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トーキョー・アートビジョン
No.048 展覧会のつくり方は、いろんな形があっていい
TWSプログラム・ディレクター 家村佳代子さん

2月26日(土)からトーキョーワンダーサイト(TWS)本郷で開催中の「第5回展覧会企画公募」展は、企画者(キュレーター)を志す若手を対象とした公募44企画から入選した3組による展覧会です。2006年のスタートから開催5回目を迎えた2010年度は、会田誠さん(美術家)、片岡真実さん(森美術館チーフ・キュレーター)、鈴木芳雄さん(エディトリアル・コーディネーター)などが審査員を務めました。今回は、TWSプログラム・ディレクターで審査員でもある家村佳代子さんに、企画公募や展覧会についてお聞きしました。

クラウディア・ラルヒャー/企画「ELASTIC VIDEO - curated by PLINQUE」展示風景
クラウディア・ラルヒャー/企画「ELASTIC VIDEO - curated by PLINQUE」展示風景
http://www.plinque.info


アートの生の現場にふれる機会を提供する

 「展覧会企画公募」は開催から5年目となりますが、美術館の概念も、キュレーション、キュレーティングという概念も、まだ新しいものですよね。ですから、展覧会をつくっていく形も、いろんな形があっていいんじゃないかという風に考えています。キュレーター公募というより、展覧会を新しい形で、新しい切り口で提案する人を募集する。その中からセレクトして、サポートするという感じですね。

 一次審査は書類選考ですが、二次審査は、会田さんや片岡さん、鈴木さんの前でプレゼンをしてもらいました。審査のポイントがわかるよう、入選理由はウェブ上で公開しているので、たとえ入選できなくても、何を人に伝えて、何にみんなが興味をもっているのか。そこで意見交換されることは、どういうものなのか。アートの生の現場にふれることは、すごく勉強になったと思います。経験の一つひとつが練習になるというか、大学などの守られた世界でなく、プロとして社会に出ていくために必要なステップなのかなと。


企画内容に顕著な、海外と日本の差

 去年まで、海外で教育を受けた人とそうでない人の企画の立て方の差が大きく、それがこちらの課題でもありました。企画って、自分がどの立場にいて、だからこれを出しますという説明が必要なんですが、日本の教育だけだとそういう機会が少ないので、それがなかなかできないんですね。海外に出て、いきなり自分の考えを言っても誰にも伝わらない。その経験が、自分は何者で、どういうことをしているのかを伝えようとする訓練につながるわけです。更に海外では、コマーシャルな部分も含めて、アートの世界が成り立つまでのヒストリー教育がしっかりしているので、歴史の流れの中での自分の立ち位置、そういうものが明確になる。それに比べて日本には、今のある1点しか見えない人が多いように思います。

 そこで今回は、企画公募の募集前に海外からキュレーターをお招きして、キュレーションのゼミやワークショップを開催しました。イスタンブール・ビエンナーレのディレクターを務めたワシフ・コルトゥンさんは、2009年の「アートの課題」でのワークショップの際、展覧会のためにキュレーションをするのではなく、アート・インスティテューションのキュレーションをすることが一番大事で、自分たちの場をつくっていくのにどういうキュレーションをすればいいのかを考えると。1月に講演をしたクンストハレ・ベルン館長フィリップ・ピロットさんは、エキジビジョン・メーカーという言葉を使って、どうやってスペースを使っていくかについて語ってくださいました。展覧会のあり方、つくられ方に色々なパターンがあるということを考える場になったのではないかと思っています。

佐々木友輔/企画「floating view “郊外”からうまれるアート」展示風景

佐々木友輔/企画「floating view “郊外”からうまれるアート」展示風景

佐々木友輔/企画「floating view “郊外”からうまれるアート」展示風景
http://qspds996.exblog.jp/
http://qspds996.com/floating_view/

アーティスト同士が刺激を与える場として

 こういったワークショップの甲斐があってか、今年入選した3組は、今までよりプレゼンが優れていました。ただ、「何故、今この展覧会をやるのか」ということを意識し過ぎたのか、去年よりおとなしい印象もあります。昨年度の「オル太の田」や「MEAT SHOP SPY」は、展覧会直前、設営がどうなるのかわからないくらい新しい試みをしていました(笑)。若いからこそ、一見、無茶に見えることも、そのエネルギーでやってしまうこともあると思います。周りも、そういう試みを見ていると自分ももっといけるんじゃないかって影響を受けますからね。TWSとしては、無茶も大事にしたいと思っています。時代が激変していく中、アートのあり方も、作品をつくって壁に並べて展覧会っていう時代じゃなくなってきていますから、新しいことをやろうとしている、そういった企画者の意図をくみ取り、実現できる場にしたいなと。

