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アートのスペシャリスト
No.007
色の魅力、絵具そのものの面白さを伝えたい
バニーコルアート リキテックス・ブランドマネージャー 水林孝文さん
リキテックス、ウィンザー&ニュートンなど、世界各国の最も優れた画材の提供・輸入販売などを行っている会社、バニーコルアート株式会社(以下バニーコルアート)。アーティストにとって画材は必要不可欠な存在であり、なかでも新しい絵具は、表現を広げる手助けにもなります。アクリル絵具の代名詞、リキテックスのブランドマネージャーを務める水林孝文さんに、絵具の開発の仕事についてお聞きしました。

色を、“手に取って見える物質に置きかえるしくみ”に興味があった

――絵具にかかわる仕事を選んだ経緯を教えてください。

大学で美術教育と油彩を学ぶなかで、表現よりも、絵具の素材そのものや色の魅力に興味を持ったんです。絵具は、「顔料」と呼ばれる色の粉と、それを画面に定着させるために接着剤の役割をする「展色材」からできています。水彩絵具は顔料とアラビアゴム、油絵具は顔料と乾性油、アクリル絵具は顔料とアクリル樹脂というように、色の素と素材の組み合わせで性質が変わります。水彩絵具なら水が乾いて蒸発して画面をつくり、油絵具なら油絵具そのものが空気中の酸素と結びついて画面に定着して固まっていく。色がつくられるしくみそのものが面白くて、絵具をつくる会社に就職しました。

――現在は、どのような仕事をされているのですか?

バニーコルアートは、リキテックスを日本で販売するために1969年に設立されたバニーコーポレーションと、2002年にイギリス・ロンドンに本社を置くコルアート社との合弁で設立した会社で、世界で使われている絵具の輸入と、国内商品の製造を行っています。各ブランドのチームがあり、私はリキテックスのブランドマネージャーを務めています。年間の販売目標とプロモーション計画を立てて、それに沿って開発部門とセールス&マーケティング部門をはじめとする社内各部署を調整しながら、ブランドとしてまとめていくのが仕事です。


携帯電話とのコラボレーションで新しい絵具を開発

携帯電話と合わせて、絵具を開発。パールの粉末を混ぜた、鮮やかなパールカラーのアクリル絵具「リキテックス ジェルパール」
携帯電話と合わせて、絵具を開発。パールの粉末を混ぜた、鮮やかなパールカラーのアクリル絵具「リキテックス ジェルパール」

――絵具の開発の流れについて教えてください。まず、どのように新しい絵具の開発を決めるのですか?

ひとつは、市場調査を行い、ユーザーの要望に合った商品を開発する方法があります。アートフェアなどのイベントや、大学や専門学校などで開催するリキテックスの講習会でアンケートをとり、直接ユーザーの声を聞くようにしています。もうひとつは、他社とのコラボレーションで、例えば昨年、富士通と、携帯電話の本体の色に合わせてリキテックスの絵具の色を開発するという試みを行いました。

――これは、普段、絵具を手にしない方にもリキテックスの存在を知ってもらうきっかけになりますね。とてもきれいな色ですが、どのように決めたのでしょうか?

携帯電話の7色が先にあり、その7色を含む18色の絵具を開発しました。若手社員が開発の中心となり、リキテックスに今までになかった色をつくることを目指しました。絵具の色数は12色から18色、24色と6色ずつ足したセットを基準に、シリーズとしてのボリューム感や販売数などから決めます。色数を決めたら、マンセル色相環に合わせて偏りのないようバランスを見ながら色を選定します。

――ビビッドなパールカラーは、ユーザーの要望も反映しているようにも見えますね。

はい。「パールカラーの色をつくってほしい」という声も確かにありました。「同じ色でも微妙な色の差でバリエーションがほしい」という要望も聞いていましたので、ブルーグリーンのような色も入れています。

――実際に制作してみてどうでしたか?

少量でテスト製造をして、色味のバランスや塗った時の塗り心地、乾燥した時の強度などを見るのですが、最初は、顔料の粒の大きさや性質によって粘りに違いが出てしまうこともあります。あるものは液体のようにさらさらし、あるものは粘りが強いといったことがないよう、粘度を均一にしなければなりません。また、今回は携帯電話に塗装された色を絵具で再現しなければならなかったのですが、特に青と薄いピンクが難しかったと開発チームから聞いています。また、ジェルパールという名前に合わせて、それぞれの質感を合わせるのにも苦労しました。不透明水彩絵具の一種であるガッシュのシリーズなので、つや消しにするかしないかという議論もありました。


使い手の声を聞きながら新しい絵具を。そして、誰でも手軽に使える絵具に

――現在のブランドの目標を教えていただけますか?

