせて改修されたんです。

小山 へー、戦前の建物なんだ。

松井 そのなごりが今も見られますよ。また、この建物では郷土館時代に収集した民俗資料も展示しています。

小山 あっ、わらの人形、なんかかわいい。

松井 わら馬です。お盆の前に先祖の霊を迎えたり、穀物の豊作祈願の行事に使われていました。

3月2日まで開催の収蔵品展「武蔵野の歴史と民俗」より
3月2日まで開催の収蔵品展「武蔵野の歴史と民俗」より

そして一行は屋外へ。約7ヘクタールの敷地には、モダニズム住宅や農家、店舗など、さまざまな時代の30棟の復元建造物が並ぶ。


前川國男邸と小出邸

松井 こちらが「前川國男邸」です。

小山 表札、かっこいいなあ。でも、玄関、狭いっ!

松井 従来の、「玄関は立派につくるもの」という考え方を否定しているのです。

山本 当時、暖房はどうしていたんですか?

松井 スチームですね。建てられた1942年、建築資材の統制があった時代ですから、延床面積を抑えて設計されています。そして、こちらが寝室です。

小山 へー、洋間なのに障子なんだ。収納も機能的ですね。

前川國男邸

前川國男邸

前川國男邸

松井 次に行きましょう。「小出邸」です。

小山 堀口捨己氏の設計なんだ!

松井 はい、堀口氏の処女作です。こちらは、園内にあるモダニズム住宅の中では和室の多い家ですね。

山本 2階にあがると、和室が2間つながってて、なんか旅館みたいですね。部屋の奥に板の間もありますし。

小山 うんうん、板の間にソファがあったりね。前川國男邸はいかにも前川っぽかったけど、こちらはあまり堀口氏らしくないね。

山本 和室が多いせいでしょうかねえ。でも、和のディテールとモダニズムが混じっていて面白い。このあいだ行った下田の旅館に雰囲気がそっくり。

小出邸

小出邸

小出邸


高橋是清邸

茅葺き屋根の堂々とした農家や、戦前の写真館などを巡り、一行は「高橋是清邸」を訪問した。

小山 海外での生活が長かったのに、ほとんど和室なんですね。

松井 写真を見ると朝食はパンとコーヒーなんですが、部屋は和室なんですよ。

小山 天井も高くて気持ちいい空間だなあ。それに、全体的に趣味がいい。

山本 天井が高いのは重要ですよね。

松井 それも海外暮らしのせいかもしれません。そして1階、2階の廊下には明治時代のガラス戸がそのまま使われています。

山本 きれいですねえ。

小山 うん、窓から見える紅葉もきれい。庭も当時のものを復元したんですか?

松井 ええ、当時とは規模が違いますが、写真や資料に基づいて造成しました。

小山 すごい! どの建物も移築して復元するだけでも大変そうなのに。

山本 ええ、たとえばモルタルは剥がせませんから、この場で復元するしかないでしょうねえ。

小山 でも、園内には桜や梅など植物が豊富で、いろんな季節に来てみたいなあ。

山本 モダニズム住宅もあれば農家もあって楽しめますよね。

小山 外観だけでなく、中もきちんとしているから、ここで暮らしてみたら…という想像もしてしまうね。

高橋是清邸のなかから、庭を眺める
高橋是清邸のなかから、庭を眺める

その後、小山学長は山本さんのポートフォリオを見始めた。山本さんは映像作品を手がけ、2011年には第15回文化庁メディア芸術祭のアート部門で大賞を受賞。ページをめくっていると、ふと、小山学長の手が止まった。

小山 あっ、これ見たことある! 丸の内の公募展に出してたよね? あの時のアーティストだったのかあ! 覚えてる覚えてる、映像のクオリティ高かったよね。
今度、たてもの園を借りてみれば? ロケするには、最高のところだよ。

Que voz feio(醜い声) 2011 © 山本良浩

Que voz feio(醜い声) 2011 © 山本良浩
Que voz feio(醜い声) 2011 © 山本良浩

Untitled  2013 © 山本良浩
Untitled 2013 © 山本良浩


構成/新川貴詩

もっと知りたい! 江戸東京たてもの園

現地保存が不可能な文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示する野外博物館。約7ヘクタールの敷地には、江戸時代から昭和初期までの復元建造物が建ち並ぶ。3月27日〜30日には、開園20周年・30棟完成を記念した「たてもの園フェスティバル」が開催される。
http://tatemonoen.jp

小山登美夫(こやま・とみお)

1963年、東京都生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアートを経て、96年に独立し、小山登美夫ギャラリーを開始。奈良美智や村上隆らの展覧会を開催、現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花ら日本人アーティストとともに、海外のアートフェアへも積極的に参加。最近の展覧会では、渋谷ヒカリエ内の8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Galleryにて、1月27日まで「佐藤翠展 Fascinated Times」を開催中。続く展覧会に「ベンジャミン・バトラー展 Selected Trees 」(1月29日〜2月17日)、「川島秀明展 Come Out」(2月19日〜3月17日)など。
http://www.tomiokoyamagallery.com

小山登美夫(こやま・とみお)

山本良浩(やまもと・よしひろ)

1981年、茨城県生まれ。2012年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。主なグループ展に「イメージフォーラム・フェスティバル」(2011、新宿パークタワーホール)、「第15回ジャパン・メディアアート・フェスティバル」(2012年・新国立美術館)、アート・アワード・トーキョー丸の内(2012、行幸地下ギャラリー)などがある。イメージフォーラムフェスティバル2011 ヤングパースペクティブ部門ノミネート、 第15回文化庁メディア芸術祭アート部門大賞などを受賞。トーキョーワンダーサイト青山:クリエーター・イン・レジデンスに滞在中。
http://yoshihiroyamamoto.com

山本良浩(やまもと・よしひろ)

創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
美術館・博物館の収蔵作品2万点以上の
デジタルアーカイブ
東京・ミュージアム ぐるっとパス
詳しくはこちら