 企画公募は、純粋にキュレーター志望者のみを対象にした方がよいのでは、という話もあるんです。ただ、そうするとすごく限られた世界になってしまって。限定してしまうと、新しいムーブメントって起きにくいじゃないですか。最初は、キュレーター部門とアーティスト部門を分けていたんですが、アーティストからの応募が圧倒的に多いし、アーティストの方がキュレーターより何倍も先を見て、考えていることが多いんです。

 2月中旬までTWS渋谷で開催していた、カオス*ラウンジと遠藤一郎さんの展覧会は、「あれはアートなの?」と問うキュレーターも少なくないと思います。アーティストは、社会が急変していく中で、現場の動き、関係性をつくることに敏感になっています。そして、その動きそのものをアートとして打ち出しています。誰かがアーティストに指図して展覧会をつくるのではなく、アーティストが仲間と展覧会をつくっていくというやり方、日本のアートシーンにはほとんどなかったんですが、そういった動きもずいぶん見られるようになって、活発になって来ましたね。最近はTWSのプログラムを使い、海外のアーティスト・ラン・スペースに行ったアーティストが日本に戻ってきて、自分たちの場をつくろうとか、そういう風潮も出てきています。TWSの様々なプログラムが相乗効果を上げて、いい方向に変化してきたのは嬉しいです。

松井えり菜・村上華子/企画「Girlfriends Forever!」展示風景

松井えり菜・村上華子/企画「Girlfriends Forever!」展示風景

松井えり菜・村上華子/企画「Girlfriends Forever!」展示風景
http://girlfriendsforever2011.blogspot.com/

第5回展覧会企画公募の3企画について

 今の若い人たちにとっては、郊外のふつうの風景が原風景になっていますよね。世界中が同じような郊外で、今までだったらつまらないと思うところが心象風景にある。そういう世代の人たちが、郊外に取り組むという佐々木友輔さんの企画「floating view “郊外”からうまれるアート」は、コンセプトがはっきりしていて面白いなと思います。クラウディアさんは、本人の作品も含めて、オーストリアのクオリティの高いビデオ・アートを選んでいます。あるプログラムで、他のアーティストに作品を見せたら、「これ誰が撮ってるの? まさか本人じゃないよね」と。全て本人だったんですが、今回もTWSの会場にあわせてビデオを制作しています。

 最近は、世の中の動きに比べると、アートの世界が社会の動きの後追いになってしまっている感もありますが、松井えり菜さんと村上華子さんの「Girlfriends Forever!」については、今の日本の美大の約8割が女性なのに、女性アーティストはあっと言う間に消える。それはなぜなのか? そういう部分を考えるのであれば、この切り口も面白いと思います。約10年、TWS-Emerging展で若手アーティストに接していますが、美大同様、約8割が女性ですね。その中には毎年、「好きなもので絵をうめたい」という風に話す若手女性アーティストがいますが、男性は絶対言わないですね。好きなものだから瞬発力はすごいんですが、継続していかない。ちょっと売れたとしても、すぐ古くなってしまう。その中で、人間の核となるもの、根っこをどこに置いて創作していくか。結局はそこが問われると思うんです。そういった女子とアートの関係を踏まえた上で、「Forever!」をつけるのであれば、問題提起にもつながるかなと。

 TWSは若手を育てているので、まだ価値が定まらない人に誰かが価値づけしてくれるのはありがたいと思いつつ、それがリミットになってしまう場合もあります。よく、「何で展覧会場に説明書きがないんですか」と聞かれますが、それはこちらが一方的に説明をしてしまうことが作家を限定してしまうことにつながると考えているからです。ギリギリまで、価値のわからないアーティストのそのままの状況を出せる場所ってまだまだないので、そういった部分は大切にしてきたいですね。


 
 
第5回展覧会企画公募
Emerging Artist Support Program 2010

「展覧会企画公募」は、2006年よりトーキョーワンダーサイトが若手支援・育成を目的に主催する公募プログラム。2010年度は3企画が入選し、現在展覧会を開催中。

展覧会/ 「ELASTIC VIDEO - curated by PLINQUE」クラウディア・ラルヒャー
「floating view “郊外”からうまれるアート」佐々木友輔
「Girlfriends Forever!」松井えり菜・村上華子
会期/ 2月26日(土)〜3月27日(日)
休館/ 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
時間/ 11:00〜19:00(入場は18:30まで)
料金/ 無料
会場/ トーキョーワンダーサイト本郷
交通/ 御茶ノ水駅(JR・東京メトロ丸ノ内線)、水道橋駅(JR・都営三田線)、本郷三丁目駅(東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線)各駅より徒歩7分
 
家村佳代子
 
家村佳代子

TWSプログラム・ディレクター。2001年より、トーキョーワンダーサイトにて、若手アーティストの育成・支援を目的としたプログラム等を、企画・運営している。東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了後、ロンドンA.A. スクール、ニューヨークのコンテナーズ・オブ・マインド・ファウンデーションによる養老天命反転地公園プロジェクト遂行など、海外での活動を経て現職に至る。
http://www.tokyo-ws.org/

 
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