東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
展覧会・イベント情報 アーティストファイル エッセンス ビジョン スポット
マイページ サイトマップ
Tokyo Art Navigationとは?
TOPICS
TOP
トップ > トーキョー・アートビジョン
トーキョー・アートビジョン
No.010 江戸をつかまえたくて、向島に住む
語り手:講談師 神田 紅 氏

写真:神田紅氏
 文献の記録では、江戸幕府が開かれる少し前、慶長年間に赤松法印というお坊さんが徳川家康公の前で語ったのが最初という講談。しかし、そのルーツは遡ること稗田阿礼の時代ともいわれています。源氏物語にも、語りをする講釈師がいたという説がある講談の世界。では、紅流講談はこれからどんな風に進んでいくのでしょうか?

 講談のお客様は、物語を聞こうと思って足を運んでくれます。今、講談をやっていて、物語を今の若い人にわかりやすくする必要があるかなと考えています。講談という素晴らしい文化も、お客さまの心が離れてしまっては絶えてしまいます。講談をご存知のお客様はもちろん、初めての方にも楽しめる工夫をしなければならないと思っています。

 私は、お酒が好きですが、源氏物語を書いているときにちょっとやめていた時期があります。そのときは、自分が面白くなくなったなと思いました。妙に几帳面になってしまって、「あんこ」と呼ばれるアドリブがきかなくなってしまったのです。アイデアがでてこない。やはり、遊びの部分がないと、おもしろいこともできません。身体の外に表現していくのが芸人の仕事。書き手の仕事は、どんどん内側に入っていくんだなという発見がありました。講談は笑わせることが目的ではないけれど、常にお客様に楽しんでもらえるようなアイデアを出していかなければならないと思っています。

 師匠は、講談の稽古は家ではブツブツいって、覚えるための練習をすればいいといっていました。中途半端な練習が一番いけないというのです。家でまわりに遠慮して、中途半端な声を出していると、本番で大きな声が出なくなる。声を出すときは1回、お客さまの前で本気の声を出せばいい。ダンスでも、国立劇場で踊って手を広げるのと、小劇場では空間がまったく違います。人間の身体が、空間に存在しているという意識が大切なんです。空間に自分が参加しているという意識が、人間を豊かにすることだと思っています。

 講談は江戸弁の世界ですから、職業柄下町に住まなければいけないと思いました。言葉の壁を感じていましたし、気風の良さとか江戸っ子気質を知りたいと思ったんです。江戸をつかまえたくて、向島に住むことにしました。みんなあいさつをしますし、声もかけ合います。私が育った博多っ子気質と似ていますね。非常におせっかいで、噂話が好きで、住人同士でよく喧嘩もするけれど、すぐにまた仲良くやっていける。こういうことが一番大事だと思います。地方から来た人間だから感じることかもしれませんが、江戸の風情を東京の町並みの中に残したいと思っています。江戸のことを調べれば調べるほど、長屋の人間づきあいとか、素晴らしい自治のシステムがあったことがわかります。歴史が凝縮された町としての江戸を再現してでも残してもらいたいですね。

着物を着ることから、日本文化への興味が広がることも着物を着ることから、日本文化への興味が広がることも
 よく着物を着て浅草を案内したりしますが、そのときは日本人であることのアイデンティティを感じますね。それによって、日本のことをもっと考えるようになります。今、池袋演芸場では着物を着てくると割引になるサービスをやっています。多くの方にもっと着物を着ていただきたいですね。着物を着ると、日本文化に目が向くようになって、扇子などの小物に目がいったり、寄席にも足を運ぶようになるでしょう。そうすると、日本の伝統芸能にも興味が沸いてきて、講談も楽しんでもらえるようになると思うのです。

 美術館にあるアートは、100年後に残るものです。人々に愛され続けることができるのは、素晴らしいと思います。講談は、無形文化財でその場で消えていくアートです。これを何らかのかたちで残していきたいと思います。紅流の心を込めた作品を100年後に残していけたらいい。それには、自分の発露がなければ、続けることはできない。自分が楽しく続けることが大切なんです。自分のため、お客さまのため、講談界のために、これからも頑張りたいと思っています。

 昔、師匠に、自分はこれから歳をとったらどうなるんだろう、と聞いたことがありました。そのとき師匠が「きみ、女は腕だよ」といわれたことが忘れられません。腕さえあれば、歳をとったって、器量が悪くたって大丈夫なんだと。芸の力はすごいから腕を磨かなきゃいけないよ、といわれたことを最近つくづく思い出します。苦しい世界を選んだなとも思いますが、歳を重ねたそのときに、身についている芸があることをめざして頑張ります。

※次回は・・・
和太鼓奏者のヒダノ修一氏にご登場いただきます。[2月14日(木)アップ予定]

神田紅 写真
 
神田 紅
(かんだ くれない)

福岡県福岡市出身。子供の頃はキュリー夫人に憧れ、次に世界初の女性宇宙飛行士テレシコワに憧れる。そしてシュバイツアー博士に憧れて無医村の医者になろうと医学部を目指すが、浪人中演劇に目覚め早稲田大学商学部に入学すると学生演劇で有名だった「劇研」にすぐ入部。文学座付属演劇研究所生を経て市原悦子の付き人などを経験し女優の道へ。昭和54年、2代目神田山陽師と出逢い、講談の魅力にとりつかれ入門する。平成元年、真打に昇進。旧本牧亭での幕引き真打披露を行う。平成14年4月に弟子の陽司、紅葉を伴い紅一門を旗揚げ。現在は蘭を加えて弟子3人。講談師・女優・映画評論家・エッセイスト・レポーターとその才能は多彩。舞台、TVの出演などの他、『神田紅の語って紅伝』(西日本新聞社)などの著書もある。

『神田紅の語って紅伝』(西日本新聞社)

『神田紅の語って紅伝』(西日本新聞社)
創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
東京・ミュージアム ぐるっとパス2007
詳しくはこちら