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東京ステージ
No.003
初めての街で終電を逃したら。一夜の出会いを描いたドラマ 『終電バイバイ』
映画・ドラマ制作会社「ROBOT」長谷川晴彦さん、清水健太さん、平田研也さん
主人公がとある駅で終電を逃してしまったら、どのように始発までの時間を過ごすのか。全10夜、主人公も出会う人も駅も毎回変わる1話完結のオムニバス・ドラマ『終電バイバイ』。2013年1月14日〜3月18日、毎週月曜24:20から放送され、じわじわと話題を呼びました。DVD-BOX発売にあたり、映画・ドラマ制作会社「ROBOT」のプロデューサー長谷川晴彦さん、映像クリエーターの清水健太さん、スクリーンライターの平田研也さんに撮影秘話や東京の新発見についてお聞きしました。
DVD-BOX「終電バイバイ」 2013年6月26日発売 発売元:TBS 販売元:アニプレックス (c)TBS

 聞いたことはあっても降りたことのない駅を舞台に

――オリジナリティーがあり、毎週楽しみなドラマでした。終電後の街を舞台にした物語というアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

長谷川 TBSの深夜枠「ドラマNEO」の企画会議で、監督の一人である清水から「ちょうど終電が出るくらいの時間に始まるから、終電を逃して朝を迎えるまでのドラマにしたらオンタイム感が出るんじゃないか」という提案があったんです。

左から長谷川晴彦さん、清水健太さん、平田研也さん
左から長谷川晴彦さん、清水健太さん、平田研也さん

清水 誰でも一度ぐらい終電を逃したことありますよね。1話完結で毎回違う駅、毎回違う人物で展開できれば、さまざまな人の共感や記憶と結びついて、視聴者のイメージがふくらむんじゃないかと思いました。渋谷駅や新宿駅のような誰もが知っている駅よりも、聞いたことはあるけれど、あまり足を延ばすことのない駅を入れようと決めて。初回の立川駅は、小金井出身の脚本家・岩井秀人さんの地元圏内で、都心から少しずれた都会感が表現できるという理由で決まったんです。そこから第2夜で秋葉原駅、第3夜が南千住というディープな方向に(笑)。

平田 その駅ならではの物語を見つけるまでが大変でしたね。僕は第3夜の南千住駅、第4夜の蒲田駅、第8夜の下北沢駅の脚本を書きましたが、どこから物語をつくったらいいのか、毎回試行錯誤していました。

第1夜 立川駅 物流会社社員、佐藤(濱田岳)は、ドロケイをしていた集団に巻き込まれる。毎回、謎の案内人(谷中敦)が語り部として登場。
第1夜 立川駅
物流会社社員、佐藤(濱田岳)は、ドロケイをしていた集団に巻き込まれる。毎回、謎の案内人(谷中敦)が語り部として登場。

長谷川 第1夜の立川で、事前に制作チームが街をリサーチして、脚本家や監督、スタッフなど皆で終電後の街を回ってみたら、真冬の深夜だったせいか、思い描いていたほどワクワクするものはなかったんです。それで「どういう人たちと出会うかを考えよう」「東京は地方からの移住者が多いけれど、古くから住んでいるような、街に根づいている人と出会ったら面白いよね」と話し合って。第1夜では、濱田岳さん演じる主人公が、パブリックアートと闘う男(古舘寛治)に遭遇します。第3夜の南千住では、橋本光二郎監督が足立区出身で、「山谷は安宿が多いから、外国人バックパッカーが増えて街のイメージが変わってきているんだよ」と思い出したことから。

平田 視聴者にとっても驚きになるんじゃないかと思って、フランス人女性と出会い、深夜に下町の観光スポットを回るという物語を書きました。

長谷川 外国人向けガイドブックを頼りに、鼠小僧の墓や『あしたのジョー』の泪橋など、日本人も知らないスポットを回るんですが、ドラマ版『アド街ック天国』をねらったところもありました。橋本監督が考えた「逆さツリー」(水面に映った東京スカイツリー)のシーンなど、ドラマを通して街の見え方が変わりましたね。

清水 僕らは仕事柄、情報にはわりと敏感なほうだと思っていたんですが、秋葉原や神田で「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム」(テーブルマスターが物語を案内するカードゲーム)が流行っていることなど、作品制作を通じて、東京にこんなところがあったんだと初めて知ることも多かったです。

第3夜 南千住駅 結婚式の帰り、正太(濱田岳)は、フランス人旅行者ソフィー(ノエミ)とジョエル(マチュー)の宿探しを手伝う。「ガイドブックに載っている場所を見たい」というソフィーにはある理由があった。

第3夜 南千住駅 結婚式の帰り、正太(濱田岳)は、フランス人旅行者ソフィー(ノエミ)とジョエル(マチュー)の宿探しを手伝う。「ガイドブックに載っている場所を見たい」というソフィーにはある理由があった。

第3夜 南千住駅
結婚式の帰り、正太(濱田岳)は、フランス人旅行者ソフィー(ノエミ)とジョエル(マチュー)の宿探しを手伝う。「ガイドブックに載っている場所を見たい」というソフィーにはある理由があった。

 ふだんは出会うことのない人たちが触れ合えたら

――濱田岳さんが毎回異なる主人公を演じ分けていて、引きこまれました。

長谷川 僕らは濱田さんしかありえないと思ってオファーしました。本当に終電を逃しそうですから(笑)。演技だけでなく、終電を逃しても誰かと接することができる、誰かを引き寄せそうな人柄でもありました。