昨年、カタカナの和文ロゴを作成し、ロゴの下に「あなたをアーティストにする」というブランドメッセージを発信しています。リキテックスを使えばアーティストになれる、アーティストはリキテックスを使っているという意味合いを込めています。美術を学び、アーティストを志す学生など、次世代のアーティストを中心に、アートにかかわるすべての人に使ってもらえるアクリル絵具を目指しています。

ビギナー向けの大容量で価格の手頃なベーシックス、アーティストにはプライム、イラストレーターには液体タイプのリキテックス リキッドやガッシュなど。メディウムも多種ある
ビギナー向けの大容量で価格の手頃なベーシックス、アーティストにはプライム、イラストレーターには液体タイプのリキテックス リキッドやガッシュなど。メディウムも多種ある

――リキテックスの歴史は長いので、プロからビギナーまで愛用者の幅は広そうですね。

日本で発売してから60年ほど経っていますので、70、80代のプロの方にも支持をいただいています。ユーザーの年代やテクニックの熟練度に合わせてラインナップを展開し、絵具の粘りといった使い心地でも幅広く対応しています。レギュラータイプは油絵具のような硬さで、筆のタッチを出したり、ナイフで盛り上げたりもできますし、乳液状のソフトタイプは平塗りに適しています。リキッドは色水のような液状で、紙など塗るものの質感を生かすことができます。

――メディウム(絵具などを固着させる媒材)も多数あり、いろいろなタッチやテクスチャーが出せますね。

細かいものを含めて40〜50種あります。ざらざらしたり、盛り上げたり、透明感を出したりと、表現の幅を広げられます。また、アクリル樹脂そのもの(グロスポリマーメディウム、ジェルメディウムなど)も販売していますので、自分で顔料を混ぜて絵具をつくることもできます。砂や小石を混ぜて自分の下地材を開発することもできますよ。

――この仕事で心がけていることは何でしょうか。

使い手は何が欲しいのか、常に気にしていますね。また、これからは、誰でも手軽に使えて、表現できる絵具をと思っています。アートや絵具をもっと楽しんでもらおうと、今年から、次世代のアーティストを生み出す、誰もが参加できるアートフェア「リキテックス アートプライズ2012」がスタートしました。こうした機会も、使い手の声を聞きながら新しい商品を開発するヒントにつながります。

「リキテックス アートプライズ2012」展示風景。グランプリの本田アヤノ、準グランプリのワタベテッサン、佐竹真紀子は、ロンドンのコルアート主催のギャラリー、及び六本木のバニーコルアート主催の「ギャラリー・トリニティ」で発表できる

「リキテックス アートプライズ2012」展示風景。グランプリの本田アヤノ、準グランプリのワタベテッサン、佐竹真紀子は、ロンドンのコルアート主催のギャラリー、及び六本木のバニーコルアート主催の「ギャラリー・トリニティ」で発表できる

「リキテックス アートプライズ2012」展示風景。グランプリの本田アヤノ、準グランプリのワタベテッサン、佐竹真紀子は、ロンドンのコルアート主催のギャラリー、及び六本木のバニーコルアート主催の「ギャラリー・トリニティ」で発表できる

――この仕事をしたい人にアドバイスをお願いします。

もともとは絵を描いて表現することが好きでしたが、今は表現を支える立場で仕事をしています。描いたりつくったりするだけではなく、アートにかかわる仕事はたくさんあると思います。まずは自分の好きなこと、極めたことを強味に挑戦してみることが大切だと思います。


インタビュー・文/白坂ゆり

水林孝文(みずばやし・たかふみ)

1983年北海道生まれ。北海道教育大学芸術文化課程油彩専攻卒業。2006年、バニーコルアート株式会社入社。セールス&マーケティング部アシスタントチーフ、リキテックス・ブランドマネージャー。プロジェクトマネージャーを務めた企画に、最高級アクリル絵具、リキテックス プライムの発売(2010年)、富士通製携帯電話F001 とのコラボレーション商品、リキテックス ジェルパールの発売(2011年)、新アートフェア/公募展「リキテックス アートプライズ2012」の開催(2012年)など。

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