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史上初の試み!? 狩野一信筆《五百羅漢図》一挙公開 後編
東京都江戸東京博物館

東京都江戸東京博物館で開催予定の特別展「五百羅漢―増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」は、今から約150年前の幕末期に活躍した絵師が、芝・増上寺に残した仏画100幅を一挙公開する初の展覧会です。今回展示予定の《五百羅漢図》は、高さ170cmを超える巨大な掛軸。全100幅で500人の羅漢が描かれるという空前絶後の大作です。ところが公開される機会が乏しく、《五百羅漢図》も本図を描いた狩野一信(1816-63)もいつしか忘れ去られてしまいました。前回に引き続き、知られざる絵師とその作品を紹介します。
 幕末の絵師、狩野一信

狩野一信 《五百羅漢図》 第55幅 「神通」(部分) 1854〜63 絹本着色 172.3×85.8cm 増上寺蔵
狩野一信 《五百羅漢図》 第55幅 「神通」(部分) 1854〜63 絹本着色 172.3×85.8cm 増上寺蔵

驚くべきボリュームの《五百羅漢図》を制作した狩野一信は、およそ200年前、町人文化が花開いた文化・文政期の江戸本所(現在の東京都墨田区)の骨董商の家に生まれました。幼い頃から絵を描くことが好きで、堤等琳派、四条派、土佐派、狩野派など諸派の絵師の門下となって腕を磨き、浅草寺に《五条橋の牛若丸・弁慶図》、成田山新勝寺に《雲龍図》《伎楽天図》《釈迦・文殊普賢・四天王・十大弟子図》《十六羅漢図》などを残しています。
一信の生きた時代は、天保の飢饉、ペリーの来航、安政の大地震、桜田門外の変、攘夷運動の活発化など、天災、開国、政治の混乱が続く幕末の動乱期でした。不安定な状況下では、庶民は神仏にすがるしかありません。そんな時に流行していたのが羅漢信仰で、仏師や絵師は“制作に打ち込むことで功徳がある”という考えから、各地で羅漢像を制作します。一信も地震や火事の経験があり、幼い頃から本所の五百羅漢寺(現在は目黒に移転)の羅漢像を目にしていたことなどが、《五百羅漢図》制作のきっかけのひとつになっていると考えられます。

 命懸けで制作された五百羅漢図

狩野一信 《五百羅漢図》 第82幅 「七難 震」 1854〜63 絹本着色 172.3×85.8cm 増上寺蔵
狩野一信 《五百羅漢図》 第82幅 「七難 震」 1854〜63 絹本着色 172.3×85.8cm 増上寺蔵

30代も後半に差しかかった一信はある日、江戸の大火で家を失い、一時期、増上寺の子院である源興院を仮住まいとしていました。この頃既に一信には、「府下未だ五百羅漢の全備せる者有るを見ず、吾必ず之を写して以て世に福せん」と《五百羅漢図》制作の構想があったようで、寺の住職に思いの丈を打ち明けたのでしょう。源興院の了瑩が《五百羅漢図》の造主となり、ここに一信最大の画業となる《五百羅漢図》制作がスタートします。
その後、高齢の了瑩の後を引き継いだ僧の亮迪とともに全国の羅漢図を見てまわり、“100幅セットの五百羅漢図”という前人未到の羅漢図制作に着手。一信38歳頃のことでした。それからひたすら描き続けること10年、96幅を手がけたところで一信は48歳の生涯を閉じます。これは毎月1幅を完成させたという驚くべきペースで、それを10年間も続けたということ。画に魂を持っていかれたと言っても過言ではなく、例えば幕末から明治に流行っていた生人形(まるで生きているかのような人形)の人形師も巨大な羅漢制作に力を入れ、途中で他界。完成された作品は、人形師の魂が乗り移っているかのごとくリアルだったという話もあります。一信の《五百羅漢図》の鬼気迫る筆致も、まさに命懸けの思いが凝縮されているからこそ成せる業だったのです。

 東京名所から知られざる存在に

2010年11月、増上寺で開催された一信と妻・妙安の法要(記者発表会)の様子。本堂に12幅掛けられた《五百羅漢図》は、明治期の羅漢堂で催されていた展示を彷彿とさせる。
2010年11月、増上寺で開催された一信と妻・妙安の法要(記者発表会)の様子。本堂に12幅掛けられた《五百羅漢図》は、明治期の羅漢堂で催されていた展示を彷彿とさせる。

《五百羅漢図》は一信逝去の2か月後、1863年11月に妻の妙安と弟子の一純によって完成されました。100幅全体を通して見ると、最も筆に勢いのある20幅台、充実の30〜60幅台、余白が目立つようになる80幅台、ほとんど弟子の手によるものではないかと推測される90幅台というように、羅漢図には一信最後の10年の変遷が克明に記されています。この入魂の大作は、妻の妙安が建立した羅漢堂で公開され、明治期までは東京名所のひとつとして多くに人に拝観されていました。ところが妙安が亡くなると公開の機会も減り、昭和期の第二次大戦で羅漢堂が消失。《五百羅漢図》は増上寺に保管されたまま、表舞台から姿を消してしまったのです。これまでも、1〜2点単位では展覧会に登場していた《五百羅漢図》ですが、一挙100幅同時公開は初の試みとなります。一人の絵師の命懸けの挑戦となった《五百羅漢図》の全貌を、この機会に是非ご高覧ください。

狩野一信 《五百羅漢図》 第57幅 「神通」(部分) 増上寺蔵
狩野一信 《五百羅漢図》 第57幅 「神通」(部分) 増上寺蔵

法然上人八百年御忌奉賛
特別展「五百羅漢―増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」

会期/3月15日(火)〜5月29日(日)
※開幕日が延期となりましたので、詳細は公式HPよりご確認ください
休館/月曜日(ただし3月21日、5月2日、5月16日は開館予定)、3月22日(火)
時間/9:30〜17:30(土曜日は19:30)
料金/一般1300円、大学・専門学校生1040円、65歳以上・高校・中学・小学生650円
会場/東京都江戸東京博物館1階展示室
交通/大江戸線両国駅A4出口より徒歩1分、JR両国駅西口より徒歩3分 他

http://500rakan.exhn.jp/

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