清水 困った顔が魅力的で、幅広い年代やキャラクターを演じ分けられる希有な役者さんでしたので。

平田 第8夜の下北沢で、長谷川プロデューサーに「高校生役で書いて」と言われたのは驚きましたけど(笑)。

長谷川 最初は、北海道からの修学旅行生を引率する先生役だったんですけど、濱田さんの演じる高校生が見たくなりまして。映画『みなさん、さようなら』で小学生役を演じていらしたので。

平田 下北沢にしたのは、外での撮影のつらさがわかってきて、なるべく早く主人公を室内に入れたかったから(笑)。小劇場系の劇団に取材し、大きすぎたセットが劇場に入らなかった実話を聞いたので、大きくつくりすぎた象のセットをなんとか舞台に入れようとする話を書きました。

清水 大阪で注目の「劇団 子供鉅人」(げきだん こどもきょじん)が劇団員を演じてくれています。おかげで、徹夜で舞台の建て込みをして、そのまま初日を迎える臨場感が出ました。演劇で生きている人たちとあまり接する機会がなかったので、お互いの世界を知ることができたのもいい経験でした。深海魚は種によって住める深さが違い、深さが1メートル違えば一生出会うことはないそうです。なんだか東京もそれに似ている気がします。終電を逃すことで、ふだんは出会うことのない人々と何かを交換し合えたらいいなという思いもありました。

長谷川 第4話の蒲田には、平田と、長く住んでいる人に取材しました。古きよき東京の雰囲気があり、都心へのアクセスも便利だからか、若い人が街を出て行くことが少ないそうなんです。

平田 初めて行きましたが、地元愛が強かったので、商店街がご当地アイドルを応援している感じを出そうと。

清水 ツイッターなどで「自分の住んでいる街のあの場所が映っていてうれしかった」「今度この街へ来てください」といった反応が多くて、東京も意外と地元愛があるんだなと思いましたね。

第8夜 下北沢駅 北海道から修学旅行に来ていた高校生、英直輝(濱田岳)は、劇団「飛ぶ鳥を落とすカンパニー」(夏帆、劇団 子供鉅人ほか)の象のオブジェの搬入を手伝うことになり……。
第8夜 下北沢駅
北海道から修学旅行に来ていた高校生、英直輝(濱田岳)は、劇団「飛ぶ鳥を落とすカンパニー」(夏帆、劇団 子供鉅人ほか)の象のオブジェの搬入を手伝うことになり……。

第4夜 蒲田駅 サラリーマンの由紀雄(濱田岳)は、売出し中の地元アイドルユニットのメンバー、こずえ(小松彩夏)が泥酔しているのを見かけ……。
第4夜 蒲田駅
サラリーマンの由紀雄(濱田岳)は、売出し中の地元アイドルユニットのメンバー、こずえ(小松彩夏)が泥酔しているのを見かけ……。

 「何かあるかも」という気分にさせてくれる深夜の東京

――街中での撮影はどのように行われたんですか?

清水 深夜の街のシーンは、毎回、終電後の1時から5時まで撮影しました。12月〜1月の極寒期でしたが、太陽が昇るのが早いと撮影時間が短くなってしまうので、冬じゃないと厳しかったんですね。

長谷川 どの街も1時から4時までは眠っていて、4時過ぎから動き出すんです。自転車に乗ったおじさんがカメラの前を横切っても、始発に乗ろうと急いでいるから止められない(笑)。だから特に4時までは集中して撮影しました。

清水 日中に室内で撮影して、続いて深夜も。暴動が起きてもおかしくないほど過酷なスケジュールでした。その分、最終話の放送をスタッフ、キャストで見たときは感極まるものがありましたね。

平田 最終回の東京駅では、朝6時のクランクアップに、他の回に出演された役者さんまで駆けつけてくれて。

長谷川 放送時期の途中で岩井さんが岸田國士戯曲賞を受賞しましたし、波多野貴文さん、橋本光二郎さん、柴田大輔さんなど脂の乗った監督陣はじめスタッフに恵まれました。DVDは、キャストや撮影風景などなんと150分の特典映像付きです!

清水 「何かあるかも」という気分にさせてくれるのが、深夜の東京なんじゃないでしょうか。

長谷川 まだ描いていない街もありますし、面白くつくる方法もつかめたので、またチャンスがあるといいなと願っています。

インタビュー・文/白坂ゆり

長谷川晴彦(はせがわ・はるひこ)

1977年、東京都生まれ。プロデューサー。武蔵大学経済学部卒業後、2000年に(株)ROBOTに入社。映画部所属。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『SP 警視庁警備部警護課第四係』シリーズなどの制作を経て、2011年より現職。『終電バイバイ』は、連続ドラマ初プロデュース作品となる。

長谷川晴彦

清水健太 (しみず・けんた)

1983年、東京都生まれ。映像クリエーター。明治大学政治経済学部卒業後、2006年に(株)ROBOTに入社。企業のグローバル広告、NHKアニメ『ふしぎのヤッポ島』などさまざまな映像の企画・演出・脚本を手がける。ほかにiPhoneアプリやフリーペーパーのプロデュースなど。『終電バイバイ』では、第7夜の脚本、第7・8夜の監督を務めた。

清水健太

平田研也 (ひらた・けんや)

1972年、奈良県生まれ。スクリーンライター。青山学院大学文学部卒業後、1995年に(株)ROBOTに入社。劇場映画、TVドラマ、ショートムービーの脚本を手がける。主な作品に、加藤久仁生とともに手がけたアニメーション/絵本『つみきのいえ』、映画『リターナー』(東宝)、展示映像『上海万博 日本産業館』(日本郵政グループ)など。『終電バイバイ』では、第3・4・8夜の脚本を担当。

平田研也

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